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政治家の介護離職、どう思いますか?メディアの報道姿勢について

政治家の介護離職、どう思いますか?

政治家の介護離職問題

75歳以上の高齢者は、4人に1人が要介護者になります。75歳以上の高齢者を親に持つ子供の多くは、50代でしょう。実際に、親の介護がはじまるのは、50代が最も多くなっています。そして、日本の政治家の平均年齢は、だいたい、50代なのです(55歳前後)。

政治家として仕事をする場合、仕事と介護の両立が求められる可能性が高いということです。そして現政権は、骨太の方針の一つとして介護離職ゼロを掲げています。政治家は、自らもまた介護離職をしないように務めることで、国民に道を示すべき存在になっています。

そんな中、地方議員の介護離職のニュースが入ってきました。このケースは、辞職する議員もまた高齢者であり、老老介護になりますが、なんとも複雑な気分になります。以下、岩手日報の記事(2017年6月30日)より、一部引用します。

県議会奥州選挙区(定数5)選出で、いわて県民クラブ所属の渡辺幸貫県議(70)は29日、盛岡市の県議会棟で記者会見し、開会中の6月定例会を最後に辞職する意向を表明した。

渡辺氏は「家内が認知症になり、これからの人生は介護をしていこうと決意した」と述べ、任期を2年余り残しての辞職について「個人的な理由で申し訳ない」と謝罪した。

6月定例会の最終日となる7月7日までに辞職願を田村誠議長に提出する。後援会の幹部には数日前に伝え慰留されたが「私がいなければ介護は難しい。早めに寄り添うことが大切だ」と語った。(後略)

介護は個別の問題であるとはいえ・・・

もちろん、介護には様々な形があり、一般に通用するような「あるべき姿」を提示するのは困難です。ただ、政治家は一般人以上に影響力があり、その一挙手一投足が世間から注目される公人です。そうした公人の介護離職が美談になってしまうと、介護離職ゼロもまた空論になるでしょう。

一番恐ろしいのは「愛する人のために仕事を投げ打って介護に専念する」ということが、世間から好意的に受け取られることです。そうなれば、仕事と介護の両立に奮闘する人々の中に「後ろめたさ」が生じてしまいます。また、そうした人々は、周囲からの声にならない批判にさらされることにもなってしまうでしょう。

今回の岩手県議会議員の場合、もちろん、個別の事情があるのは当然です。そうした事情を理解しないまま、いきなり、この議員を個別に批判したりするのは間違っています。強調しておきたいのは、KAIGO LAB としては、この議員について個別の意見を言いたいわけではないということです。気になっているのは、メディアの姿勢です。

メディアは、ただ事実を報道しているわけではない

メディアは、ただ事実を報道しているのではありません。たしかに(多くの場合)事実を報道していますが「どの事実が報道するに値するのか」を決めているのはメディアの中の人です。実はむしろ「報道されなかった事実」の中にこそ、メディアの意思が現れます。

今回のケースで言えば、議員辞職の原因が介護であることにフォーカスが当たりすぎているように思います。辞職する議員の「私がいなければ介護は難しい。早めに寄り添うことが大切だ」というコメントは、読み方によっては、介護離職を奨励しているようにも感じられます。

そもそも「私がいなければ介護は難しい」のは、自宅近隣に、介護保険で利用できる介護サービス(小規模多機能やグループホームなど)が少ないからという可能性もあります。また、この背景には、介護以外にも、ご自身の健康問題など、他にも理由があるかもしれません。

そうしたところまで掘り下げて報道することで「介護離職は、個人にとっては仕方のない場合もあるが、社会全体としては良いことではない」という社会的な合意の形成をしていくことが必要だと思います。メディアには、そうした責任もあるのではないでしょうか。

※参考文献
・岩手日報, 『奥州選挙区・渡辺県議が辞職へ 家族の介護に専念』, 2017年6月30日

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