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【保存版】在宅介護 7つの訪問系サービスを俯瞰する

訪問系サービスを俯瞰する

訪問系の介護サービスに対する基本的な考え方

たとえ年老いて、心身の自由がきかなくなったとしても、人は、住み慣れた地域のなかでの生活を望んでいます(もちろん、例外もあります)。馴染みの環境を離れてしまうことは、認知症を悪化させるリスクがあることも知られているため、これはただの感情論ではないのです。

介護が必要だからということで、いきなり介護施設などに入所してしまうと、こうした希望を満たすことができません。また、大きく環境が変わることによる認知症リスクも無視できないことから、介護においては、まずは在宅における対応からはじまることになります。

できるなら、こうした在宅における対応のまま、それ以上の介護サービスを必要とせずに人生をまっとうすることが理想的です。その意味から、在宅の要介護者に対して様々なサービスを提供する「訪問系サービス」こそが、介護の第1防波堤とも言えるのです。ここがダメだと、要介護者の状態はどんどん悪化してしまい、在宅以外の介護サービスが必要になっていってしまうからです。

訪問系サービスの種類と注意事項

では、具体的には、自宅に訪問して介護サービスを提供してくれる「訪問系サービス」にはどのようなものが存在しているのでしょうか。大きく分けて7種類のものがあるので、まずは、この7種類について理解するところからはじめるとよいでしょう。

なお、これらの介護サービスは、すべて、無条件で使えるということはありません。要介護の度合い(要支援1〜2、要介護1〜5)によって、使えたり使えなかったりします。逆に、要介護認定を受けていなくても、介護予防という文脈で使えるサービスもあるので、そこはケアマネ自治体の窓口などに相談しつつ注意してください。

また、ケアマネや自治体の窓口にも、担当者の職務経験にばらつきがあります。ベテランであればともかく、経験の浅い担当者の場合は、これら7つの「訪問系サービス」について、全てを把握しているとは限りません。そこは、自分でも勉強しておかないと、思わぬ損をすることがあるので注意してください。

1. 訪問介護(ホームヘルパーサービス)

介護の世界で、いちばんの最前線にいるとされるのがヘルパー(訪問介護員)です。ヘルパーは、食事・風呂・排泄を助けてくれ、掃除・洗濯・買い物までやってくれることもあります(要介護度、居住地域などによっても異なりますが)。この、ヘルパーを派遣してくれるのが「訪問介護・介護予防訪問介護」です。

ヘルパーは、冷蔵庫の中身がどうなっているのかといったレベルで、要介護者の現状について、もっとも深く細かく理解しているとも言われます。ある意味で、家族よりも要介護者の今について詳しくなっている人々です。また、ヘルパーはお手伝いさんではなく、介護の専門職です。要介護者の状態が悪化してしまわないよう、専門の訓練がされています。

要介護者ともっとも日常的に、長い期間を共に過ごすのがヘルパーでもあります。ですから、ヘルパー次第で、要介護者の状況は良くも悪くもなるのです。非常に重要な仕事だからこそ、ヘルパーの選定には慎重にならないといけません。

同時に、要介護者によるヘルパーへのパワハラ、セクハラも多数あることがわかっています。ヘルパーとお手伝いさんの区別がついておらず、契約外のことをお願いして困らせていることもあります。家族としては、要介護者がヘルパーにこうした迷惑をかけていないかについても、しっかりと把握する必要があるでしょう。

優秀なヘルパーを見分けるには、過去記事『優秀なヘルパー(訪問介護員)の条件;コンピテンシー』を参照してください。

2. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

24時間365日の対応を定額で行ってくれるのが「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」です。ヘルパーとは異なり、月額定額にてサービスを提供してくれるため、介護を必要とする場面が多い場合は、この訪問系サービスを活用するのがよいでしょう。

特に、排泄や服薬のために頻繁な介護が必要な要介護者にはなくてはならない介護サービスです。また、要介護者が独居であり、エアコンの調節や頻繁な水分補強が必要といった場合に威力を発揮します。

ただし、この「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、自治体の財政状況などによって、そもそも提供されていなかったり、順番待ちだったりすることもあります。要介護者が暮らす地域に、この介護サービスがあるかどうか、まずはケアマネに確認してみる必要があります。

