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移住勧奨(いじゅうかんしょう)という言葉が、マンションの賃貸価格に影響を与えていく未来

移住勧奨(いじゅうかんしょう)という言葉が、マンションの賃貸価格に影響を与えていく未来

移住勧奨(いじゅうかんしょう)という言葉をご存知ですか?

移住勧奨という言葉があります。自宅に暮らしている人に対して、自治体が「引っ越ししたほうがいいですよ」と伝えることを意味する言葉です。そんな移住勧奨が、これから増えていく可能性が高くなってきています。

背景にあるのは、やはり、高齢化の問題です。高齢化して、運転免許を返納すると、買い物に行くのも苦労するようになります。住んでいるところが過疎化してくると、社会生活も貧しくなるでしょう。そうなると、健康だった高齢者も、あっという間に要介護者になってしまいます。

また、要介護者の場合も、町の中心部から遠いところに住んでいると、介護サービスが受けられなくなります。介護サービスを提供する業者は民営であることが多く、そうした遠方に暮らす要介護者のところに在宅サービスを届けても、利益にならないからです。

周辺に誰もいない、静かな環境に暮らすということは、もはや贅沢なことなのです。それができるのは、お金に余裕のある富裕層だけです。不便なところに暮らすことは、若いときは、不動産価格が安くなるため、コスト・メリットがあります。しかし高齢者になると、逆に、その不便さを維持するコストが大きくなるわけです。

実際に起こり始めている移住勧奨

自治体からしても、移住勧奨などしたくはありません。住民からしても、自治体にそこまで口を出されたくないという気持ちもわかります。しかし、これは枯渇しつつある国の福祉財源を考えると、どうしようもないことです。そして、そうした移住勧奨は、現実のものになってきています。以下、毎日新聞の記事(2017年5月4日)より、一部引用します。

福島県川内村は、中心部から離れた地域などで暮らす高齢者に中心部への転居を呼びかける「移住勧奨」を始める。福島第1原発事故の避難指示が村内全域で解除されて6月で丸1年がたつが、高齢化に拍車が掛かっており、行政の支援が行き届かずに生活が困難になったり孤立死したりする心配があるためだ。専門家は、状況が似ている飯舘村などにも同様の取り組みが広がる可能性があると指摘する。(中略)

中心部から離れた地域では、高齢者が夫婦や1人だけで暮らす「限界集落」になってしまった例が複数ある。村は買い物や病院通いを支援するバスを運行しているが、孤立死などが増えかねないと危機感を強めている。冬季は地域によって除雪作業が遅れ、生活物資を入手できなくなる恐れがあるため、別の1棟(2戸)を季節居住用とし、家電や家具を備え付け、高齢者が11~3月だけ中心部で暮らせるようにする。遠藤雄幸村長は「親だけが戻り、避難先で生活を続ける家族にとっても、安心感につながるのではないか」と理解を求める。(後略)

高齢者は、可能であれば、住み慣れた地域を離れるべきではありません。専門的にはリロケーション・ダメージと言って、高齢者が住み慣れた地域を離れると、心身に様々なダメージを負ってしまうことが多いからです。引っ越しをきっかけに、認知症になってしまうケースもあります。

移住勧奨が増えていく未来

先のニュースは、原発事故の影響によって顕在化した問題です。しかし、同じ問題が日本全国にあることは明らかです。移住勧奨は、過疎化を加速し、無人の地域を増やしていくでしょう。そしてこれは、過疎化が進む地方の話に限定されていません。

都会でも、エレベーターのないマンションの上のほうの階に暮らしている高齢者に対しては、本来は、移住勧奨が必要なはずです。都会のほうがむしろ、介護サービスの空白地帯が生まれやすい場合もあります。そうした空白地帯に暮らしている高齢者もまた、移住勧奨の対象になってきます。

これから価値が上がるのは、意外と、周辺の介護サービスが充実しているマンションの1階になるのかもしれません。1階というのは、防犯上の理由から、どこのマンションであっても、賃料が少し安くなるものでした。移住勧奨という言葉が広まっていくと、これが逆転していく可能性もあるでしょう。

※参考文献
・毎日新聞, 『高齢者に移住勧奨へ 孤立死防ぐ 福島・川内村』, 2017年5月4日

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