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高齢者であっても、自分でできることは、可能な限り自分でやるべきです。高齢者の場合は、自分でできることまで誰かに任せてしまうと、心身の衰えが進み、要介護状態になりやすいからです。あくまでも噂ですが、至れり尽くせりの高級老人ホームに入居すると認知症になりやすいとも言われます。
こうしたことは、介護業界においては常識です。ですから介護職は、高齢者に依存されないように注意しつつ、できるだけ高齢者本人ができることを奪ってしまわないように注意しつつ、介護を進めているのです。ここを誤解している高齢者とその家族は、介護職に対して「手伝ってくれない」というクレームを入れたりもします。
良心的な介護事業者は、こうしたクレームに屈することなく、しっかりと説明して理解を得ようとします。しかし、経営的に余裕のない介護事業者の場合は、本当はそれが高齢者のためにならないと知りつつも、至れり尽くせりのサービスに転換するところもあります。
ある意味で、日本人は、高レベルのホスピタリティーを発揮してくれるサービスに慣れすぎています。しかし同じ方向性を介護サービスに期待してしまうと、結果として恐ろしいことにもなりかねないのです。
つい最近、実際に聞いた話です。親元を離れて暮らしているビジネスパーソンが、歳をとった両親へのプレゼントとして、家事代行サービスを導入してあげたそうです。近年、家事代行サービスが発展してきており、価格も手頃だったため、親孝行と考えたそうです。
結果として、それまで家事を担当してきたお母様(専業主婦)の元気がなくなり、半年後には認知症と診断されてしまったそうです。もちろん、認知症は、家事代行サービスの導入前から潜んでいた可能性もあります。ただ、家事を奪われてしまったことが、認知症のきっかけになった可能性も十分にありえます。
そのビジネスパーソンは、家事代行サービスにそんなリスクがあるだなんて思いもよらなかったと言います。その後、そのビジネスパーソンは、お母様の介護をきっかけとして介護職と話をするようになりました。そして介護についての理解を深め、お母様の件は、家事代行サービスの導入がきっかけだったかもしれないと思うようになりました。
お母様が認知症になってしまった本当の理由はわかりません。家事代行サービスのせいではない可能性もあります。ただ、このビジネスパーソンを慰めることもまた困難です。この段階では、お母様の認知症が少しでも悪化しないための施策を考えて実行いくことしかできません。
もちろん、本当に家事代行サービスが必要な人も多数います。家事代行サービスがあればこそ、幸福な生活ができている人も多数いるでしょう。ただ、高齢者の世帯に対して、ホスピタリティーに富んだ至れり尽くせりの生活を提供することにはリスクもあるのです。
もし、両親がまだ元気であるなら、家事代行サービスを受けるのではなく、むしろ、家事代行サービスを提供する側に立ってもらうことを検討すべきかもしれません。人間は、楽ができる生活ではなく、誰かの役に立てる生活の中で幸福を獲得していくからです。
自分では家事ができなくなってしまった人であったり、他の大事な活動があって家事の時間を節約したいと思っている人にとっては、家事代行サービスは素晴らしいものです。しかし、家事そのものが大事な生活の一部になっている人から家事を奪うようなことになってしまってはなりません。
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