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介護関係者の介護離職を、エピソードから考える

介護関係者の介護離職を、エピソードから考える

介護離職防止の最前線

介護と仕事の両立が困難になり、やむなく仕事を辞めることを介護離職と言います。私たち介護の仕事に携わる者は、そうした親の介護と仕事の両立に悩む多くの家族介護者と出会ってきました。

私たちのような介護サービスを使いながら、仕事をうまく両立させている人、私たち介護サービスにほとんど丸投げされている人、私たちが積極的な介入を試みなければいけないほど抱え込んで、自らを追い詰めてしまっている人など様々です。

私たちの仕事は、いわば介護離職防止の最前線の仕事と言えます。ところが、私たちのような介護職、ケアマネジャーという、皆さんの介護離職を瀬戸際で止める役割の介護関係者自身も、少なからず介護離職をしているのです。

当然のことながら、他業種に比べれば、自他共に介護生活の厳しさや介護と仕事の両立に対する理解は深い業種のはずです。それにも関わらず、職場を去る業界関係者がいます。その背景はなんなのか、いくつかのエピソードを見て行きたいと思います。

エピソード1:あるベテラン介護職の場合

Aさん(女性)は介護の仕事に10年近く携わってる、50代後半のベテランで正社員の介護福祉士でした。職場での人望も厚く、ご自分と同じ年代の介護家族の方々のお話も共感的に聞ける立場だったので、彼女によって救われたという介護家族は少なくありませんでした。

そんなAさんには、地方に一人暮らしのお父様がいました。お父様は、軽度認知症でした。お父様の近くには兄夫婦が住んでおり、兄嫁が主たる介護者として、お父様の介護をしていました。Aさんは2ヶ月に1回、5日間ほど休みを取って、実家に帰ってお父様の介護に関わっていました。

その生活が1年半ほど過ぎた頃、Aさんから「仕事としての介護と自分の親の介護は全然違いますね」「わかっているからこそ、つい知っていることを口出ししちゃうんですが、それが兄夫婦をイラつかせてしまうんですよね」「遠くに住んでいる私が何を言っても、近くに住んでいる兄夫婦の大変さはわからないんですよね」といった言葉が出てきたのです。

介護職であっても、近くの親戚に遠慮しながらの遠距離介護のストレスや課題は一般の方と大差はありません。そして、ある日Aさんは「夫と兄夫婦とも話し合って、しばらく実家に帰って父の介護をしたいと思います」と離職の願いを出してきたのでした。

エピソード2:あるケアマネージャーの場合

Bさんは、正社員のケアマネジャーとして、独居で認知症のお母様の介護をしていました。2人の住まいは別でしたが、隣市ということもあり、Bさんは仕事帰りにお母様の家に寄ってそのまま泊まることも頻繁で、結局半同居という状態でした。

いつも、私たちと面接をすると「本当に母がお世話になってありがたいです。職場も理解があって、色々と融通を利かせてくれるんでなんとか介護生活ができています」と笑顔でおっしゃっていました。しかし、ある時「やっぱり一旦仕事を辞めようと思って職場にも話してきました。

母の介護に専念したいんです」と離職を決意されました。背景を伺っていると、半同居状態の実情に対して、Bさんの夫や子供達から「どうしてそんなにまでしておばあちゃんの面倒をみるの?お母さんの自己満足で自分を追い込んで疲れているんなら、もっと楽に考えればいいじゃない」ということを頻繁に言われていたそうです。

つまり、一生懸命親の介護をやっているBさんの苦労に対して、Bさんは家族から、頑張りすぎて自分が潰れたら意味がない、という一見的を得たようなことを言われていたのです。最終的に離職をした後、しばらくはお母様の介護に専念したBさんでしたが、半年後には有料老人ホームへの入居をBさんが決めたのでした。

家族の理解や家族との関係性がカギになる

介護関係者であっても、介護離職をします。もちろん、親の介護をしながら、仕事を続けている介護関係者はたくさんいます。ですから、一概には言えませんが、Aさん、Bさんのエピソードから見えてくるの介護離職の要因の一つは「主たる介護者である人を支える他の家族の理解、関係性」なのだということです。

Aさんは遠距離で兄夫婦に介護を任せている、という罪悪感がありました。お父様のことを思っているからこそ、できない自分の立場に贖罪の念を感じていたようです。加えて、離れているからこそ見えてくる兄夫婦の介護に対する客観的視点から「自分ならもっとうまくやれるのに」というジレンマが出てきたと言えます。

Bさんはご自身の家族である、夫や子供の無理解が大きな要因だと言えます。夫や子供の思いとしては、単にBさんがクタクタに疲れて、仕事も介護も担っている姿を見て「無理しないで」というメッセージを伝えたかったのかもしれません。それはそれで理解できます。

しかし、Bさんに必要だったのは、家族から頑張りを認めてもらい、家事の一部などを支援してもらうことだったとも考えられます。こうした認識の相違は、Bさんを孤独にしてしまいます。「私こんなにどっちも一生懸命やっているのに、なんで誰もわかってくれないんだろう。バカみたい」という想いです。

いくら私たちがBさんの想いを受け止めたとしても、最愛の支えである家族からの孤立を感じてしまったら、ケアマネジャーといえども折れてしまうということでしょう。介護関係者であっても、介護離職をします。その要因は、実は一般の方々と変わらないものでもあるということです。

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