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生活援助の使いすぎ、特定の人が全体を壊す恐ろしさ

生活援助の使いすぎ、特定の人が全体を壊す恐ろしさ

「お手伝いさん」と勘違いしている人は実在する

介護は、簡単なお手伝いではなく、専門性が求められる仕事です。介護職は、医師や弁護士がそうであるように、専門職です。しかし、介護は、その歴史としてボランティア的にはじまったため、日本では、どうしても「誰にでもできる仕事」という印象があります。

介護保険内で利用できる「生活援助」という介護サービスがあります。これは、要介護者本人やその家族が、家事を行うことが困難な場合、それを代行する介護サービスです。あくまでも、心身の状態によって家事を行うことが困難という前提があってのものです。内容は買い物や調理、掃除やゴミ出し、洗濯やベッドメイクなどです。

この「生活援助」がなければ生きられない要介護者も多数います。しかし、これが家事の代行という意味があるため、自分で家事を行える状態であっても、安易に「生活援助」を利用する人がいるというのが現状です。そうした人は、全体からすればほんの一握りなのですが、それが大きな問題になりつつあります。

特定の人のために業務量が増えるという無駄

そうした、介護サービスの利用が不適切な特定の人のために、いま、介護業界全体の業務量が増えるという無駄が起ころうとしています。まずは以下、日本経済新聞の記事(2018年4月2日)より、一部引用します。

厚生労働省は介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画(ケアプラン)を市町村に届けるよう義務づける。過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証する。介護費用の膨張を抑制する狙い。(中略)

厚労省は、利用回数が平均を大きく上回る場合、ケアプランをつくるケアマネジャーに届け出を義務づける。市町村は「必要以上の利用になっていないか」「他のサービスで代替できないのか」などの観点からプランを検証。必要に応じて変更を求める。(中略)

2016年9月のデータによると、生活援助の利用者(48万5千人)は月間平均で11回程度使っている。そのうち31回以上の利用者が2万5千人を占め、100回を超える例もあった。介護給付費は25年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想される。生活援助は給付費の1%程度だが、無駄遣いを指摘する声も多い。(後略)

チェックのために介護職の時間が奪われる

一見すれば、今回の厚生労働省の対応は、非常に当たり前のもののように感じられます。しかし、届け出が必要ということは、その届け出の作成のために、介護職の時間が取られるということでもあります。そして、介護職は圧倒的に不足しており、すでに業務がパンクしているというのが実情です。

届け出はケアマネージャーが担当するとはいえ、ケアマネージャーも、現場の介護職に聞かないとわからないでしょう。また、可能性としては、介護事業者による不正受給もありえます。そうしたことまで考えて届け出を作成するとき、その残業代で、介護事業者の収益(赤字のところも多い)も悪化してしまいます。

一番ばかばかしいのは、こうした届け出の作成のためのコストが、不適切な介護保険の利用によるコストを上回ってしまうことです。先の記事にあるとおり「生活援助」は、介護保険のための財源の1%程度という金額なのですが、それが果たして、本当に介護職の時間よりも貴重なのかは、よくよく考えたいです。

介護職に届け出を求めるのではなく・・・利用回数が極端に多いケース(例えば標準偏差の3倍を超えるようなレベル)については、自治体の担当者が聞き取り調査をするといったことは不可能なのでしょうか。とにかく、介護職の時間は要介護者(利用者)のためにあるのであって、書類の作成に取られる時間的余裕はないはずなのです。

※参考文献
・日本経済新聞, 『生活援助 使いすぎ抑制 介護保険、月30~40回で届け出』, 2018年4月2日

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