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消滅する地域コミュニティー(日本版ビュートゾルフは成功するのか?)

消滅する地域コミュニティーと地域包括ケアの未来

地域コミュニティーの役割

地域コミュニティとは、その地域に暮らす住民同士が交流する場を指している言葉です。こうした交流が多様であり、またそれぞれの活動が頻繁に行われているほど「地域コミュニティーが活性化している」と表現します。

地域コミュニティーは、防災はもちろん、災害時には大きな力を発揮します。活性化している地域コミュニティーでは、まず、防災訓練への参加率が高くなります。こうした地域コミュニティーでは、災害時には、安否確認、救助活動、情報の伝達、避難所の運営といったことがスムーズになります。

また、地域コミュニティーが活性化していると、孤独に苦しむ高齢者の数が減ります。また、個々の高齢者が様々な地域活動に参加しやすくなるため、介護予防や要介護状態からの自立も進みます。このように、介護が必要な人を、介護事業者も巻き込みながら地域全体で支え合う形を、地域包括ケアと言います。

このように、コミュニティーが持っている力のことを、専門用語では特に社会関係資本(ソーシャル・キャピタル/social capital)と言います。そもそも、国の予算が厳しくなる時代にあって、防災も社会福祉も、国任せにはできなくなってきています。そうした中、こうした地域コミュニティーの社会関係資本の強化は急務と言ってよいでしょう。

弱体化が進む地域コミュニティー

特に都市部においては、ご近所に誰が住んでいるのかわからなくなって久しいでしょう。こうした傾向は、都市部において顕著なのですが、地方においても、だんだん同様の傾向が見られるようになってきているようです。

重要な役割を担うことが期待される地域コミュニティーなのですが、残念なことに、その弱体化が進んでしまっているのです。地域の人々との付き合いに関する国土交通省による調査結果を以下に示します(15大都市=東京都区部及び14政令指定市)。

地域の人々との付き合い(2005年)

「付き合いはあるが、それほど親しくない」「ほとんど、もしくは全く付き合っていない」の2つが実質的に地域コミュニティーとの接続が切れている人々とした場合、大都市の約81%、市の約73%、町村の約69%の人々が、地域コミュニティーから孤立していることになります。

地域コミュニティーの弱体化が進んでいる理由

どうして、このような状態になってしまっているのでしょう。国土交通省は、この理由についても調査しています。以下に、グラフで示します(数値は%)。都市部と地方において、この理由の差はそれほど大きくはないものの、地方における人口減少の部分だけは目立っています。

地域の人々との付き合いが疎遠な理由(複数回答)(2005年)

まず、圧倒的なのは、昼間に地域コミュニティーにいないという部分です。これは、職場や学校が、自宅のある地域から離れたところにあることが要因でしょう。交通網の発達は、結果として、地域コミュニティーにはマイナスに働いてしまっています。

子供がいると、PTA、運動会や地域のお祭りへの参加の機会が増え、地域コミュニティーは活性化します。少子化もまた、地域コミュニティーにはマイナスに働いていることが理解できます。

仕事や進学を理由とした頻繁な人の出入りは、長期間にわたる人間関係の構築を阻害します。これはこれで仕方のないことですが、やはり、地域コミュニティーにとってはマイナスです。

そして無視できないのは、地域コミュニティーではなく、ネット上のコミュニティー(SNS)のほうが活性化しているという点です。これには良い点もあるのでしょうが、地域コミュニティーは、その存在意義を問われる状態に至っているとも言えるでしょう。

日本版ビュートゾルフは成功するのか?

オランダで成功した地域包括ケアのモデルに、ビュートゾルフというものがあります。現在、日本でもその導入がはじまってきていますが、要となる地域コミュニティー(インフォーマルなネットワーク)自体が弱体化していると、これも苦しくなりそうです。

私たち日本人は、もはや、地域社会に期待していないというのが本音なのです。これを一生懸命盛り立てようとしている人々もいますが、それが少数派になってしまっている現在、焼け石に水といった感もあります。草の根的な活動も大事ですが、より大きな政策が必要な段階にあると考える必要もあるでしょう。

国家レベルで、うまくいっている地域コミュニティーの事例を研究し、その横展開をするといった活動が急務です。地域活性化の予算の使い道についても見直し、草の根的な活動をより大きく効率的にしていくことも大事でしょう。

※参考文献
・国土交通省, 『都市部、地方部における地域コミュニティの衰退』
・総務省, 『地域コミュニティの現状と問題(未定稿)』

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