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育児と介護に理解を示す「ファミボス」の時代へ(鳥取県によるイニシアチブ)

育児と介護に理解を示す「ファミボス」の時代へ(鳥取県によるイニシアチブ)

鳥取県によるイニシアチブ

企業側としては、やれたとしても、自社の介護支援制度を拡充しつつ、その説明をするまでしかできません。自治体の介護サービスや家族会の紹介などは、企業としては、なかなか手がまわらないのが現実でしょう。

こうした中、鳥取県がいち早く「ファミボス」という言葉をつくり、対策に乗り出しはじめています。育児を応援する上司である「イクボス」という言葉は、日本で広く認知されてきています。しかし、育児だけでなく介護も応援する上司の言葉は、まだこれというものがありませんでした。

そこで鳥取県は、育児も介護も家族のことである点に注目し「ファミボス」という言葉を作ったのです。教育面(ファミボス育成塾の開講など)での支援のみならず、奨励金制度なども充実させはじめているようです。以下、読売新聞(鳥取版)の記事(2017年9月14日)より、一部引用します。

県は、介護が必要な家族を持つ従業員の働き方に配慮する上司「ファミボス」の養成に力を入れることを決めた。県内では、介護を理由に仕事を辞める「介護離職」の割合が全国平均を上回っており、仕事と介護の両立は喫緊の課題だ。(中略)

同社では、2015年以降、男性を含め4人が介護を理由に退社した。会社は、男性の雇用を延長し、技術指導役としての活躍を期待していたといい、総務担当者は「重要な戦力で、引き留めたかったが、本人の人生を尊重した。親の介護が必要だったとは知らなかった」と漏らす。(中略)

総務省の「就業構造基本調査」(2012年)によると、県内で11年10月からの1年間に介護や看護を理由に退職した人は700人。退職者全体の2・76%を占め、全国平均(1・68%)を上回っている。(後略)

必要は発明の母であるという点に注目したい

「必要は発明の母(necessity is the mother of invention)」と言います。「ファミボス」という活動をはじめた鳥取県でも「全国平均を上回ってしまっている介護離職をなんとかしたい」という必要性があればこそ、こうしたイニシアチブが発生しているのでしょう。

逆に言うなら、問題が顕在化しておらず、必要性が不明確だと、イニシアチブが効果を持たないということです。もちろん、イニシアチブがあれば問題が解決するわけではありません。しかし、とにかく、問題が「自分たちの問題」として認識されないままでは、それが解決されることもないのです。

特に自治体から、横並びの意識を払拭するのは難しいでしょう。であれば逆に、今回の鳥取県のように、全国平均よりも悪い状態にあるという部分を問題として掘り起こしたほうが、自治体としても動きやすいはずです。日本人の場合は「恥ずかしい」という気持ちを刺激したほうが、効果的なのかもしれません。

「ファミボス」という言葉を広げよう!

「イクボス」という言葉は、介護に関わる人からすれば、足りない言葉です。逆に「ケアボス」という言葉は、育児に関わる人からすれば、これまた足りていません。「ファミボス」という言葉が優れているのは、広がってきている「イクボス」という言葉が、介護関係者の中に生じさせてしまう疎外感を払拭するという部分です。

誰かの上司である限り、部下の人生に大きな責任を追っています。そして部下の人生は、仕事だけで構成されているわけではありません。また、部下の仕事ぶり(モチベーション)には、部下の家族との関係性が強く影響することはわかっていることです。

「ファミボス」が広がれば、企業研修市場における介護研修のニーズが高まります。そうなれば、赤字と悪い待遇に苦しむ介護業界にとっても良い話です。介護に関する理解が深まれば、介護保険の無駄遣いも減らせるでしょう。

育児と介護は相当違うものではあります。しかし、家族のために変則的な労働が求められるという点では、育児と介護は同じです。日本中の上司は、今後、変則的な労働が求められる部下との付き合い方に習熟していく必要があります。そして、必要は発明の母なのです。

※参考文献
・読売新聞(鳥取版), 『部下の介護離職防ぐ』, 2017年9月14日

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