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小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)に関する実情データ、および簡単な考察

小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)に関する実情データ

小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)とは?

これまで、KAIGO LAB でも何度も取り上げてきたとおり、小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)は、介護の未来にとって、非常に重要な存在になってきています。国もまた、小規模多機能の推進に前向きであり、今後、日本ではより広く認知されていくと思われます。

小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)が目指しているのは、高齢者が元気なうちから看取りまでをカバーする包括的なサービスによって「地域の安心拠点」として認知されることです。要介護者やその家族からすれば、柔軟で多様なサービスを、まとめて定額で、長期間にわたって提供してくれる、実にありがたい存在です。

過去には、小規模多機能は、高齢者が施設に「通い」つつ、必要に応じて「宿泊」や、介護職による高齢者の「訪問」が提供されてきました。しかし、2015年の介護報酬改定以降は、地域包括ケアの中心的な存在として、地域での高齢者の暮らしを重視するために「訪問」を強化する方向に向かっています。

データでみる小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)

このように、小規模多機能は、非常に重要な存在なのです。しかしなかなか、その実情について把握するのが難しいものでもあります。そこで、小規模多機能の実情に関して、最も信頼性が高いデータ(井上, 2017年)を軸にしつつ、以下、小規模多機能の状況について、簡単に表にしてみます。

国内の事業所数(2016年1月時点) 4,966ヶ所
国内利用者の総数(2016年1月時点) 約8.4万人
(要介護認定者総数=約621.5万人の約1.4%)
月額利用料の目安(自己負担部分) 10,320〜26,849円
(食費・宿泊費・消耗品費などは含まず)
事業所あたり利用登録者数の平均 約19名
(2010〜2016年でほぼ一定)
1日あたり「通い」利用者数の平均 約11名
(2010〜2016年でほぼ一定)
1日あたり「宿泊」利用者数の平均 約4名
(2010〜2016年でほぼ一定)
1日あたり「訪問」の数の平均 約10名(2016年)
(2010年の約4名から増加)
定員の充足状況 80〜90%が最多(2016年)
(10〜20%の空きがあるということ)
利用者の平均年齢 女性=約85歳, 男性=約82歳
(2010〜2016年でほぼ一定)
利用者の男女比 女性=約73%, 男性=約26%
(2010〜2016年でほぼ一定)
利用者の世帯構成(2016年) 独居=約23%, 子供と同居=約30%
(2010年から独居が増加、同居が減少)
利用者の住まいからの距離 1km前後=約30%, 5km前後=約42%
(2010〜2016年でほぼ一定)
小規模多機能の経営状況(2016年) 赤字=約37%, 黒字=約20%

この実情データを読みながらの考察

国の方針のとおり、小規模多機能は、地域包括ケアの中心として、過去の「通い」中心のサービスから、介護職が要介護者を「訪問」する形になってきていることが伺えます。しかし「通い」と「宿泊」は量として減っていないので、これは、過去に行っていたサービスの上に「訪問」を乗せているだけとも考えられます。

注目すべきなのは、小規模多機能の経営は、赤字のほうが圧倒的に多くなってしまっているところでしょう。せっかく、介護の理想に向けた取り組みになっているのに、このままでは、小規模多機能の事業者の多くは、倒産し、廃業してしまいます。

経営改善のポイントとしては、定員に対して10〜20%の空き(2〜5名程度を追加で受け入れられる)があることでしょうか。これは、小規模多機能への社会的なニーズがないからではなくて、単に、小規模多機能の存在が(要介護者やその家族に)知られていないからである可能性が高いと思われます。

とはいえ、そもそも要介護認定の総数に対して、小規模多機能の利用者が約1.4%にすぎないところは、少しショックです。非常に優れた形態にも関わらず、現実の小規模多機能は、まだまだマイナーな介護サービスにすぎないのです。

外からは見えにくい小規模多機能の制度上の課題

実はこの背景には、制度上の問題があります。小規模多機能で介護サービスを受ける場合、それまでお世話になってきた馴染みのケアマネやヘルパー、デイサービスなどの多くが(介護保険では)利用できなくなってしまうのです(訪問看護や訪問リハビリテーション、福祉用具レンタルなどは引き続き使えます)。

小規模多機能は、様々な介護サービスを包括的に提供するものなので、ある意味で、他の形態の介護事業者にとって「競合」になってしまっています。他の形態の介護事業者も営利企業ですから、そうした「競合」に対して要介護者を紹介するような行動は(なかなか)できません。

実際に、調査データ(三菱総合研究所, 2014年)では「過去1年間に小規模多機能型居宅介護に紹介した要介護者(利用者)がいる」と回答したケアマネは、18.2%にとどまっています。ここには、紹介すべき要介護者がいなかったということもあるでしょう。同時に、紹介してしまうと自分たちの経営が危なくなってしまうという経営事情も予想されるのです。

実は、小規模多機能は、身体を動かすタイプのリハビリに弱いという意見もあります。ですから逆に、小規模多機能からしても、本当であれば、リハビリに強いデイサービスと(介護保険内で)連携できたら嬉しいのです。しかしこの連携は、現状の介護保険制度では許されていません。

国に対して求めたいのは、制度によって、こうしたおかしな対立構造を生み出すことを解消し、既存の介護事業者と小規模多機能との連携を助けていくことです。そこから、介護事業者一般の黒字化を進めていくために、各種支援を行っていくべきでしょう。

※参考文献
・井上 博文, 『全国実態調査 小規模多機能型居宅介護の動向』, 厚生労働省老人保健健康増進等事業(平成28年度), 2017年3月23日
・全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会, 『地域包括ケアシステムにおける小規模多機能型居宅介護の今後のあり方に関する調査研究事業報告書』, 厚生労働省老人保健健康増進等事業(平成27年度), 2016年3月
・WAM NET, 『小規模多機能型居宅介護』, WAM NET HP
・三菱総合研究所, 『居宅介護支援事業書及び介護支援専門員業務の実態に関する調査報告書』, 老人保健健康増進等事業(平成25年度), 2014年3月

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