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災害時の介護対応について感じたこと(自衛隊への要望として)

災害時の介護対応

災害時に要介護者が抱える大きなリスクについて

食事と排泄は、人間の生命維持にとって欠かせない日常の活動です。しかし、要介護者の中には、介護職によるサポートがなければ、食事と排泄ができない人もたくさんいます。つまり、介護職の存在は、多くの人にとって、文字通り「命綱」なのです。

災害が起こると、こうした要介護者のところに、介護職が行けなくなることも少なくありません。介護職にも家族がありますし、介護職自身も被災者として避難していることもあるからです。また、要介護者の自宅や介護施設までの道路が通行止めになることもあるでしょう。

こうした状況になると、要介護者によっては、数日間はなんのサポートも受けられないという可能性も出てきます。そこで心配なのは、水分補給はもちろんなのですが、排便上の不衛生によるノロウイルスへの感染です。

ノロウイルスは、特に便の中に多くいる可能性が高いのです(いる場合は、約10億個/1g)。そして、ノロウイルスの感染力は強く、ウイルスが100個もあれば感染してしまいます。つまり、ノロウイルスへの感染は、便の場合、0.0000001gという微量でも発生してしまう可能性があるのです。特に、小さな村が孤立したりすると、村単位でのノロウイルスへの感染などにつながってしまう懸念があります。

身体が衰弱している高齢者の場合、ノロウイルスへの感染は致命傷になりえます。ただでさえ水が入手しにくい状況にあって、嘔吐などによる脱水症状は、かなり危険だと思われます。災害があってから、はじめの排便までの数時間以内に、要介護者のところに介護職がだどりつくような体制の整備が求められるのです。

被災地で介護職が足りないというニュースに感じること

今回の熊本地震では「熊本の被災地で、介護職が130人足りない」というニュースが、地震から2週間後に報道されました。この報道が駆け巡るまでの2週間に、どれだけの要介護者が危険にさらされたかを考えると、また、どれだけの介護職が不眠不休で動いたのかを考えると、胸が苦しくなります。

こうしたニュースがあれば、全国から、十分な介護職が被災地入りするのかというと、それは違います。そもそも、介護職はどの都道府県でも足りていないのです。それぞれの介護職が受け持っている今の現場を離れることは、その介護職が担当している要介護者の危機につながります。

そんな中、地震発生の日(4月14日)から数日で、避難所にてノロウイルスへの感染者のニュースがありました。現場では、多くの人が、ノロウイルスの発生をおさえようと、頑張っていると思われます。今も、犠牲者が増えないように、戦っている人々がいます。

こうした災害経験から、今後、考えていかないとならないのは、私たちの社会が、災害時の緊急リソース分配に強くなることです。実際に、東日本大震災のときも、介護職が介護現場ではなく、がれきの処理に駆り出されていて、要介護者が辛い思いをしたというケースも多数ありました。

政府に検討してもらいたいこと

災害があったとき、特に、要介護度の高い在宅の要介護者への対応については、数時間以内での対応を、標準のプロトコルとして整えてもらいたいです(既に存在しているのであれば、介護職の不足がニュースになるのですから、量的な問題があります)。

まず、災害時に現地に行ける介護職を、普段から(社会福祉協議会に)登録しておくことも大事でしょう。しかし、一般の介護職は、先にも述べたとおり、現在の介護現場をいきなり投げ出すことはできません。すると、こうした介護職が被災地に派遣されるまで、どうしても数時間というのは無理があります。また、二次災害も恐いです。

そこで検討してもらいたいのは、災害直後から現地入りすることの訓練を受けている自衛隊が、要介護度の高い要介護者への1次対応をすることです。孤立してしまった村であっても、災害後の(理想的には)数時間以内に、その現場で介護対応ができるように、自衛隊の中に、介護のプロ集団も作ってもらえないでしょうか。

また、現在は、せっかく熊本までボランティアに行っても、仕事が割り振られないという状況になっているようです。災害があったときに、現地にボランティアに行ける可能性の高い人には、介護に関する学習の機会を無料で与えて、いざというときに、介護対応ができるように訓練しておくことも大事かもしれません。

※参考文献
・朝日新聞, 『地震避難者からノロウイルス検出 熊本市の避難所で2人』, 2016年4月18日
・毎日新聞, 『<熊本地震>介護職員130人不足 厚労省が派遣要請』, 2016年4月30日
・TBS NEWS, 『熊本にボランティア殺到、仕事を割り振れない事態続く』, 2016年5月2日

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