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ソフトバンク、遠距離介護や遠距離通勤を支援

ソフトバンク、遠距離介護や遠距離通勤を支援

仕事と介護の両立に悩む労働者は増えていく

2025年問題を前に、仕事と介護の両立に悩む労働者が増えてきています。昔の介護とは異なり(1)専業主婦がいない(2)兄弟姉妹が少ない(3)未婚者も多い、といった背景もあり、仕事をしながら、日々の介護も行うことが強いられる労働者が増えているからです。

これを受けて、経団連が、労働者の仕事と介護の両立に対して本気で取り組むことを発表したりしています。この背後にあるのは、少子高齢化の影響から、人材採用が困難になってきており、介護離職者を減らせないと大変なことになるという認識です。

とはいえ、経団連として同じ対策をするわけではありません。企業各社は、それぞれに独自の支援策を打ち立てる必要があります。そうした中、経団連に加盟しているソフトバンクが、遠距離介護や、介護のための遠距離通勤にかかる費用を全額支給するという支援を発表しました。以下、日本経済新聞の記事(2018年10月1日)より、一部引用します。

ソフトバンクは1日、育児や介護をしながら働く従業員の支援策を強化する。(中略)介護をしながら働く社員向けでは、新幹線などの特急列車を使った通勤を認め、交通費を全額支給する。常時介護が必要な家族と同居したり、近くに住んだりするために勤務先まで遠方から通わなければならない場合も、離職せずに働けるようにする。

本当に有効な支援の形は、まだわかっていない

介護というのは、育児とは異なり、前提知識がないまま、急に始まるという特徴があります。育児であれば、かつて自分が育てられた経験から、それなりにイメージを持ってスタートさせることが可能でしょう。しかし介護の場合、親も自分も、はじめての経験であり、そのスタートは、かなりバタバタします。

少なからぬケースでは、バタバタしたまま、数年から10数年という期間を経て、介護は終わります。そうして終わった介護を振り返り、もっと上手にやれたと後悔する人も多いのです。しかし後悔先に立たずと言う通り、介護でバタバタしている最中は、どうしても介護についての理解が深まらないので、これも仕方のないことです。

かつてヘンリーフォードは「私が顧客に望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えただろう」という言葉を残しています。これと同じように、介護でバタバタしている人は、自分に本当に必要な支援について、語ることができない可能性も高いのです。

そうした背景から、まだ、有効な支援策というのは、はっきりとはわかっていないのです。ですからおそらく、今回のソフトバンクの支援も、大変な暗中模索によって生み出されたものだと思います。今後、こうした支援が、どれくらい効果があるのかという効果検証もなされることと思います。

エスノグラフィー(行動観察調査)が必要ではないか

もちろん、介護に苦しんでいる人々から、支援ニーズを聞き出すという活動も重要です。ただ、圧倒的に足りていないと感じるのは、介護に苦しんでいる人々の観察であり、専門的にはエスノグラフィー(行動観察調査)です。車を知らない、馬に乗っている人のニーズを知るためには、アンケートではなく、エスノグラフィーが必要なのです。

たとえば、仕事と介護の両立に苦しんでいる労働者は、まず、プライベートの時間が削られるのが普通です。睡眠時間も短くなります。そうなると、そもそも休息が足りないので、どうしても仕事のパフォーマンスが下がります。そうして仕事で低い査定を受けたりすれば、介護離職を決意してしまうこともあるでしょう。

ただ、実際に介護離職の危機にまで至ったことのない人の場合、本当にそうなるまで、自分に必要な支援というのは見えないのではないかと思います。見えないからこそ、正しい支援を要求することもできず、最悪の状態にまで進んでしまうというケースも多いのではないでしょうか。

経団連の介護支援にインパクトがあるのは、聞き取り調査だけでなく、こうしたエスノグラフィーを進めることだと思います。ここで企業の競争優位性をつくらずに、企業が協力して、知恵を共有していくことが大事でしょう。そうでないと、日本が沈んでしまうからです。

今回のソフトバンクのような取り組みは、非常に評価できるものです。だからこそその結果は、エスノグラフィーを用いて科学的に分析され、広く公開されていくことを希望します。介護に関する知識は、できるだけ日本全体で高めていきたいものですね。

※参考文献
・日本経済新聞, 『ソフトバンク、子ども3歳まで育児休暇 介護中は新幹線通勤OK』, 2018年10月1日

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