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配偶者のいない高齢の男性が「自分らしさ」を見つけていくプロセスについて

配偶者のいない高齢の男性が「自分らしさ」を見つけていくプロセス

自宅を出て介護支援を受けることの意義

デイサービスやデイケアといった、要介護者が自宅を出て、通所して受ける介護支援のサービス(通所介護)があります。そこでは、レクリエーション、リハビリ、食事、入浴といったサービスが提供されています。

こうしたサービスを受けると、身体機能が回復したりするのは当然です。さらに、孤独が解消されたりする点も重要です。そして、サービスを利用してから半年後までには、新たな「自分らしさ(=自分の行為を自ら選択して決めること)」の獲得について前向きになることが、学者による研究結果として知られています。

このように、デイサービスやデイケアには様々な効果があるのですが、当然、個人差もあります。個人差の中でも特に「配偶者のいない高齢の男性」という属性をもった人の場合、他の属性の人よりも効果が得られにくいという現場の経験則があることは無視できません。

配偶者のいない高齢の男性が「自分らしさ」を獲得するための条件

こうした「配偶者のいない高齢の男性」に注目した研究(山田, 2015年)があります。この研究結果をベースとして「配偶者のいない高齢の男性」が「自分らしさ」を獲得するための条件について、以下、簡単にまとめてみます。

条件1. 気持ちに折り合いをつける

心身になんらかの障害を抱えていたり、若いころのようにバリバリと仕事をこなしていない高齢者の場合、自らの値打ちを見出すということは、簡単ではありません。しかし、それを思い悩むということ自体が大事なことです。そうした悩みがあってこそ、自分の能力には限界があることを受け入れるという段階に至ります。自宅を出て、介護支援のサービスを受けるということ自体には、不本意なものを感じても、とにかく納得しようと努力することも大事です。そこの取り決めに従って、通所をやめてしまわないことも大事です。そうした行動を通して、顔見知りも増えていきます。このように、いくつもの段階を経て、自分の気持ちに折り合いをつけていきます。

条件2. 活力の素を得る

わざわざ通所するのに、自分の自由が奪われているように感じてしまえば、続きません。通所してサービスを受けるにしても、そこに十分な裁量の余地があることは大事でしょう。そして、自分と同年代の人々と交わることで、かつての気分を共有することも大切です。そうした人々の中に、趣味や関心が近い仲間ができれば、気分もより前向きになるでしょう。そして、そうした仲間と競争したり、遊んだりしながら、わくわく感が得られるようになれば、それは生きていく上での活力ともなります。このように、いくつかの段階を経て、通所して受けるサービスが、活力の素になっていきます。

条件3. 気力の土台を固める

たとえ、不自由な身体で難儀していても、それ自体について文句を言っていても仕方がありません。とにかく、自分でできることは自分でしようとすることが大事です。残っている身体の機能を鍛え、問題のあるとおろも少しでも改善させようと努力すれば、機能の回復が見込めるだけでなく、人としての誇りも高まります。そして、自分の生活については、自分で考え、決めていくという意欲も強まっていくでしょう。こうして、生きる気力の土台となる自らの尊厳を獲得していきます。

条件4. 自分で自分を評価し振り返る

過去の自分の実績を振り返り、この社会に対して、自分なりに貢献してきたことを確認します。同時に、過去の自分の失敗も振り返り、無知を恥じる態度も大切です。そうして自分自身の評価を進めていくと、自分の得意なことや苦手なことが見えてきます。そうした中でも、特に、自分の得意なことの中には、今もその能力を維持できている部分もあるかもしれません。そうしたところから、正当な優越感を得たりすることも、大事なことでしょう。そこからまた、今の自分にできる範囲で、社会的な役割を果たしていきたいと思えたら素晴らしいです。

条件5. 感謝できる環境がある

通所する場に、想定外の心地よさが感じられることが大事です。そこで、自分がよい方向に変わっていくことが実感されたりすれば、周囲にいるスタッフの気遣いにも、きちんと感謝することができます。自分の状態が改善していくことをスタッフが願っており、そうした願いに応えたいという気持ちにもなれば、最高です。そして、これまで自分にはできないと思っていたことが、少しずつではあっても、できるようになっていくような成長があれば、未来への希望も出てきます。このような、感謝できる環境が得られるかどうかは、多くの高齢者にとって重要です。

条件が整えば価値観も変わっていく

上記のような条件が整えば、高齢者となり、心身の不自由に苦労しないとわからないことがあると自覚されていきます。そして、自分と同じように苦しむ人々が他人のようには思えなくなり、本当の心遣いができるようになっていきます。

ここまで到達すれば「配偶者のいない高齢の男性」であっても、新たな「自分らしさ(=自分の行為を自ら選択して決めること)」の獲得について前向きになっていきます。それに成功すれば、精神的な成長が実感されます。精神的な成長があれば、周囲から感謝されることも増え、自分の存在に価値を見出すこともできるようになるでしょう。

こうした状態に至るための条件を整えることは簡単ではありません。ただ、こうした条件がある程度明らかになっていることは、目標を設定し、計画的な生活をする上で、なんらかの助けになると思います。

※参考文献
・山田 恵子, et al., 『介護を必要とする高齢男性のデイケアへの適応過程 -配偶者のいない高齢男性が『自分らしさ』を見つけていくプロセス-』, 聖徳大学研究紀要 26, 77-83, 2015

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