閉じる

高齢者の一人暮らしが増える中、住居について考える

高齢者の一人暮らしが増える中、住居について考える

高齢者だけの住まいが急増している

2015年の高齢化白書によると、高齢者のいる世帯は増え続けており、2013年の時点で2,242万世帯に上りました。国全体で5,011万世帯が暮らしていますので、高齢者のいる世帯は約45%を占めています。もうすぐ、ほぼ2世帯に1世帯には高齢者が住んでいるという状況になります。

さらに注目すべきなのは、高齢者が住んでいる世帯(2,242万世帯)のうち、過半数が単独世帯、あるいは高齢者夫婦のみの世帯となっていることです。ここで一番多くなっているのは高齢者夫婦のみの世帯で、697万世帯です。

次に多いのが高齢者の単独世帯、つまり一人暮らしです。こちらは男女共に増え続けています。1980年に男性4.3%、女性が11.2%だった高齢者の一人暮らしは、この30年で男性11.1%、女性は20.3%まで増えています。

一方、親子孫の三世代がそろっている世帯はどんどん減少しています。かつては、同居している祖父母に面倒を見てもらった子供もたくさんいました。子供は、高齢者が持っている知恵や経験から学ぶこともできました。しかし、そうした時代は終わりつつあります。

これからの自宅をどう考えるか

現在、高齢者の約8割が持ち家に住んでいると言われています。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの借家を合わせると、実に9割以上の高齢者が在宅で生活をしています。

現在、サ高住等の整備は進んでいますが、順調に進んだとしても、こうした高齢者向けの住宅は、高齢者人口の5%しかカバー出来ません。ということは、我々は「いかに自宅での居住を続けるか」を考えていかなければならないのです。そのために、地域包括ケアという考え方が進んでいます。

地域包括ケアシステムを構築するうえで「住まい」はその要になる部分です。地域包括ケアシステムの概念図では「住まい」が植木鉢で「医療」「介護」「予防」を育てる器であると表現しています。このケアシステムを回していく(育てていく)うえで「住まい」は大きな意味を持っています。

例えば、この器が小さすぎたらどうでしょう。高齢者はそもそも、移動する日常空間は狭まっていくものですが、あまりにも狭すぎる住居は、生活支援や福祉サービスの導入にも支障を来たします。

通気性があまりにも悪い場合はどうでしょうか。換気の悪い部屋ではカビが生えてきます。久しぶりにものを移動させたら、カビで真っ黒(真っ白)だったということはよくあります。カビを吸い込みながら生活すると、呼吸器系の病気になりやすくなるのは多くのデータから明らかです。

最近では「ゼロ次予防」と言って、病気になる前にその要因を改善しようとする動きがあります。こうした動きでも「住宅」は非常に大きな改善すべき要因の一つになっています。

これからも住み続けられるように住居を考える

在宅介護のメリットはどこにあるのでしょうか。まずは、家族、知人、友人などとの信頼関係が築きやすいことでしょう。新たな土地に住みかえる、介護施設に入る、あるいは遠方に住んでいる子供や親戚の家に移るのは高齢者にとっても大きなストレス(リロケーション・ダメージ)です。

自宅に住み続けることによって、自分の住んでいる地域、あるいは建物に対しても愛着がわいてきます。さらに自分の利用しやすいように、少しずつ自宅をカスタマイズしていくことも老化を防ぐ助けとなります。自宅では、より主体的な生活を送ることが出来るのです。

逆に、自宅に住めなくなる理由の中で大きいのは、加齢による身体機能の低下です。また、一人で暮らしていくことで、いつか孤独死してしまうのではないか、周りに迷惑をかけてしまのではないかという不安感も、自宅を離れる理由になります。

自宅に住み続けるには、日頃から日常生活の自立を心がけ、フレイルに気をつけながら、社会参加の頻度や質をあげていくことが大切です。

今はまだ介護が必要でない年齢でも、いつかは在宅介護を考えなければならない時がやってきます。その時に、住み続けられる自宅を考えておくことも大切でしょう。いわゆるバリアフリーな設計にしておくことはもちろん、寝室とトイレの配置を近くしておくなどの工夫も有効です。

すぐには必要ないかもしれませんが、各部屋に緊急通報装置がついていることも、在宅介護のプラスになるでしょう。一人で生きていかなければならない可能性が高い中で、助けが必要なときに、助けが呼べるという安心感は重要です。もちろん日常的に安否確認してもらえるような、地域における関係づくりが大事なことは言うまでもありません。

※参考文献
・内閣府, 『平成27年版高齢社会白書(概要版)』, 2015年
・阪東 美智子, 『居住環境分野から:安心安全な高齢者の「住まい」の整備』, 保健医療科学, vol.65 No.1,36-46, 2016

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR