閉じる

東京都大田区発の高齢者見守りネットワーク「みま~も」の取り組み!

東京都大田区発の高齢者見守りネットワーク「みま~も」の取り組み!

2025年問題はすぐそこまで近づいてきている

厚生労働省の調査によれば、2015年における65歳以上の人口は3,395万人(人口全体の26.8%)でした。現時点では、実に、4人に1人が65歳以上の高齢者ということになります。また、75歳以上で見ると1,646万人(人口全体の13.0%)でした。こちらも、8人に1人というレベルです。

このままの推移で少子高齢化が進むと、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、65歳以上が3,657万人(人口全体の30.3%)、75歳以上が2,179万人(人口全体の18.1%)にのぼると予測されています。つまり、2025年には、3人に1人は65歳以上、5人に1人は75歳以上になるのです。

こうした急速な高齢化が進むと、介護・医療費等の社会保障費は爆発的に増大します。そして、今のままの社会保障制度では、確実に財政が回らなくなっていきます。これが、いわゆる2025年問題です。

地域包括ケアシステムは本当に機能しているのか

多くの高齢者や要介護者は、介護や医療が必要になった場合でも、できるだけ住み慣れた地域で、人生の最期まで尊厳をもって、自分らしい生活を送りたいと考えています。実際に、多くの高齢者が「最後の場所」として希望するのは病院や介護施設ではなくて自宅です。

そもそも高齢者のほとんどが、持ち家か借家に住んでいます。施設等で暮らしているのは、全体の1割程度にすぎません。また、高齢者にとって住み慣れた家を離れることには、精神的なダメージ(リロケーションダメージ)があります。こうしたことを考えても、自宅に住み続けることが非常に重要なのです。

こういった現状を受けて、介護・医療・住まい・生活支援・介護予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が求められています。

行政が目指している「地域包括ケアシステム」は、非常に素晴らしい、理想的な取り組みです。目指すのは、すべてのサービスが生活圏30分以内で提供され、またそれぞれのサービスがしっかりと連携している状態です。たしかに、この状況が整っていれば、自宅に居ながらにして最後まで尊厳をもった生活が送れるかもしれません。

国や地方自治体の努力により、こうした活動も、少しずつ成果をあげてきています。しかし、大きな問題は、このシステムが、多くの場合、そこにたどり着いた人だけが受けられるサービスであるという点です。運の良し悪しによって、トクをする人と損をする人に分かれてしまうのです。

おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)の先進的な取り組み

本来、あらゆる社会福祉サービスは、それを知っている人だけが使えるようなサービスであってはなりません。「地域包括ケアシステム」もまた、地域に住む誰もが、日頃からその存在を知り、いざという時にはすぐに頼れる体制が整っている必要があります。

また逆に言えば、地域に住む誰かがそのサービスを必要としていることを、サービスを提供する側、あるいは周りに住む人間が気づき、手を差し伸べられる体制が整っていなければならないのです。つまり「気づきのネットワーク」が出来ていなければなりません。

こうした「気づきのネットワーク」の構築において、素晴らしい取り組みを行っているのが、東京都大田区発の地域包括ケアシステム「おおた高齢者見守りネットワーク」です。愛称は「みま~も」と言います。

「みま~も」は「住み慣れた地域で暮らし続けたい」という高齢者の想いに応えるため、地域の医療・介護・福祉の専門職が始めた活動です。今後、ますます注目を集めていく活動であり、広く日本中に横展開されていくことが期待されています。

「みま~も」が目指す、日頃からの専門職と地域住民のつながり

高齢者を取り巻く問題は多様化し、専門職一人一人の個別対応だけではカバーしきれません。そのため、地域住民と、地域で働く医療・保健・福祉専門職がつながり合い、高齢者を支え合うシステムづくり、まちづくりを進めることにより、包括的な対応をしようとしています。

高齢者が安心して暮らせる街づくりをするためには、専門職がサービスを準備して、利用者が来るのを待っているだけでは足りないというのが「みま~も」の考え方です。待つだけではなく、専門職の方から、地域に飛び出して、日常的に地域住民とつながる仕組みを作ることが大切であると考えています。

普通は、介護が必要になってから、要介護者が、事業者やケアマネージャーとつながります。しかし「みま~も」では、日頃から、地域の専門職と住民が積極的に関わっています。現在、介護が必要な人とはもちろん、まだ介護が必要ではない人ともつながっています。

たとえば、駅前の公園では、ケアマネージャーと地域の元気な高齢者が、一緒に農作業をしています。都会のど真ん中の公園です。この高齢者は、現段階において、特にケアマネージャーのお世話になる必要があるわけではありません。

