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仕事と介護・育児を両立するための在宅勤務について(テレワーク成功のポイント)

在宅勤務について(テレワーク)

在宅勤務を進める上で注目すべき2つの問題

そもそも、介護や育児をしながら仕事をする労働者からすれば「毎日、決まった時間に通勤し、どこまでも残業をする従業員しか雇わない」という企業では働けません。

労働者の人口も減っていくのですから、今後はもっと柔軟に働ける環境を準備できる企業でなければ、採用が難しくなっていくことは目に見えています。より具体的には、在宅勤務(テレワーク)を正しく進められる企業でないと、生き残れない時代になっていきます。

ここで大きな問題になるのが(1)残業という概念がなくなることによる残業代が失われること(2)時間内に仕事が終わらないことにより生産性が低下すること、の2点です。

確かに、オフィスで顔を合わせないと、チームが形成されにくいという問題もありますが、結果として生産性が低下しなければ、チームワークがあるかどうかは、本質ではありません。

もっとも高い生産性を示す従業員とは?

働きながら育児をしている母親にとって、保育園のお迎えに遅れることはできません。ですから、彼女たちは「退社時間」を気にしながら、仕事のスケジュールを組んでいます。こうした母親が「退社1時間前」に示す「時間あたりの生産性」には、目を見張るものがあります。

この「退社1時間前の母親社員」の生産性に注目し、そこから新しい賃金体型の概念を提案する論文(田澤, 2015年)があります。この提案のポイントは「時間あたりの生産性を基準として、それを給与に反映させる」というものです。

このように高い生産性を示し、決められた時間(所定労働時間)内で効率よく働く従業員の「時給」は、本当は増えるべきです。なぜなら、残業代が発生しない分だけ、企業の利益も増えるからです。逆に、恒常的に残業をする従業員の「時給」は、残業代の分だけ利益が減るので、その分減らされるべきです。

つまり、生産性によって「時給」が変化するというのが本来の形なのです。しかし「時給」を正当に評価するには、生み出した財の評価(分子)と、実際に働いた時間(分母)を明らかにする必要があります。

「時給」をどう決めるのか?

世界中のどこにいても、細切れの時間であっても、どれだけの時間を労働にあてたのかを測定することは可能です。すでに、そうしたITツールは多数ありますし、無料のスケジューラーでも、労働の総時間(分母)を計算することは難しくありません。

問題となるのは、この労働によって生み出される財(分子)の評価です。これによって「時給」が決まるからです。ここに、しっかりとしたルールができたら、時短勤務でも賃金が高い従業員が生まれ、仕事と介護・育児の両立が本当の意味で可能になるでしょう。そもそも、これだけITが発達した時代に、決められた時間だけ会社にいれば「月給」が決まっていること自体がおかしいわけです。

しかし、労働によって生み出される財を正確に測るのは容易ではありません。ここについては、先の論文でも言及されていないので、以下は、KAIGO LAB 編集部の意見になります。

「給与原資」の決まり方にルールを設ければよい

まず、現代の管理会計では、部門別の収益はわかるのが普通です。そこから、その部署で働く人材の「平均で生産された財」はわかります。それに、会社(資本家)の取り分を掛け算すれば「給与原資」も計算できます。

これまで、日本の経営においては、この「給与原資」があまり重視されてきませんでした。しかし、赤字でもボーナスが出るような環境は、やはり、おかしいのです。

「給与原資」を固定してしまえば、労働の総時間は残業も含めてすぐに出ますから、その部署の「平均の時給」が決まります。事前に、各従業員の職位などに応じて「平均の時給」からの距離(重み付け係数)を決めておけば、それぞれの「時給」が決まります。

ここで注意してもらいたいのは、たくさん残業をする従業員(分母を大きくする従業員)が、他の同僚の「時給」を下げてしまうという事実です。ここから、残業をする従業員に対しては、同僚からのプレッシャーも生まれます。

とにかく、所定の労働時間までは、細切れの時間であっても、誰もが働けるようにすべきでしょう。しかし、そこから先の残業については、意味のないものは、同僚に批判されるようにもなります。

「時給」を上げるのは、所定の時間内で、生産効率を考えて働いて、部署の収益を高めていき「給与原資」を増やすという「あたりまえ」の活動です。また、短い労働時間でも、大きな成果を出す従業員は、みなの「時給」を高める存在になります。同僚からも評価され、当然、昇格していくと思われます。

以上は、KAIGO LAB 編集部の意見にすぎないものです。とはいえ、これからはどこの企業でも「時給の決まり方」が議論されていくことと思います。これなしで、在宅勤務は進められませんし、仕事と介護・育児の真の両立もありえないからです。

※参考文献
・田澤由利, 『テレワークにも対応した「時間あたりの生産性」を向上する賃金システ厶』, 日本テレワーク学会誌 13(2), 22-24, 2015年

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