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介護離職による経済損失は約6,500億円(経産省)

介護離職による経済損失は約6,500億円(経産省)

非常に意義深い調査結果が提出された

介護離職は、企業にとって大きな損失になることは、これまで、誰もが理解していることでした。まず、その人が介護離職しなければ得られたであろう利益、そして、その人に代わる人を採用し教育するためのコストは、相当なものになるはずです。さらに、政府としては、介護離職がなければ得られたであろう税収も重要です。

しかし、具体的にこれらが、どれくらいの金額になるのかということは、よくわかっていませんでした。この金額を、経済産業省が試算し、約6,500億円と発表したのです。以下、yomiDr.の記事(2018年10月15日)より、一部引用します。

家族の介護や看護を理由に仕事を辞める介護離職について、経済的な損失が年約6500億円に上るとの試算を経済産業省がまとめた。年間約10万人にのぼる介護離職は、収入源を失って離職者の生活が脅かされるだけでなく、企業などの経済活動への影響も深刻なことが明らかになった。(中略)

政府は「介護離職ゼロ」を掲げて特別養護老人ホームなどの受け皿整備を急ぐが、試算で明らかになった経済損失額は、厚生労働省が今年度予算に盛り込んだ受け皿整備費(483億円)の約13倍に相当する。(後略)

試算の内訳について考察してみる

6,500億円という試算は、介護離職者数を10万人とし、それにより失われる所得を2,700億円(所得の平均は270万円)にしています。この差額が企業が失う利益(社会保険料込み)で、差し引き3,800億円(1人あたり380万円)ということになります。

仮に、介護離職した人の後任が得られないとすれば、年380万円の利益が失われていくという計算です。この利益からは、社会保険料や税金が徴収されるわけで、政府としても、この財源が失われることは、大きな損失となります。

そうして介護離職した人材が、すぐに、別の企業に転職し、そこで同程度の利益を出してくれれば、問題はないかもしれません。しかし一般に、介護離職者はなかなか次の仕事がみつからないし、見つかっても年収は約半分になるというデータも存在しています。

仕事と介護の両立はできない?

データとしては、仕事と介護の両立はできないと考えているビジネスパーソンは約6割にもなります。今後、40〜50代の5人に1人程度が介護をすることになると考えると、だいたい、40〜50代のビジネスパーソンにおける10人に1人は介護離職する可能性があるということになります。

日本の平均年齢は47歳程度と、すでに世界最高です。40〜50代の社員が、全社員の過半数を超えている企業も多数になります。そう考えると、今はまだ10万人程度の介護離職者は、今後、どんどん増えていく可能性があります。その1人あたり、少なくとも380万円程度の損失が、企業の業績として跳ね返ってくるわけです。

では、厚生労働省が進めている受け皿としての特別養護老人ホームが間に合うのかというと、まず、無理です。実は、特別養護老人ホームには、空き部屋が2万人分あると言われます。しかし、そこで働いてくれる介護職員が人手不足でいないため、稼働できないのです。

東京オリンピックの予算は当初の7,000億円から3兆円に膨れ上がったが・・・

そもそも特別養護老人ホームが良いのかという話もありますが、とにかく、ここの整備は、間に合いません。そうなると、ほとんどの人が、親を在宅で介護することになります。その対応が、フルタイムでの仕事をこなしながらできるのか・・・というところが、今後の争点になっていくことは確実でしょう。

そうした逼迫している中、莫大な予算が使われるのが東京オリンピックです。当初7,000億円と言われていた予算は、いまや3兆円にも膨らんでいます。それでも、多数のボランティアを組織しないと開催できないという状況です。なお、3兆円という金額は、介護離職を防止する受け皿予算(483億円)の62倍です。

ランニングコストもありますから、一概には言えないものの、この3兆円のうち、1兆円でもあれば、受け皿の整備はもっとスムーズに進んだでしょう。しかし日本は、オリンピックを選びました。オリンピックを横目でみながら、介護離職を決めてしまうビジネスパーソンが多数出てくることを思うと、なんともやりきれない思いがしてきます。

※参考文献
・yomiDr., 『介護離職で経済損失6500億円、受け皿整備費の13倍…経産省試算』, 2018年10月15日

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