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軽度者ほど必要な介護サービスが受けられない?日本の限界が浮き彫りになってきた・・・

軽度者ほど必要な介護サービスが受けられない?介護の矛盾が浮き彫りになってきた・・・

介護サービスの責任範囲が一部変更されている

介護保険は保険ですから、いざ、介護が必要になったら、その保険を使うことができます。ただ、必要になる介護の度合いが軽い軽度者(要支援1, 2)の介護サービスの一部は自治体の事業として運営され、重度者(要介護1〜5)の場合と切り離される形に移行しているのです(2017年4月までに移行完了)。

この移行の真意がどこにあったのかはともかく、結果として、財政的に苦しい自治体において、悲惨な状況が生まれつつあります。軽度者ほど、本来は受けられるべき介護サービスが受けられないところが増えてきているのです。

綺麗事を抜きにして言えば、こうした軽度者の家族ほど、介護サービスの恩恵が受けられないため、介護離職のリスクが高まります。これに対して、要介護者が重度者だと、手厚い介護サービスが受けられることになるため、介護をする家族の負担が減り、仕事との両立も進むことになるのです。

おそろしい介護の矛盾が浮き彫りになってきた・・・

ここで、軽度者(要支援1, 2)として認定される人の割合は、介護が必要な人の約3割程度(2015年度実績)です。この約3割に入ってしまうと、自治体の財政が苦しい場合、まじめに介護保険を支払ってきたとしても、介護サービスが受けられないかもしれないのです。以下、東京新聞の記事(2018年1月28日)より、一部引用します。

市区町村が手掛ける軽度者向け介護サービスが、約百の自治体で運営難になっていることが二十七日、共同通信の調べで分かった。地元介護事業者のスタッフ不足に加え、これまで請け負ってきた大手の撤退が追い打ちをかけ、訪問介護の回数が減るなどの影響が出ている。(中略)

七段階ある要介護度のうち、軽度の「要支援1、2」を対象にした訪問介護と通所介護(デイサービス)は国の介護保険制度から移行し、昨年四月までに市区町村の事業となった。(中略)サービスの種類によっては自治体の財政事情で報酬が移行前より安く、撤退が相次ぐ要因になっている。(中略)

介護最大手のニチイ学館(東京)は展開する全国約千四百の介護拠点のうち、約三百四十カ所で請負をやめた。「人材が足りない中、重度の介護保険サービスに経営をシフトする」とし、さらに撤退も検討する。セントケア・ホールディング(同)も一部拠点の撤退を始めた。

人口が流出している自治体がさらに弱ることに

気がつくと思いますが、そもそも、財政が厳しい自治体とは、人口が流出し、高齢化が止まらない自治体です。現役世代が少ないと、その自治体は、税収に苦しむことになります。それはすなわち、他の自治体よりも高齢化が進んでいる自治体と同義です。

高齢化が進んでいる自治体ほど、介護サービスが必要なはずです。しかし、そうした自治体からは、軽度者を支援する介護サービスが撤退するケースが増えているのです。軽度者とはいえ、なんらかの介護支援なしには生きていけない人も多数います。

そうなると、こうした軽度者の介護は、その家族が担うしかなくなるでしょう。しかし現代社会において、家族の皆が近くにいて、その家族には兄弟姉妹が多く、かつ専業主婦も含まれているということは期待できません。すると、家族のうちの誰かが大変な犠牲を払って介護に関わることになってしまいます。

しかし、拙著『ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由』でも示したとおり、そのような介護離職を前提とした介護は長続きしません。結果として、家族もろとも、その自治体から出ていくことになるでしょう。

このままでは、体力のない自治体の衰退が加速されることになってしまいます。これをもってして、厚生労働省の判断を批判することは簡単です。しかしこれは、むしろ、日本の実力を示していると考えたほうがよいのかもしれません。もはや、自治体レベルではなくて、国レベルで体力が失われているという現実があるからです。

※参考文献
・東京新聞, 『軽介護、運営難100自治体 人手不足、大手撤退相次ぎ』, 2018年1月28日

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