この介護サービスは、知らないと損をする典型的なものです。より詳しくは、過去記事『知らないと絶対「損」をする。定期巡回・随時対応型訪問介護という(名前の長い)サービス』を参照してください。

3. 訪問入浴介護

在宅介護の中で、家族(介護者)がもっとも負担に感じるのは、入浴と排泄に関する介護です。特に入浴は、すべって転ぶと大変なことになる(要介護度が上がる)ため、素人がすべて自分で行おうとすると危険です。通常の「訪問入浴介護」においては、男性も入れて3人がかりで入浴のサポートが行われます。それだけ大変な作業という意味でもあります。

「訪問入浴介護」において、特に気をつけたいのは、要介護者の、自分の裸を、他人に見られることに対する心理的な抵抗です。誰だって、はじめは嫌がるのが普通です。特に、異性による入浴介護は、絶対に受け入れない要介護者も少なからずいます。

しかしだからということで、家族が入浴介護をしていると、身体的な疲れがたまってしまうだけでなく、そもそも危険なのです。できるだけ、要介護者の意思は尊重すべきですが、だからといって、危険なことを続けるのは得策とは言えません。

ベテランの介護職に話をきくと、裸を見られるのを嫌がるのは、女性よりもむしろ男性に多いそうです。しかし、男性の身体は、女性よりも大きく重いこともあり、家族(特に配偶者の年老いた女性)が行うことが無理というケースもあります。それでも、どうしても無理というときは、普段は、なるべくおしぼりで身体を拭く程度の対応が限界になることも覚悟しなければなりません。

デリカシーのない話かもしれませんが、訪問入浴介護を続けているうちに、裸を見られることにも、慣れてきます。その恥ずかしさ以上に、さっぱりと身体を清潔に保つことの喜びのほうが大きいこともあると思われます。

4. 訪問看護

「訪問看護」は、訪問介護(ホームペルパー)のサービスに近いのですが、そこに医療者の目線が入っていることが、訪問介護とは大きく異なります。基本的には、訪問看護ステーションから、専門の看護師が自宅にきて、在宅での病気・障害とのつきあいを、24時間365日サポートしてくれます。

訪問介護よりも医療寄りであるため、医師との連携に強いことも魅力です。療養上の世話(身体を拭く、洗髪、入浴、食事、排泄など)もサポート・指導し、また、病状の確認や一部の医療処置などもしてくれます。

実は「訪問看護」と、その他の「訪問系サービス」には、役割の重複が見られます。これは、医療業界と介護業界の間で、調整面での困難があるためだと思われます。ですから、利用する側としては、それなりの注意が必要です。

ただ、理解しておきたいのは、看護師はかなり多忙で(場合にもよりますが)1人につき80名以上といった人数の要介護者を担当していたりするという事実です。このため、自宅に来てくれても、時間的な余裕がないこともあり、望んでいる介護サービスが受けられないということもあります。

不足する看護師の問題については、過去記事『人材難の介護業界、なかでも看護師は、特に足りないのです。』を参照してください。

5. 訪問リハビリテーション

「訪問リハビリテーション」は、要介護者が、可能な限り自立した生活を送ることができるように、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅を訪問して、リハビリテーション(機能回復+社会参加)を行ってくれるというものです。

このとき注意したいのは、リハビリテーションというのは、一般に知られているような、機械を用いてガシャガシャとトレーニングを行うようなものに限られないということです。実際には、普段の生活の中で、要介護者がそれをリハビリテーションであると感じないままに、機能回復や社会参加が進むということです。

特に、身体の機能回復という部分については、必ずしもリハビリテーションの目的ではない点には注意してください。極端に言えば、身体のどこかに不自由が残ったとしても、元気に社会参加していける状態にあれば、無理に身体を鍛える必要もないのです。

ですから優秀な療法士であればあるほど、日常生活そのものをデザインして、そこにちょっとしたルールを作り(例えば、人参の皮むきだけは要介護者が自分で行うなど)、結果として身体の機能も回復させていく(または衰弱していくのを予防する)のを狙います。

