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介護者が困っていること(7項目)に対して、企業ができること。介護離職を少しでも防止するために。

介護者が困っていること(7項目)

要介護者を介護する家族が困っていること

介護者(家族)の負担を減らすことは「介護離職ゼロ」を目指すと決めた日本にとって、非常に重要なポイントです。この介護者の負担と、抑うつ状態(うつ病の一歩手前)の関係性について調べた研究があります(松村, 2014)。

調査対象となったのは、東京都内および近郊で、在宅介護をしている介護者(サンプル数93名)です。まず、大変な結果として、そもそも介護者の64.5%が、抑うつ状態(介護負担感の大きい人も含む)にあることがわかりました。

これだけでもすでに「介護離職ゼロ」が、いかに難しい目標であるかがわかります。仕事をしていて抑うつ状態となれば、そもそも休職すべき状況とも言えるわけです。在宅介護が、抑うつ状態を生み出してしまうとするなら、そこに手をつけないと、仕事との両立など実現できるはずもありません。

行政の対応を待っているだけでは、介護離職が起こってしまいます。となると、企業として介護離職を減らすことを考えるのであれば、介護者である従業員の「困っていること」についても、できるところまで介入していく必要があるということです。

在宅介護で、介護者が困っていること(7項目)

同調査では「困っていること」として自由記述された内容を7つのカテゴリに分類しています。それぞれ、より具体的な中身と企業の対応について、考えてみます。ここの内容は、論文そのままの記述ではなく KAIGO LAB による加筆が多いので、気になる場合は、原典をあたってください。

1. 経済的負担感

要介護車の親が、大企業に勤務していたりしない場合、毎月の年金は、たいした金額になりません。家賃分と水道光熱費くらいで、年金分はなくなってしまうケースも少なくありません。せめて財産があればよいのですが、自宅の長期ローンをやっと返却し終わったくらいで、他に大きな財産がないことも多いでしょう。では、その自宅を売却してお金を作ろうと思っても、運がよくないと売れません。売れるにせよ、建っている家には価値がなく、土地として売るために建物を壊す費用を考えると、それが土地の売却代よりも高いなんていう話もあります。企業に期待したいのは、ホンダの改革ように、家族手当の中身を見直し、配偶者手当をゼロとする代わりに、介護手当の支給を検討することです。

2. 医療への不満

医師に相談しようとしても、忙しいからという理由で聞いてもらえず、よくてもソーシャルワーカーを紹介されることが多いようです。また、せっかく仕事を休んで診察に付き添っても、30分程度の時間で診察は終わりとなり、その後の展望もなにもない状態になります。また、介護に関する相談には「若すぎる」医師も多く、相談しても、こちらの気持ちが伝わっているようには感じられないこともあります。これらは、すべて医師の責任というよりも、日本の制度の問題なので、短期的な改善は見込めません。だからこそ、企業に期待したいのは、会社の産業医などに、介護者が医療の相談できる制度の構築です。気軽にセカンドオピニオンがもらえる状態があれば、介護者としては、不安がすこし少なくなります。

3. 対人葛藤

介護がはじまると、家族の中でも、介護の負担をどう分散するか(金銭的、肉体的、時間的)でもめます。要介護者との関係、夫婦関係も危機になります。さらに、新たに介護のプロとの人間関係構築もあったりして、人間関係に疲れることが多くなります。親に、それなりの遺産があり、かつ、兄弟姉妹が多くいる場合は、大変なことになるのも普通です。せめて、企業には、従業員に対してエコマップの書き方と使いかたを教えてもらいたいです。また、専業主婦がいたとしても、そこに介護を押し付けると、介護を理由とした離婚に至るリスクが増します。家族内のことに企業が首を突っ込むことはできませんが、せめて、そうした介護をめぐる人的リスクについての教育は実施してもらいたいです。

4. 不安

介護者には、漠然とした不安がつきまといます。これが原因で、仕事に集中できなくなる人もいます。現在、ギリギリの状態で回っている介護も、介護保険制度の変更などで介護サービスが受けられなくなったりするだけで崩壊します。介護は、いつまで続くのか、また、要介護者の状態が悪化したらどうなるのかといった、先行き不安も大きいです。自分自身も老いてきており、自分が病気になったら、誰が介護をするのだろうといったことも不安です。企業としては、介護予防や介護制度の内容などを、従業員教育の中に入れることで、介護者に対して、せめて知識だけでもつけることをお願いしたいです。

5. 限界感

介護者としては、できるだけ周囲に迷惑をかけないようにしたいと思ってのことでも、一人で頑張りすぎてしまうケースも多くあります。また、現実の介護は、理想的な親子関係や、理想的な親の老後とは大きくかけ離れるのが普通です。そうした理想と現実のギャップに苦しむのも普通です。要介護者の親が、介護者のいうことを聞いてくれず、介護の負担が大きくなることもあります。こうしたギリギリの状態が続くと、虐待や介護殺人となってしまいます。企業には、従業員の精神状態がどうなっているのかをモニタリングしながら、限界が近いと感じられたら、家族会の紹介や、介護サービスの紹介ができるような窓口の設置を検討してもらいたいです。

6. 拘束感

介護のために人生の時間が巻きとられてしまい、自分の自由になる時間がほとんどない介護者もいます。在宅介護とは、24時間365日の対応がもとめられることです。仕事をしながら介護をするということは、日中の仕事が終わってからも、次の日の朝まで別の仕事をこなすようなものです。この辛さは、経験をした人でないとなかなか理解できません。デイサービスなどを利用していても、帰宅時間は午後3〜4時というケースも多く、仕事も途中で切り上げるようなイメージになります。企業は、介護者に対して、レスパイトの重要性を理解させ、また、レスパイトとなるような介護サービスの情報を提供していくべきです。

7. 自己嫌悪

介護者は「自分の介護は、全然ダメなものだ」と思いがちです。特に、メディアなどで取り上げられる「美しい介護の事例」などを見ると、自己嫌悪になります。また、介護のプロに来てもらっていると、介護のプロの鮮やかな介護技術に対して、自分のモタモタした介護が情けなく感じられたりもします。世の中には、理想的な介護などなく、適当に手を抜くことも大事なのですが、それを知る機会もありません。企業には、介護者が自己嫌悪になるほど思いつめていないかをモニタリングしながら、企業内に「介護者の会」などを設置し、他の人も、そんなに理想的な介護などできていないことを理解させる場づくりが求められます。

※参考文献
・松村香, 『介護者の抑うつ状態や介護負担感と『介護に関する困ったことや要望』に関する自由記述との関連』, 日本健康医学会雑誌 23(2), 125-135, 2014-07-31

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