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介護をする労働者の残業が免除に。来年1月より義務化(ニュースを考える)

介護をする労働者の残業が免除に

厚生労働省の大きな決断

すごい決断が、厚生労働省によってなされました。家族の介護をしている労働者の残業を免除するという制度を、企業に義務づけるというのです。しかも、来年1月から施行されるというスピード感です。それだけ、危機感が強いということなのでしょう。以下、読売新聞の記事(2016年8月11日)より引用します。

厚生労働省は、家族の介護をしている労働者の残業を免除する制度を、企業に義務づける方針を決めた。就業規則に明記することを求め、国の指導に従わない悪質なケースでは企業名を公表する。来年1月に施行される改正育児・介護休業法に基づく省令で実施する。安倍政権が掲げる「働き方改革」の一環で、「介護離職ゼロ」の実現を目指す。

制度を利用できるのは、同じ会社で週3日以上の勤務を1年以上続けている人。パートタイマーなど非正規労働者も含まれる。勤め先に申請すれば、介護対象の家族が亡くなったり、症状が回復して介護の必要がなくなったりするまで残業が免除される。申請できる期間は1か月~1年間だが、更新可能で期間も延長できる。介護される家族の状態は原則、食事や排せつに手助けが必要な「要介護2」以上。

予想される混乱についてのまとめ

まず、KAIGO LAB としては、厚生労働省の大きな決断を支持したいです。介護をする労働者の負担を少しでも軽減するという決意が伝わりますし、現実にこれで助かる人も多く出てくるでしょう。同時に、経営者にとっては厳しい決断でもあり、準備期間の短さと合わせて、今後、混乱も生じると思われます。

予想される混乱をまとめると(1)どうしても残業をともなう職種への対応(2)サービス残業の抑制コスト増加(3)残業代がなくなることによる労働者の賃金減少、の3つになります。他にもありえますが、まずは、この3点について考えてみます。

1. どうしても残業をともなう職種への対応

救急車で病院に運ばれたとき、外科医がいなければ、私たちは困ってしまいます。こうした救急医に代表されるように、仕事があれば、それをこなさないと社会的な損失となるような職種は意外と多くあります。そうした職種についている人が、家族の介護をしている場合は、残業の抑制という方向では、問題は解決しません。そうした人は、この職種から外せばよいという話は現実的ではないことも多いでしょう。そうなると、やはり、介護は社会で行うという介護保険制度の理念に立ち返り、社会的な対応が求められていくことになります。

2. サービス残業の抑制コスト増加

残業を禁止しても、現実に仕事の責任を果たすには残業が必要という場合も出てきます。そのとき、会社に迷惑はかけられないというロジックで、本当は残業をしていても、それを記録に残さないというサービス残業が生まれてしまうことがあります。これを許していたら、今回の決断のような介護をしている人の残業を減らすという方針が骨抜きになってしまいます。ですから、サービス残業がなされていないかどうか、社会的なチェック体制が強化されないとなりません。しかし、こうしたチェック体制の構築にはコストがかかります。ここが増加してしまうことは、ただでさえ足りない国の財源を痛めることになり、混乱を生むでしょう。

3. 残業代がなくなることによる労働者の賃金減少

労働者によっては、残業代まで含めた形で、生活の設計をしている人もいます。よいことではありませんが、現実には、よくあることです。そこで、残業が禁止となると、逆に困ってしまう労働者もいるはずです。結果として、これまでお願いできていた介護サービスが使えなくなり、負担が増えるようだと、本末転倒です。とはいえ、介護をしていても残業をしてもよいということにすれば、厚生労働省の方針も骨抜きになってしまいます。かといって、実際には行っていない残業代を給与に上乗せするような余裕のある企業などないでしょう。ここの混乱は、小さくないと思われます。

※参考文献
・読売新聞, 『介護者の残業を免除、来年1月から企業に義務化』, 2016年8月11日

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