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介護休業が変わることの「大きすぎる問題」について(ニュースを考える)

小規模事業者

介護休業制度が変わります

これまでの国の介護休業制度は、家族に介護が必要になった場合につき1回、最長で93日まで、休みを取得することができるという制度でした。しかし、実際にこの介護休業を活用しているのは、2012年の調査では、介護をしているビジネスパーソン(239万9000人)のうち3.2%にすぎません。

この理由は、そもそも、こうした国の制度が存在することが知られていないことと、仕事と介護を両立するための制度としては、現実に即していないというあたりにあったようです。

そこで、厚生労働省は、家族に介護が必要になった場合につき、最長93日まで、3回に分割して休暇が取れるように変更することにしたようです。また、懸案となっていた残業の免除についても、制度化されることになりました。今の2017年からの適用になります。

仕事と介護の両立に有利な変更は嬉しいけれど

仕事をしながら介護をするビジネスパーソンにとって、介護休業の分割取得は嬉しいです。また、残業の免除についても制度化されるのは、ありがたいです。ただ、どうしても気になることがあります。

それは、こうした制度は、被雇用者(会社に雇用されている人)にとっては有利なのですが、雇用主(経営者)にとっては、経営の難易度が上がることを意味しているという部分です。

大企業であれば、こうした制度にも対応することができるでしょう。しかし、中小企業にとっては、頭の痛い問題です。たとえば、従業員が1人しかいないような会社(社長1人と従業員1人)で、その従業員が介護休業と残業免除をフル活用した場合、会社は成立するでしょうか。

小規模事業者の破綻は確実に増える

日本において、小規模事業者(製造業20名以下、サービス業5名以下)で働いている人の数は、約900万人もいます。日本人のおよそ4人に1人は、小規模事業者で働いているのです。そして、こうした小規模事業者こそが、地域の雇用と経済を支えています。

今回のような法改正は、従業員にとっては良いことです。しかし、この法改正は、ただでさえ減少傾向にある小規模事業者の経営を圧迫します。結果として、小規模事業者は破綻し、地域から雇用がなくなり、経済をダメにしてしまいます。

小規模事業者は、手もちのお金が少なく、銀行などからの借り入れも多い傾向にあります。このため、少し売上げが悪化するだけで、破綻してしまうのです。売上げに直結する仕事をしている従業員が1人欠けるだけで、簡単に倒産することもあるわけです。

そんな小さな事業者など、いなくなっても構わないと考えるのは間違いです。なぜなら、実は、規模が小さい企業ほど「市場において全く新しい製品(イノベーション)」を生み出す割合が高いことがわかっているからです。将来の日本を牽引する企業は、小規模事業者からこそ生まれるのです。

国の責任が企業に押し付けられている

制度によって、企業の経営を制限するということは、本来は国で考えるべき社会福祉を、企業に強いるということでもあります。本当は、介護サービスを無料化したり、介護施設を充実させて、介護をしていても残業できたり、会社を休む必要性が少なくなるような施策が期待されているわけです。

言うまでもなく、仕事と介護の両立を支援することは重要です。制限がなければ、行きすぎた経営も生まれます。ただ、それが、小規模事業者の破綻に直結してしまうという想像力も大事だと思います。社会福祉の充実は急務ですが、同時に、小規模事業者を守ってもらいたいです。

雇用というのは、天然資源ではなく、起業家が個人的なリスクを取って生み出したものです。しかし、国で担うべき福祉が、こうした起業家のリスクを上昇させるとするなら、日本では起業が減り、将来の国力を減少させることにもなります。

最後に。社会福祉の負担を企業に押し付けた結果として、介護事業者の破綻がさらに増えてしまわないことを祈ります。それこそ、少なからぬ介護事業者は、小規模事業者です。介護休業を取得したビジネスパーソンが、介護サービスをお願いする先がないなんていうことになりませんように・・・。

※参考文献
・中小企業庁, 『小規模事業者の現状と課題について』, 平成25年9月
 

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