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【人事部向け】介護離職の防止に向けた厚生労働省の資料

【人事部向け】介護離職の防止に向けた厚生労働省の資料

介護離職の爆発前夜にある

現代は、2025年以降に発生する介護離職の爆発前夜にあります。まだ、それほどの数が出ていないとはいえ、介護離職は、人事部から見た場合、人材の優劣に関わらず発生するという特徴があります。普通は辞めない、部長クラス以上の人材に介護離職が起こり始めており、人事部は、早急なる対策が必要です。

機運の高まりはありますが、意外と、経営層が介護離職のリスクを把握していないこともあり、人事部は大変だと思います。しかし、2025年まであと7年という期間内で、仕事をしながら問題なく介護ができる環境を整えないと、大変なことになってしまいます。人事部としては、緊急性のたかい案件なのです。

大変なのですが、ここでしっかりと介護離職の対策が打ち出せたら、競合優位性につながります。競合にもまた、介護離職が発生するからです。これは、どれだけ社内の人材を介護離職させないかという、人事部の力が試される場面でもあります。プロジェクトを立ち上げ、結果を出していきたいものです。

厚労省の『相談窓口担当者用チェックリスト』

そうした中、人事部向けに、素案(参考様式)ではあるものの、厚生労働省が『相談窓口担当者用チェックリスト』(PDF)を出してくれています。これだけで、介護離職がなくなるとは思えませんが、最低限、ここまでは整えておかないと、競合に負けてしまう可能性が高くなるでしょう。以下、このチェックリストの使い方について、簡単に意見を述べます。

1. 「相談窓口」での両立課題の供給

何事もまずは現状把握からです。人事部としては、これまでも、従業員がどういう状況にあるのか、仕事内容については把握してきたでしょう。これが、介護に関する状況にまで拡張されると考えてください。職場アンケートなどがこれに相当すると思われますが、アンケートだけではどうにもならないのは、仕事内容の把握と同じことです。厚労省の資料では、すでに介護がはじまっている従業員への対応に限られていますが、当然、近未来において介護がはじまりそうな従業員についても把握して対応を考えることが求められるでしょう。なお、20代の若手であっても、祖父母の介護をしているケースも増えており、油断できません。

2. 企業の「仕事と介護の両立支援制度」の手続き等の周知

当たり前ですが、社内で構築した制度は、使ってもらえてはじめて意味のあるものになります。作っておしまいの制度では(意外とたくさんありますが)意味がありません。ここで重要になるのが「いまの両立支援制度は完成版ではなく、皆様と一緒に作っていきたい」という意思を表明することです。「うちには○○制度がないから離職するしかない」と考えられてしまえば、本当にもったいないことになるからです。また、どういう制度が求められるのかは、仕事と介護の両立に苦しむ従業員だからこそ思いつくものでもあります。

3. 働き方の調整

ここが本丸になるでしょう。上流工程と下流工程があって、そうした工程の中で仕事をしている従業員が急に休んだりすると、仕事に大きな影響が出てしまいます。本質的には、社内からこうした仕事を減らし、いつでもどこでも空いている時間で成果が出せる仕事を増やしていけないと、介護離職は止められません。究極的にはリモートワーク化を進めないとなりませんが、リモートワークには成功事例が少なく、難易度が高いと認識してください。いきなりリモートワークを導入すれば、会社の業績に大きなダメージとなって跳ね返ってきます。ロードマップを作成し、段階的な働き方の移行が、どうしても必要になります。

4. 職場内の理解の醸成

注意したいのは、年齢が上の世代は、兄弟姉妹が多く、専業主婦もいたため、仕事と介護の両立に(それほど)苦労していないという事実です。このため、高齢の経営者は、仕事と介護の両立を簡単に考える傾向もあります。しかし、時代は大きく変わっています。現代の介護は、兄弟姉妹や専業主婦への丸投げは期待できず、男性であっても主たる介護者としてどっぷり入り込む必要性の高いものになっています。職場内の理解の醸成とは「介護は大変だよね」といった空気をつくることではなく「誰もが介護にどっぷり入る時代」という認識の共有だと考える必要があるでしょう。

5. 上司や人事による継続的な心身の状態の確認

仕事と介護の両立に悩む従業員は、メンタルはもちろん、睡眠不足などから様々な問題を起こしやすいと考えてください。介護は、子育てとは異なり、子供の成長を楽しめるといったポジティブな側面が(ほとんど)ありません。いつ終わるともしれない長く暗いトンネルに光をもたらす存在として、人事部は、従業員に寄り添っていかなければなりません。具体的に寄り添うとはどういうことなのか、しっかりと事例に学び、それらをリスト管理し、優先順位付けを行いながらPDCAを回すという「当たり前の仕事」をこなしていく必要があります。

6. 社内外のネットワークづくり

孤立すると大変なことになるのが介護です。周囲から多くの助けを借りながらでないと、仕事と介護の両立は実現できません。仕事でも、社内外における多数のキーマンとつながるのが成果を出す鍵になるでしょう。その意味では、介護もまた、仕事と同じです。介護のプロ(介護職)の名刺を持っていない従業員が、仕事と介護の両立などできるはずもありません。介護を支え合う仲間となる人の名刺を何枚持っているかというのは、ある意味で、KPIでもあります。人事部は、これを助けていかなければならないでしょう。

※参考文献
・厚生労働省, 『相談窓口担当者用チェックリスト』

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