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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の廃業が起こっている?(ニュースを考える)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の廃業が起こっている?(ニュースを考える)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?

普通の住宅に暮らしていくのは不安なのですが、かといって介護が必要というほどでもない高齢者向けに特化されている住宅があります。そうした住宅をとくに、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と言います。

まず、サ高住は、通常の賃貸住宅とは異なり、バリアフリー化がなされています。さらに、専門のスタッフが(1)安否確認のサービス(2)生活相談のサービス、の2つを提供してくれます。事業者によっては、これら2つに加えて、独自に様々なサービスも提供しています。

緊急通報システムなどが完備されていることが多く、高齢者でも不安の少ない生活をおくることができるように配慮されています。また、多くのサ高住には、介護事業者が併設されており、いざ、介護が必要になっても対応してもらえるという安心感もあります。

きちんとしたサ高住を選ぶことができたら、安全・安心な暮らしが手にはいります。人間は、不安の中で暮らしているよりも、安全・安心な背景があると、精神的にはもちろん、身体的にも健康になるものです。そうした意味では、サ高住は、介護予防を提供していると考えることもできるのです。

サ高住の問題点について

サ高住は、あくまでも、介護が(まだ)必要ではない高齢者を対象にして設計されています。そのため、いざ介護がはじまると、住み続けることができないケースも出てきてしまいます。人にもよりますが、終の住処にはならないと考えておく必要があるのです。

また、いくら介護事業者が併設されていたとしても、介護事業者には得意分野というものがあります。たとえば、リハビリは得意なのですが、認知症は苦手という介護事業者が併設されていた場合、サ高住に暮らしていて認知症になった場合は、その介護事業者は頼りになりません。

要介護度が高くなって、本格的な介護が必要になると、サ高住では対応できないことも多くなります。そうなると、サ高住を退去しなければならない場合もあります。当然、サ高住も、この点を問題として認識しています。そこで、終の住処であることを目指して、様々な介護にも対応できる、老人ホームに近いようなサ高住も出てきています。

このように、サ高住には、それを運営している事業者によってサービス内容が大きく異なるという現状があります。ですから、自分たちにあっているサ高住を選ぶのは、なかなかに難しいことです。とくに、まだ介護を必要としていない多くの高齢者は、介護に関する知識が乏しく、正しい選択をするための準備ができているかというと、心もとないのです。

廃業するサ高住が増えてきている?

そんな中、廃業するサ高住についてのニュースが入ってきました。NHK の調査報道によれば、2011年からこれまでに廃業したサ高住は、263件にのぼるそうです。その背景も含めて、以下、NHK NEWS WEB の記事(2017年3月16日)より、一部引用をします(段落のみ、KAIGO LAB にて修正)。

施設への入居を希望する高齢者が多い中、国は6年前から「サービス付き高齢者向け住宅」の建設を促してきましたが、NHKの調査で、これまでに廃業や登録取り消しの手続きをした施設が、全国でおよそ260件に上っていることがわかりました。専門家は需要の少ない地域で過剰に建設されているとして、ニーズに応じた整備が必要だと指摘しています。

「サービス付き高齢者向け住宅」は専門のスタッフが常駐し、入居者の安否確認や生活相談などのサービスが受けられるバリアフリーの賃貸住宅です。施設への入居を希望する高齢者が多い中、その受け皿として国が6年前から補助金や税金の優遇措置を設けて建設を促し、これまでに全国でおよそ6600棟、21万5000戸が整備されています。

この施設について、NHKが全国の都道府県などを調査したところ、入居者が集まらないなどの理由で、これまでに廃業や自治体の登録取り消しの手続きをした施設が全国44の都道府県で、合わせて263件に上っていることがわかりました。中には入居者が施設から退居を迫られたケースや、建設途中に廃業しオープンまで至らなかったケースもありました。(中略)サービス付き高齢者向け住宅の建設にあたり、国土交通省は補助金として6年前から、毎年およそ300億円の予算を組んで整備を促しています。

国が補助金をつけたため、全国でサ高住が乱立した結果として、事業者が経営難に直面しているということなのでしょう。事業者は民間企業ですから、自業自得なところもあると思います。しかし、そのサ高住に暮らしてきた高齢者にとっては、完全に自己責任だとは言えません。

もちろん、正しくニーズ調査を行って、優れた運営をしているサ高住のほうが大多数であることは、ここで強調しておく必要があります。また、正しい選択ができている高齢者もいるでしょう。しかし現実として、少なからぬサ高住が廃業しているというニュースにもまた、注目しないとなりません。

介護には大きな「情報の非対称性」がある

日本の介護はかなり複雑な仕組みをもっています。しかし厚生労働省も、意図してそうした仕組みにしているわけではありません。そもそも介護保険法が開始された2000年の時点では、日本の介護がどうあるべきかについて、具体的なところが見えていませんでした。なので、介護保険法自体が、現実に即して変化させていけるような設計になっています。

このように、日本の介護には「あるべき姿が見えないからなにもしない」ということを避けてきた歴史があります。現場に即して、柔軟であろうとしてきたのです。しかし、柔軟であるということは、過去の仕組みをどんどん新しいものに変えていくということでもあります。結果として、現在の日本の介護は、複雑でわかりにくいものになってしまっています。

人間には、遠い未来のことよりも、近い未来を重要視するという特徴があります(双曲割引/hyperbolic discounting)。ですから、まだ介護に関係していない人は、それを遠い未来のこととして、あまり気にしません。すると、介護についての勉強も進まないことになります。

こうした状況で発生するのは、複雑な介護について熟知している事業者と、介護についてなにもしらない高齢者という、情報がアンバランスな状況(情報の非対称性)です。高齢者のほうに正しい知識がないのですから、いざ介護が必要になると、事業者に頼りきりになりやすいのです。

自分にあったサ高住の選定もまた、こうした情報の非対称性があるところで行われます。このとき、サ高住のほうに良心が欠けていると、大変なことになるのは明白でしょう。同時に高齢者のほうも、ただ事業者を信頼するという態度ではよくありません。最終的には、自分の選択に責任をもつのは、自分を置いてほかにないからです。

サ高住の事例に限らず、私たちは、介護について勉強しないとなりません。それは結果として、自分自身の防衛になるばかりでなく、将来の介護負担の軽減にも大きな影響を持ちます。介護についての理解が進めば、優れた事業者を選びながら、本当の意味で安心できる生活を送れる可能性が高まるのです。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『サービス付き高齢者向け住宅 全国で廃業約260件』, 2017年3月16日

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