しかし、元気な頃から、農作業を通して、ケアマネージャーに気軽に相談できる関係ができていれば、いざという時にも、ためらうことなく相談することができます。また逆に、ケアマネージャーが、地域の高齢者の状況について把握することも可能になります。

「みま~も」の主な取り組み事例1:地域づくりセミナー

地域づくりセミナーは、地域住民が、地域の医療・福祉の専門家や警察・消防などの機関から、地域全体での見守りの重要性や「気づき」の視点について学ぶことを目的として実施されている様々な講座です。

当初は、「見守ってあげる」側にあたる、比較的若い層のボランティアなどを対象に想定していましたが、実際の参加者は70~80代が7割以上を占めていました。この年齢層は、一見して「見守られる」立場ですが「自分の将来のために」を大前提としながらも「互いに見守る」という意識も持って参加していることがわかったのです。

セミナーは、若い支援者を想定した「地域で高齢者見守る気づきの視点の提供」に成功しました。さらに「住民と地域の専門職とが顔の見える関係を築いておく、あるいは元気なうちから地域包括支援センターや専門職の存在を知っておくことを促し、いざというときに相談をしやすい環境をつくる」という取り組みにも発展したのです。

現在では130名以上の方が「互いに見守る」地域を目指し、継続して参加してくれているそうです。セミナーで講演する人や会場にいるスタッフは全員、この地域の専門家です。つまり、何かあったときに参加している高齢者を支えてくれる人にあたります。

「その専門家がこの地域に暮らす自分に話してくれていて、私に何かあっても、この人たちが支えてくれる」と 参加者が感じていることこそが、地域に暮らす人たちの安心につながるのです。

「みま~も」の主な取り組み事例2:高齢者見守りキーホルダー

「みま~も」が、地域に暮らす高齢者に届けた「安心のかたち」が「高齢者見守りキーホルダー」です。利用者は、事前に管轄の地域包括支援センターに個人情報を登録するための申請書を届け出ます。申請登録が済むと、利用者にこれらの個人情報に対応する「個人番号」の入ったキーホルダーが手渡されます。

キーホルダーには、担当する地域包括支援センターの電話番号とともに「もし私の身元がわからないときは、ここに連絡してください」というメッセージが添えられています。出先などで突然倒れ、緊急搬送された場合などに、迅速に住所、氏名、緊急連絡先、医療情報等の確認が行える、という仕組みになっているのです。

このシステムは情報の正確さが命なので、「登録情報の更新」を重視しています。キーホルダーを通して地域包括支援センターとつながった方たちとの「つながりの更新」の意味も含めて、年に1回、誕生月に管轄の地域包括支援センターに来てもらうことを原則としています。

「みま~も」の主な取り組み事例3:みま~もステーション

「みま~もステーション」の活動には「みま~もサポーター」と呼ばれる、言わば「応援団」となってくれる住民がいます。みま~もサポーターは講座に参加したり、講座の講師をしたり、ボランティアとして活動したり、各々のライフスタイルや身体状況に合った参加の形で、自身が自由に選択し、時には役割を担い関わってくれています。

みま~もサポーターには主体的に関わってもらうため、敢えて登録料を納めてもらっているのが特徴です。現在ミニ講座は、パソコン教室、みま~もレストラン、日本伝統文化講座などの、協賛企業が講師を担当している講座の他、手話ダンス部、手芸部といった、みま~もサポーターが講師となる活動も増えてきています。

こうした活動の大切なところは、「誰かのために、何かしてあげよう」とか「何かしてもらおう」といった感覚から始まっていないところです。地域住民が「自分のために」活動して、それが結果的に周囲のためになるというのが理想的な形です。また、役割がある、必要とされているという感覚は、介護を予防するうえでも非常に大切なポイントになります。

全国にひろがる「みま~も」の取り組み

「みま~も」の活動は各地で共感を集め、現在は、大阪府の岸和田市と群馬県の太田市で、それぞれ活動拠点が出来ています。また、その他の多くの地域においても「高齢者見守りキーホルダー」を取り入れるなど「みま~も」のシステムが、地域包括ケアの実現可能な仕組みとして広がっています。

これからの高齢社会に必要なのは「気づきのネットワーク」を前提とした「地域包括ケアシステム」の構築です。今後ますます「みま~も」の取り組みが、全国的に広がっていくことを期待します。

※参考文献
・厚生労働省, 『地域包括ケアシステムの構築に関する事例集』, 2014年3月

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR