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三世代同居?国が変なことを言いはじめたなと思ったら(ニュースを考える)

三世代同居と財政破綻

国が、親子孫の三世代同居を進めようとしている

ANN News(2015年11月8日)などによると、国は、親子孫の三世代同居を進めたいと考えていることがわかりました。このニュースが伝える減税に限らず、これから、徐々に三世代同居に有利になるような施策が出てくると思います。まず、このニュースの一部を以下に引用します。

萩生田官房副長官は、少子高齢化社会に対応するためには祖父母から孫まで3世代での同居が重要だとしたうえで、減税などで環境整備を進める考えを明らかにしました。(中略)萩生田副長官は、安倍政権が掲げる「希望出生率1.8」や「介護離職者ゼロ」の目標を実現するためには、3世代が同居することが必要だと強調しました。そのための環境として、3世代が同居すれば何らかの減税措置を検討する考えを明らかにしました。

このニュースを受けて、ネットでは「いまさら無理」「老人を中心に考えすぎ」「そもそも国が個人の生き方に関与するのはどうなのか」「日本の住宅環境では難しい」といった厳しい意見が出ています。

KAIGO LAB編集部としても、こうした反対意見に同意します。そもそも税金の使い道として、三世代同居ができる人を優遇するというのは、順番が違うと思います。同じ財源があれば、介護という文脈では、まずは介護現場の給与水準を上げるために使うべきだと思うからです。

本当の背景にあるのは、国家財政の限界

しかし、国の政策を考えている官僚は頭がよいので、こうした反対意見が出ることはわかっているはずです。ですから、このニュースも、国が「三世代同居が理想的だ」と考えているのではなくて、裏には、そうせざるを得ない事情があると考えたほうがよさそうです。

その事情とは、医療・介護財源の枯渇です。過去にも記事にしているとおり、日本の医療・介護の財源は、もう限界にあります。10年以内には、これまでの医療・介護のありかたは、根底から崩れてしまう可能性が高いのです。

本来であれば、国は、ここで医療・介護がダメになってしまわないための施策を打たなければいけません。しかし、もはや間に合わないというのが国の本音なのでしょう。つまり、日本の医療・介護は、これから崩壊していくということです。

具体的には、病気になって医者にかかるときの費用が極端に上昇する可能性があります。介護サービスの自己負担部分もこれから大きくなり、必要な介護サービスを受けるときの費用もずっと高くなる可能性があります。

そうなると、ちょっとした病気でも、医者にかかれないために死んでしまったり、介護現場では介護サービスが受けられないがために、仕事を辞めて介護に専念せざるをえない人が増えてしまいます。

国が恐れているのは、そうした事態が起こることではありません。そうした事態が起こるのは、もはや避けられないとさえ思っていることでしょう。国が考えているのは、そうした崩壊が起こったときに、被害を少なくすることです。

三世代同居によって解決する問題

三世代同居が実現すると、孤独な高齢者が減ります。孤独は、様々な病気の原因になることがわかっているので、同居する家族ができると、高齢者が要介護になるリスクが減らせます。結果として、介護保険の財源が少しだけセーブできます。

三世代同居が実現すると、子供の面倒を、親ではなくて、祖父母がみることができるようになります。これにより、女性が労働力になり、そこから税収も生まれます。少しでも税収をあげれば、社会福祉の崩壊を遅らせることができます。祖父母も孫の世話を通して活動的になり、要介護のリスクも減ります。

三世代同居が実現すると、祖父母に介護が必要になったとき、家族の誰かが、それをカバーできる可能性が高まります。場合によっては、子供が祖父母の介護ができます。結果として、金銭的に介護サービスが受けられない状態になっても、祖父母は、なんとか生きていける可能性が高まります。

三世代同居に賛成はできないものの・・・

こうして考えると、国が国民に三世代同居を押し付けるのはよくないことだと思いますが、医療・介護の崩壊を「前提」とした場合、ほかに解決策が思い浮かびません。あるとすれば、実用に耐える介護ロボットが登場することですが、それは、もう間に合わない可能性が高いと思われます。

想像してみてください。医療も、介護サービスも、保険がほとんどきかない状態になったら、どうしますか?介護サービスを使うときの自己負担は、10倍になります。今現在の介護は、だいたい月額3万円程度の自己負担が多いですが、それが月額30万円になります。これは極端な思考実験ですが、少なくとも、このような方向に行くことは避けられそうもありません。

そうなったとき、三世代同居によって、家賃や水道光熱費を減らすことは合理的でしょう。医者にかからないように、家族の中で健康に注意しあったりすることも必要でしょう。介護サービスを減らす代わりに、家族が自らそれを行ったりするのも、仕方がないかもしれません。そんな未来像を持った上での、三世代同居の奨励なのだと思います。

本当は、そうなる前に、抜本的な解決になる政策が必要なのです。しかし、そうした政策は、医療・介護が崩壊する前に提案しても、不利益をこうむる人々からの理解は得られないでしょう。であれば、一度崩壊させて、その後で、抜本的な政策を打ち出すことになるのだと思います。

※参考文献
・ANN News, 『子育てや介護を後押し 3世代同居に減税措置も』, 2015年11月8日
 

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