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セルフネグレクト(self neglect)の社会的リスクが高まっている

セルフネグレクト(self neglect)が怖い

セルフネグレクト(self neglect)とは?

セルフネグレクト(self neglect)とは、自分自身の安全が危険な状態になっていても、それを無視(ネグレクト)してしまうほどに、生きる意欲を失ってしまっている状態を指す言葉です。高齢者に多いとされ、日本の高齢化とともに、社会問題にまで発展しています。

原因としては、直接的に、本人の生きる意欲がなくなってしまっているケースもあるでしょう。同時に、うつ病や認知症を患っている独居の高齢者というケースも増えてきているようです。

とにかく、自分自身の生存に価値を感じられないため、本人は「生きていても仕方がない」という主張をすることがあります。結果として、医療も介護も拒否することが多くなります。ここには基本的人権もからみ、本人が望まない支援をすることは、かなり困難なのです。

セルフネグレクトになると、衛生面への関心も極端に失われます。その本人が不潔になることも問題ですが、ゴミ屋敷問題に代表されるような形で、周囲への迷惑となるケースも増えてしまっています。セルフネグレクトが疑われる例としては、以下のようなものがあります(経済社会総合研究所, 2011年)。

(1)家の前や室内にゴミが散乱した中で住んでいらっしゃる方
(2)極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している方
(3)窓や壁などに穴が開いていたり、構造が傾いていたりする家にそのまま住み続けていらっしゃる方
(4)認知症であるにも関わらず介護サービスを拒否されている方
(5)重度の怪我を負っているにも関わらず治療を拒否されている方

どうしてセルフネグレクトになるのか?

地域包括支援センターによる調査(経済社会総合研究所, 2011年)では、セルフネグレクトになった理由として「覚えていない・分からない=21.5%」「特段、きっかけはない=15.9%」という「不明」が多い点が、この問題の難しさを表しているでしょう。

一方で「疾病・入院など=24.0%」「家族関係のトラブル=11.3%」「身内の死去=11.0%」といった原因が特定できている部分もあります。他にも「配偶者や家族の入院・入所」「借金や金銭トラブル」「収入減等経済的困窮」という回答が見られました。

そもそも人間は、長期間、自分ではどうすることもできない状況に置かれると、自らの無力感を学習してしまいます(=学習性無力感)。そうした状況に立ち向かっても結果が出ないとき、生きる気力さえ失ってしまうのです。

いかなる社会であっても、その構成員が元気に、社会を前に進める存在であることが重要です。そう考えたとき、学習性無力感の存在ほど、社会を痛めつけるものもありません。なんとか、生きている限り、希望の持てる社会を築いていく必要があります。

セルフネグレクトは、どれくらいの人数になるのか

政府によれば、2011年時点で、セルフネグレクトと思われる人の総計は、1万1千人でした。しかし、東邦大学の岸恵美子教授は、朝日新聞の取材記事(2017年1月20日)に、以下のように答えています(改行位置のみ KAIGO LAB にて修正)。

内閣府の11年の調査で、全国に約1万1千人という推計があります。しかし、これは氷山の一角だと思います。セルフネグレクトは日本だけではなく欧米でも問題になっています。

大規模調査を実施した米国では、高齢者の9%、年収の低い人や認知症の場合は15%に及ぶという結果でした。日本に当てはめれば、65歳以上の人口が3400万人余ですから、優に200万人以上が該当する計算になります。

実態が不透明なのは、自己放置の結果、ごみ屋敷に住んで、生命、健康に深刻な打撃を受ける状態に陥ってしまった人たちを救いあげる制度や法律が整っていないためです。

過去には、民生委員がこうしたことを把握し、対策に動くことが期待されてきました。しかし、破綻しつつある日本の社会福祉の現状において、もはや、民生委員も足りない状態にあり、民生委員に丸投げはできない段階にきているのです。

損害賠償に発展する可能性も否定できない

知らないうちに、自分の親がセルフネグレクトになり、周辺の住民に迷惑をかけているということもあり得ます。特に、ゴミ屋敷問題は、不動産価値にも大きく影響しますから、それが損害賠償の対象になってしまう可能性も否定できません。

セルフネグレクトが、なんらかの病気を原因としたものであれば、治療できる可能性も残されています。また、適切な介護を受けることによっても、周囲への影響も軽減できる可能性もあるでしょう。

一番まずいのは、自分の親の状況が全く把握できていないことです。特に病気が原因であれば、早期発見が基本になります。いかに日本の介護職が優秀でも、要介護認定が行われていないと、そもそも動けません。

今のところ、日本では、セルフネグレクトを正確に把握する手段がありません。そして、繰り返しになりますが、社会がこれを民生委員に丸投げすることはできません。法整備はもちろん、役割の明確化を急ぐ必要があります。

※参考文献
・経済社会総合研究所, 『セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から』, 内閣府経済社会総合研究所委託事業(平成22年度), 2011年3月
・朝日新聞, 『ごみ屋敷なくすには セルフネグレクト、200万人超か』, 2017年1月20日

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