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爪にQRコードを貼る?埼玉県入間市の取り組み

爪にQRコードを貼る?埼玉県入間市の取り組み

認知症で行方不明になる人が後を絶たない・・・

行方不明者の中で、認知症(もしくは認知症の疑いがある人)は、毎年1万人以上にもなります(2016年は約12,000人)。その多く(98%程度)の人は後に発見されていますが、見つからないままの人もいます。とにかく、現代のような技術の発展した時代にあって、行方不明者が出てしまうということは、避けねばなりません。

社会全体としても、こうした行方不明者を探し出し、身元確認を行うために、多大なコストを支払うのは良いことではありません。その費用は本来、認知症の治療や予防、教育や共生などのために使うべきでしょう。

そこで、これまでも認知症によって行方不明になってしまう高齢者のために、GPS端末を用いたソリューションは多数ありました。しかし、GPS端末の場合(1)それなりの大きさがあり持ち歩くのが面倒(2)充電が必要なため電池切れが恐い(3)コストが高くなってしまい介護福祉の財源を痛める、という問題が残されていました。

逆転の発想から生まれたソリューション・・・なのか?

GPS端末の性能を小型化して高め、価格も安くしていくという方向はありえます。しかし、それには時間もかかるでしょう。そうした中、逆転の発想から生まれたソリューションが登場しました。以下、ITProの記事(2017年7月28日)より、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LAB にて修正)。

埼玉県入間市は認知症の高齢者の徘徊対策として、QRコードを印刷したシールを2016年11月から該当する高齢者に無償配布している。これまでに約40人が利用した。「爪Qシール」と呼ばれるこのシールは縦横1センチメートル角ほどで、手または足の爪に貼り付ける。QRコードには高齢者ごとに固有の3桁の数字と、入間市役所の代表番号が記載されている。爪Qシールを貼った高齢者が徘徊している場合、発見者がQRコードを読み取ることで市役所に問い合わせられるようにしているのだ。

市役所は夜間・休日の当直を含め24時間対応可能となっており、交付済み番号の台帳と照らし合わせて高齢者の身元を特定できる。台帳は市役所のほか、入間市の所轄である狭山警察署にも置いてあり、警察が徘徊中の高齢者を保護した場合も迅速に身元確認できる。そのうえで、高齢者の氏名や自宅の連絡先などの個人情報はQRコードに埋め込まず、プライバシーに配慮している。(後略)

もちろん、これは、GPS端末の場合のように、行方不明者の場所がすぐに特定できるものではありません。しかし、電源がなくても通用しますし、行方不明者が見つかった場合の後の仕事がずっと楽になります。さらに、プライバシーへの配慮もなされているという優れものです。コストは、GPS端末とは比較にならない安さでしょう。

人権侵害にならないか?疑問の声も多い

しかし難しいのは、これが人権侵害に相当するのではないか、という部分です。いかにプライバシーへの配慮があるとはいえ、では、自分が自分の爪にQRコードを貼るかというと・・・違和感を覚える人のほうが多いように思います。

自分が嫌なことを、他人に行うということは、いかにそれが合理的なことであっても、よいことではありません。また、社会福祉におけるノーマライゼーションの理想にも反します。認知症の人だけでなく、すべての個人が、爪にQRコードを持っていれば、問題はないのです。ただ、そうしたことは(おそらくは反対が多くて)できないでしょう。

同時に、実際に家族が認知症であり、かつ、その家族がちょくちょくいなくなってしまう場合はどうでしょう。当事者の中には、わらにもすがる思いで、このQRコードを使っているケースもあるわけです。これは、本当に難しい問題です。そして、難しいからといって、なにも手を打たないわけにもいかないのです。

まずは縦横1cmの大きさが問題ではないだろうか?

仮に、こうしたQRコードが、せいぜい小さなホクロ程度の大きさ(たとえば1mm角)であれば、話は少し違ってくるかもしれません。現在の1cm角という大きさは、他者からもそれがQRコードであることが見えてしまいます。しかし、面積としてはその100分の1になる1mm角であれば、他者からはそう見えません。

小さくすれば、少しは問題が緩和されるかどうかにも議論はあります。また、技術的には、そこまで小さくすると、書き込みも読み込みも困難になり、仮に可能だったとしても、コストが上がってしまいます。

それでもなお、事実として、毎年1万人以上の人が認知症が原因で行方不明になっているのです。その可能性のあるすべての人、すなわち、2025年には700〜1,300万人という人々に対して、電池切れのリスクも高いGPS端末を税金で配れるのでしょうか。その税金には、他に使い道はないのでしょうか。

今回のQRコードというソリューションには、人権上の大きな問題があります。しかしだからということで、それが必要なすべての人にGPS端末を配布するというソリューションは、実質的に不可能だと思われます。この状況にあって、QRコードという方法は、理想とは程遠く、賛成することも難しいものの、どうしても無視できないアプローチです。

※参考文献
・ITPro, 『この高齢者は誰?爪に貼るQRコードですぐに分かる』, 2017年07月28日

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