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半身浴の効果とリスク、ちゃんと理解していますか?静水圧作用について

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静水圧(hydrostatic pressure)とは?

静水圧とは、静止している水中で働く圧力のことを言います。もう少し正確には、静止した水中における点にかかる圧力は、方向によらず一定になります。このときの圧力を、特に静水圧と言います。

この圧力が人体に与える影響(作用)について考えるときは、特に「静水圧作用」という言葉が使われます。介護という文脈で「静水圧作用」を考える場合は、特に「半身浴」と「全身浴」の違いについて理解するときに用いられます。

半身浴の効果について

入浴において、お湯につかっている部分には、静水圧がかかります。足からみぞおちくらいまでお湯につかる「半身浴」の場合は、下半身に静水圧がかかることで、下半身の血液が、上半身に戻りやすくなります。

通常は重力に引っ張られる血液の循環が、下半身から上半身に向かいやすくなります(=下肢ポンプ作用の増強)。結果として、血液の循環がよくなるのです。これによって、疲労回復などの効果が期待できます。

対して、首までお湯につかる「全身浴」の場合は、胸にかかる静水圧が大きくなります。また、全身から心臓に戻ってくる血液の「血圧」も高くなります。外側からは「静水圧」がかかり、内側からも「血圧」がかかるわけです。結果として心臓の負担が大きくなってしまいます。

心臓が弱くなっていたり、高血圧の高齢者の場合は「全身浴」は危険であり「半身浴」が良いというわけです。全身でお湯につかるのは気持ちよいことなのですが、やはり「全身浴」には注意が必要です。

入浴のリスクと対策

「半身浴」でも「全身浴」でも、湯船から立ち上がるときは、特に注意が必要です。お湯から外に出ると静水圧が解除されます。この結果、上半身に向かう血液の力が小さくなり、脳に向かう血液も少なくなります。すると、フラフラと「立ちくらみ」の状態に至ります。

そのまま転んでしまったり、極端には意識障害を起こして、浴槽内で溺れてしまったりすることがあるのです。意外と知られていないのですが、日本における入浴中の死亡事故は、年間で1万人以上であり、交通事故の数倍とも言われます。

実際の入浴では、ここまで見てきた「静水圧作用」だけでなく、脱衣所から浴室までの温度差などによって、血圧の乱高下が起こりやすいのです。そうしたわけで、入浴というのは、本当に注意が必要な行為なのです。以下、東京都健康長寿医療センター研究所による「入浴事故予防のための対策」になります。一部説明を追加しながら引用します。
 
1. 湯温は39~41度くらいで長湯をしない(特に高齢者の長湯は血圧差を生みやすいため)
2. 脱衣場や浴室の室温が低くならない工夫をする(血圧の乱高下を予防するため)
3. 食事直後や深夜に入浴しない(高齢者は食後に低血圧になるため)
4. 気温の低い日は夜早めに入浴する(脱衣所などの温度と湯温の差が大きくなるため)
5. 心肺の慢性疾患や高血圧症をもつ人では半身浴が望ましい

※参考文献
・高橋龍太郎, 『高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?』, 東京都健康長寿医療センター研究所(地方独立行政法人)
 

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