こうした背景を理解しないままに、要介護者が「うちに来る介護サービスの人は、ちゃんと手伝ってくれない」というクレームを言うことがあります。ここは、誤解のないようにしておく必要があるでしょう。

なお、要介護者に認知症がある場合は、リハビリテーションが難しくなります。より詳しくは、過去記事『認知症の人にとっての「リハビリ」とは?』を参照してください。

6. 居宅療養管理指導

「居宅療養管理指導」は、本来であれば、出向いてうけるべき医療サービスを、自宅に居ながらにして利用するというものです。言葉からは想像しにくいのですが、具体的には、医師や歯科医が自宅に来てくれたり、薬剤師や栄養士、歯科衛生士、看護師などが自宅に来てくれるような、そうしたサービスです。

今後は、インターネットを活用した遠隔診療も増えていくので、この分野は、どんどん便利になっていきます。とはいえ、注意したいのは「居宅療養管理指導」は(1)あくまでも自宅を出られない要介護者のためのサービスであること(2)あくまでも指導がメインで治療は行えないこと、の2点です。

「居宅療養管理指導」も「訪問看護」と同様に、医療系のサービスなので「介護系サービス」とは連携がうまくいかないことがあるのは、どうにも残念ですが、事実です。そこも注意してください。

介護をする家族としては「居宅療養管理指導」や「訪問看護」で指導されたりしたことは、ケアマネやヘルパーにも伝えておくのを忘れないようにしましょう。本来は、彼ら/彼女らのほうで、しっかりと連携すべきところなのですが、現実は、ここのコミュニケーションが問題となるケースがあります。

7. その他の各種在宅サービス

その他にも、自宅に来てくれるサービスは多数あります。ここで注意したいのは、自宅に来てくれるものの、介護保険が適用されるかどうかは、サービスにより異なるということです。心配なら、ケアマネに相談しながら利用するとよいでしょう。

代表的なところでは、出張理容・美容(民間が主)寝具のクリーニング(自治体が主)配食サービス(民間・自治体・NPOなど)介護タクシー(民間が主)などがあります。

他にも、たくさんのサービスが生まれてきているので、色々と調べてみることをお勧めします。便利なサービスを見つけると、介護の負担が一気に減るということもよくあるので、そこは宝探しのつもりでやると、気が滅入らないかもしれません。

訪問系サービスを知った上で検討すべき1つのサービス

上記の7つの「訪問系サービス」は、それぞれを上手に組み合わせて使うという難しさがあります。隙間も生まれやすく、そこに、ポテンヒットのような問題も起こります。しかし、こうした異なるサービス間には行政による線引きがなされているので、介護サービスの提供者からすれば、どうしようもないことです。

こうした状況を受けて「訪問系サービス」のアンチテーゼ(逆の立場)として生まれているのが、地域密着型施設と呼ばれる介護サービスです。こうした中で、特に意識すべきなのが「小規模多機能型居宅介護」と呼ばれるサービスです。

「小規模多機能型居宅介護」という名前は覚えにくいですが、居宅介護というくらいですから、基本的には在宅介護の一種です。必要に応じて、自宅にも来てくれます。しかし、上記の7つの「訪問系サービス」とは異なり、柔軟に、必要な介護を、定額で提供してくれるのです。定額というところが、訪問介護などとは大きく異なります。

必ずしも、誰にとってもよいとは言い切れないのですが、この「小規模多機能型居宅介護」に切り替えたところ、噓のように介護の負担が軽くなったという話も聞きます。とにかく、情報を集めて、検討してみる価値はあるでしょう。

ここで、気をつけておきたいのは「小規模多機能型居宅介護」を選択する場合は、それまで利用してきたヘルパー、ケアマネ、デーサービス、デイケア、ショートステイなどが介護保険では(普通は)利用できなくなるということです。

つまり「小規模多機能型居宅介護」は、上記7つの「訪問系サービス」とは対極にあり、どちらかしか選べないという状況にあるわけです。介護保険制度には、まだまだ問題があります。しかし、いちいちそれに文句を言っていてもはじまりません。とにかく現状を理解して、上手に活用することが求められます。

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