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小規模多機能型居宅介護;ノーマライゼーションの理想に向けて(知らないと損をする)

小規模多機能型居宅介護

ヘルパーとデイサービスの鉄板コンビの問題

訪問のヘルパーを入れ、デイサービス(通所)もアレンジされたとしましょう。ここまでくれば、当初はどうなることかと思った在宅介護にも「リズム」があることがわかります。

ヘルパーのおかげで、自宅での負担はかなり減ります。しかしヘルパーは、介護サービスあたりいくら、という料金設定のため、財布の中身と相談しながらの対応になります。同様に、デイサービスも、利用すればするほどにかかる費用が膨らんでいくので、気になります。

そして、ヘルパーとの関わりは(一部買い物・通院の同行などありますが)自宅が中心です。デイサービスは、自宅と施設の間は車で移動です。ヘルパーとデイサービスだけだと、要介護者は地域ネットワークから切れてしまうわけです。

福祉の基本理念であるノーマライゼーションからしても、こうして、要介護者が地域ネットワークから切れてしまうことには問題があります。とはいえまずは、仕事と介護が両立できる状態を確保しないとなりません。

小規模多機能型居宅介護という選択もある

長い名前で覚えにくいのですが、小規模多機能型居宅介護(小規模多機能ホーム)という介護サービスの形態があります。この形態は、ある意味で介護の一つの理想系であり、ヘルパーとデイサービスという在宅介護における鉄板コンビに対する「アンチテーゼ」としての意味があります。

考え方の根本は、要介護者の自宅を「居間・寝室」、地元の街を「廊下」、小規模多機能型居宅介護の施設を「リビング・食堂・風呂・一時的な寝室」という具合にして、要介護者の暮らしてきた空間を活かしながら、それまでの生活を少しでも維持するというものです。

当然、ヘルパーとデイサービスの鉄板コンビとは異なり(1)月額定額制でサービスは使い放題(2)スケジュール管理的ではなく柔軟な対応(3)退院後や虐待などからの一時的な避難場所(4)病院での終末を迎えたくない人の選択肢(5)地域ネットワークとのつながり重視、といった運用がなされます(使い放題とはいえ、限度はありますが)。

小規模多機能型居宅介護では、サポートをしてくれる介護職員も、要介護者と一緒に地元商店街を散歩したり、行きつけの商店で立ち話をしたりといったことに同行します。ここは、契約範囲内で動くヘルパーとは大きく異なります。また、基本的に24時間年中無休で、緊急時への対応もしてもらえます。

自己負担額は、最大3万円程度(月額定額)です。ただし、食事、おむつ代、宿泊をする場合の料金などは、ここに含まれません。また、小規模多機能型居宅介護の事業者によっては、追加のサービス料金もあったりしますので、注意してください。

小規模多機能型居宅介護を選ぶ場合の問題点

ここまでの話だけを聞くと、小規模多機能型居宅介護の魅力が際立って感じられるかもしれません。しかし、問題点もあります。

まず、小規模多機能型居宅介護の利用を決めると、それまで利用してきたヘルパーやケアマネ、デイサービス、デイケア、ショートステイなどが、介護保険では利用できなくなります。そもそも、こうした事業者がバラバラで、地域ネットワークから隔絶された介護への「アンチテーゼ」なのですから、それも仕方のないことです。

しかし、デイサービスの中には、要介護者がお気に入りのものもあるかもしれません。デイケアで受けてきた特定のリハビリも受けられなくなるかもしれません。ここらへんは、柔軟な制度にしてもらいたいところです。しかし現時点では、残念ながら、小規模多機能型居宅介護を選ぶことは、他の介護サービスの利用をあきらめることと実質的に同じ意味になります。

小規模多機能型居宅介護を検討すべき場合

まず、要介護者が老人ホームのような介護施設に入所したがらないで、かつ、ヘルパーとデイサービスの鉄板コンビでは介護が回らない場合です。次に、要介護者がデイサービスに行きたがらないで、かつ、家族がずっと一緒にいられない場合です。そして、仕事の関係で、ヘルパーとデイサービスの鉄板コンビでも対応の隙間(例えば出張など)ができてしまい、対応しきれない場合です。

とにかく、小規模多機能型居宅介護は、鉄板コンビでは「もう無理」となっていて、かつ、要介護者が施設に入りたがらない場合に、検討すべき介護サービスなわけです。小規模多機能型居宅介護を選んでしまうと、後戻りするのはまた大変です。なので、慎重に動きたいところですが、小規模多機能型居宅介護が上手くはまれば、介護は一気に楽になります。

小規模多機能型居宅介護を決めるときの注意点

そもそも、ヘルパーとデイサービスを上手に組み合わせながら、介護をこなせれば、それに越したことはありません。言うまでもなく、ヘルパーもデイサービスもいらない、完全な自立ができたら嬉しいです。その場合は、無理をして小規模多機能型居宅介護に移行する必要もありません。

どうしても、小規模多機能型居宅介護に決める必要がある場合は、まず、これが月額定額のビジネスであることに注意してください。事業者からすれば、サービスを実施しなくても入金があるわけですから、悪徳業者につかまってしまうと大変です。介護職員1人あたりが対応する要介護者の数などをしっかりと把握しましょう。もちろん、地域包括支援センターなどにも、事前に相談しましょう。

次に、それまでは複数の事業者とつきあっていたのが、小規模多機能型居宅介護の事業者1社との付き合いになる点にも注意が必要です。1つの事業者と付き合えば良いのは楽です。しかし楽なのは、それはその事業者が優れていて、かつ、財務的に破綻しない限りにおいてです。

まず、事業者がよくない場合、変更するのは大変です。そして、小規模多機能型居宅介護の事業は複合的であり、かつ、介護保険から支払われる介護報酬が低額なのです。結果として、少なからぬ小規模多機能型居宅介護の事業者が赤字経営になっています。ここは、本当に、国になんとかしてもらいたいところです。
 

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