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限界マンション問題の拡大と、そこで暮らす高齢者の介護問題について

限界マンション問題の拡大と、そこで暮らす高齢者の介護問題について

「限界マンション」とは?

「限界マンション」とは、米山秀隆氏(富士通総研経済研究所・上席主任研究員)が提唱している概念で、近年、定着をみせはじめているものです。過疎化と高齢化が進む「限界集落」という言葉からの連想になっています。意味が類推しやすいということと合わせて、広がりを得ているのでしょう。

「限界マンション」とは、居住者が高齢化し、管理費や修繕費が枯渇し、老朽化が止められないマンションのことです。こうしたマンションには買い手がつかず、実質的な資産価値がなくなっています。入居率も、一般のマンションよりも低くなります。高齢化と老朽化、そして過疎化・・・まさに「限界集落」です。

これまで、世間は地方の「限界集落」にばかり注目してきました。こうした中、この米山氏の提唱が優れているのは、この状況は、なにも、地方においてのみ発生しているのではないことを示したことです。都市部におけるマンションでもまた「限界集落」と似たようなことが発生しているという部分が、本当に恐ろしいのです。

マンションの老朽化問題

建物としてのマンションの老朽化問題から考えてみます。築40年超のマンションは、2024年には140万戸、2034年には277万戸にもなります。まずは、旧耐震マンション(1981年6月以前/築36年以上)、旧々耐震マンション(1971年以前/築46年以上)の耐震構造が心配です。

地震がなくても、なにもないときにマンションが倒壊する危険性さえ、今後は高まっていくのです。そんなニュースを聞かないのは、まだ、なんとか大丈夫という話にすぎません。しかし今後の日本では、そうしたニュースが増えてしまう可能性があります。

そうしたマンションに、新規で入居する人は(まず)いないというのは、当然でしょう。そもそも、築40年を超えたマンションの入居率は、8割程度にまで下がります。入居率が下がれば、入居者の経済状況によらず、マンションの管理費や修繕費が集まりにくくもなるでしょう。それがまた、老朽化を進めてしまいます。

仮にお金があっても、建て替え自体が困難なのです。昔の法律では問題なく建設できたマンションも、今の法律では違法となる間取りなどもあります。新築しても利益の出る価格での買い手がつく立地でなければ、マンションの建設会社も乗ってきません。そしてなにより、住民が建て替えに賛成しなければ、進められないのです。

こうしたマンションの多くは、高度成長期に一気に建設されたため、このような老朽化もまた、これから一気に訪れるという部分には絶望感すら漂います。「限界集落」に観察される問題は、確かに、都市部の老朽化したマンションにも当てはまるということです。

マンションの高齢化問題

世帯主が60歳以上というマンションは、全体の約5割を占めています。エレベーターのない、または、エレベーターが動かせなくなったマンションに暮らしている高齢者も多数います。そうした高齢者は、毎日、階段の登り降りが必要になってきます。

まだ、元気なうちは、それも介護予防なのかもしれません。しかし、要介護状態になってしまえば、階段の登り降り自体が困難になります。すると、外出が減ってしまい、要介護状態も悪化する可能性が高まるでしょう。そして、後期高齢者(75歳以上)になると、要介護出現率は一気に高まるのです。

マンションに暮らしている団塊の世代が、こうした後期高齢者になるのは、だいたい2025年からです。今後は、倒壊の危険性が高まっているマンションの自宅から、一歩も外に出られない高齢者が劇的に増えていくのです。どう考えても、抜本的な手を打たないと、大変なことになります。

そうしたマンションを出たいと思っても、もはや売れません。売れないままに、新しいマンションを買えるような高齢者は、すでに、その物件を出ています。残されているのは、動くに動けない高齢者ということになりそうです。

解決策はそれほど多くはない

解決策となりうるのは、マンションを更地(有効利用できる土地)に戻してしまうという方法です。更地にしてそれを売却し、売却益をマンションの所有者で分配するのです。そのときの売却益によって、そのマンションに暮らしてきた人々には、新しい生活をはじめてもらいます。解体費用は・・・税金しかありません。

高齢者には、リロケーション・ダメージといって、引っ越しをすること自体が、心身にダメージを与えるということはわかっています。それでも、倒壊の危険性さえあるマンションに暮らしているよりは良いはずです。こうした高齢者の引っ越し先としては、日本版CCRCを活用するなど、出口の戦略についても考えておく必要があるでしょう。

こうした解決策を実現するには、法改正が必要になってきます。なんとか、2025年までに、こうした法改正にある程度の目処を立てておかないと、間に合わなくなります。これは、マンションのスラム化というだけではすまない、非常に大きな問題です。今後の動向に注目していきましょう。

※参考文献
・米山秀隆, 『限界マンションへの対応 - 次に来る空き家問題 -』, 富士通総研, 2015年12月18日
・週刊現代, 『いま全国の「限界マンション」で起きていること』, 2016年12月31日

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