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人事部は支援ニーズの調査段階で戸惑っている

人事部は支援ニーズの調査段階で戸惑っている

介護離職の防止が人事部の重要ミッションに

介護を理由とした離職、すなわち介護離職は、年間で10万人以上にもなっています。そして、今後はさらに介護離職が増えると回答した企業は71.3%にもなります。背景には、介護をする側に(背景1)兄弟姉妹が少ない(背景2)専業主婦がいない(背景3)未婚者が多い、ということがあります。

企業としては、そうして介護離職をされてしまうと、不足した人材を補うための採用コストと教育コストがかかります。そして、人口減少社会に突入している日本では、そもそも新たに採用できる人材の数が減っているため、採用コストが高まってきているのです。

企業の人事部に対して、経営層からは介護離職を防止するようにとの指示が出されはじめています。そして人事部は、介護離職の防止に関する勉強に熱心です。様々なセミナーにも参加していますし、自主的な勉強会もあるようです。

教科書に書かれている介護離職の防止戦略

教科書に書かれている介護離職の防止戦略は(step1)従業員の支援ニーズの把握(step2)制度設計・見直し(step3)介護に直面する前の従業員への支援(step4)介護に直面した従業員への支援(step5)制度の利用状況の確認、というものです。これと同時に、働き方改革プロジェクトを走らせるというのが一般的です。

そうして、介護離職の防止戦略を推進しようとしている人事部には、かなりの戸惑いが見られます。それは、この介護離職の防止戦略の一番始めにある(1)従業員の支援ニーズの把握というところです。始めのところでつまづいてしまっており、はっきり言って、うまくいっていません。

結果として、介護に関する一般的な知識を届ける研修の実施と、そうした研修を受けたにも関わらず介護離職していく従業員という、なんとも虚しい構図が生まれてしまっているのです。最近では、介護離職の防止を推進するはずの人事部の人が介護離職をするというケースさえ聞きます。

どうして支援ニーズの把握は難しいのか

では、どうして従業員の支援ニーズの把握がうまくいっていないのでしょう。その理由は簡単で、仕事と介護の両立に苦しむ従業員自身が、どうすれば介護の負担を下げられるのかについて、自分でもわからないからです。従業員は介護の専門家ではないので、もとからこれは無理な注文なのです。

もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。

ヘンリーフォード(フォード自動車の創業者)

そのため、苦労をして従業員の支援ニーズを調査しても、結果として出てくるのは「もっと多くのお金を、もっと短時間で稼ぎたい」という要求です。介護にはお金と時間がかかるからです。しかし企業側からすれば、これは無茶な要求です。そうして、人事部は途方に暮れてしまうわけです。

結局のところ、介護離職の防止に求められているのは(要求1)介護にかかるお金と時間を減らす具体的な方法のアドバイス(要求2)急な休みをとっても評価・昇進に影響のない仕事内容(要求3)オフィスに出社しなくても仕事ができる職場環境、です。

本当は、支援ニーズは調査するまでもなく明確なのです。しかし、こうした支援ニーズは、人事部の権限だけで充足することはできないというのが問題の根本的なところです。この背景があって、人事部は、自分たちの権限でも解決できる支援ニーズはないかを探るために、虚しい調査を繰り返しています。

企業が本当に整備すべき制度とは?

企業が本当に整備すべき制度とは(制度1)仕事と介護の両立に強い優れた専門家へのアクセス支援(制度2)できる限り個人で完結する高付加価値な仕事の創出支援(制度3)本当に機能するリモートワークの推進支援、ということになります。

どれも、相当に難易度の高い仕事であり、過去の人事部が(ほとんど)成功させた経験のないものです。ただ、リモートワークが進むと、オフィスの地代家賃をかなり低減させることが可能になります。ここを財源として、介護に苦しむ従業員のための支援体制を整えることが現実的な戦略になるでしょう。

逆に、リモートワークがしっかりと整備されている企業は、今後、採用コストを下げることが可能になるはずです。現実としてリモートワークの実現は難しいものですが、介護離職の問題を超えて、ここに成功することは、多くの企業にとって今後の死活問題になっていくことは間違いありません。

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