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高齢者の虐待が発生しやすい環境に関する研究

高齢者の虐待が起こりやすい背景に関する研究

高齢者の虐待は想像以上に多数発生している

介護に関わっていて「自分は虐待などしない」と言い切れる人は、まずいません。善良な人であっても、要介護者のことを虐待してしまうことは、非常に多くみられる事実です。介護をめぐる具体的な虐待の中身については過去記事『高齢者の虐待が6人に1人という割合に(WHO集計)』を参照してください。

介護をめぐる虐待というと、ニュースになるのは決まって介護職(介護のプロ)による虐待です。しかし、家族による虐待のほうが、介護職による虐待の100倍も多く発生しているのです。実際に統計(平成24年度)では、介護職による虐待が155件だったのに対して、家族による虐待は1万5202件でした。

介護職による虐待は、同僚も直接・間接に観察することになるので、発見されやすいでしょう。これに対して家族による虐待は、基本的に密室で発生しています。家族による虐待は表に出にくいはずなのです。それでも、家族による虐待は把握されているだけでも介護職よりも100倍多いという事実は、無視されるべきではありません。

家族の虐待に関する調査としては、認知症の介護をする100名の家族に対して行ったアンケート結果があります。この調査では「認知症のご家族を「虐待」をしそうになったことはありますか?」という質問に「ある」と回答した人が79%にもなっています(株式会社ウェルクス, 2016年)。

では、どのような背景があると、高齢者の虐待に至りやすいのでしょうか。この高齢者の虐待についての研究では、修文大学の柴田益江准教授によるものを参照したいところです。以下、柴田准教授による研究報告を参照しつつ、簡単に状況をまとめてみます。

虐待の発生しやすい環境とはどのようなものだろう?

虐待に関する調査は、その多くが、発生の背景ではなく、発生した実態調査になっています。そうした中、柴田准教授の研究は、その背景に光を当てています。そもそも虐待の背景は多様であり、様々な要素が重層的にからみあっている複雑なものではあります。しかし、確率論として見えていることもあります。

虐待をする確率の高い人とは?

虐待をしてしまうのは(1)息子か夫である(2)要介護者と同居していたりして常時接触している(3)介護に関する知識が不足している(4)介護を助けてくれる人がいない(5)要介護者と過去になんらかの軋轢がある、といった背景のある人の確率が高くなっています。

虐待をされてしまう確率の高い人とは?

虐待をされてしまうのは(1)要介護度が高い高齢者(2)75歳以上の女性(3)子供の家族と同居している(4)生活が苦しい生活困窮者である(5)介護者と過去になんらかの軋轢がある、といった背景のある人の確率が高くなっています。

虐待を回避するために必要なこと

まず、自分自身の背景が、先の要素にどれくらい当てはまるかを確認することが大事です。かなり当てはまるなら、意識して虐待を回避するための対策を打たないとなりません。いかに自分は大丈夫だと思っても、対策をすることはとても大事です。

まずは、介護者は、要介護者との接触を減らさないとなりません。避けられるのであれば、同居は避けたいところです。介護の一部であっても、介護のプロにお願いしたり、兄弟姉妹や親類縁者にお願いすることで、虐待を回避できる可能性が高まります。

どうしても1人で、同居の介護をしなければならない場合は、特に息抜き(レスパイト)を心がける必要があります。上手にストレスを逃すことができないと、かなり危険です。

また、介護者は、介護に関する知識を勉強していくことも大切です。自分で勉強するのがつらければ、セミナーや家族会などに参加して、誰かに教えてもらうことを意識する必要もあります。とにかく、介護を相談できる他者がいないと、危険に近づくことになります。

※参考文献
・株式会社ウェルクス, 『認知症の介護家族の約8割が「虐待」しそうになった経験が「ある」。調査データ発表』, 2016年1月21日
・柴田 益江, 『高齢者に対する家庭内虐待の発生メカニズムに関する研究』, 名古屋柳城短期大学研究紀要, 第35号(2013年度)

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