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骨伝導は老人性難聴を解決するか?岩手銀行のケース

骨伝導システムの導入がはじまる?岩手銀行のケース

高齢者と難聴

高齢者になると、いわゆる「耳が遠くなった」という現象が起こりやすくなります。老人性難聴と呼ばれるもので、背景にあるのは、単純な老化ではありません。生活習慣や、薬物の副作用などの影響もあり、原因は様々なのです。

難聴は、残念ですが、薬ではほとんど回復しません。基本的には補聴器を使う必要があるのですが、補聴器の場合、必要のない音まで拾ってしまうため、雑音が大きくて使いたくないという高齢者も多いのです。なお、補聴器を使うと難聴が進行する(悪化する)というのは医学的根拠のない誤解なので注意してください。

老人性難聴が進行してしまうと、高齢者は、他者とのコミュニケーションで恥をかくことが多くなります。このため、老人性難聴への対応をしないと、高齢者は外出をしなくなります。それが結果として生活不活発病(廃用症候群)を誘発してしまいます。

「耳が遠くなった」というのは、高齢者の挨拶のようなものだと考えるのは危険です。そこから、生活不活発病となり、要介護状態まで一気に進んでしまうケースは、一般に信じられている以上に多数あります。しっかりと、老人性難聴と向き合う必要があるのです。

補聴器に代わる新たなテクノロジーの出現?

そうして難聴のリスクを正しく理解したとしても、どうしても補聴器は嫌という高齢者も存在します。そうした場合、もう打ち手はないのでしょうか。ここに対して、新たなテクノロジーが現場に導入されようとしています。以下、日本経済新聞の記事(2018年3月14日)より、一部引用します。

岩手銀行は高齢による難聴者向けに骨伝導会話システムを導入した。耳を塞がないヘッドホンから頭蓋骨を通じて聴覚神経に音声を伝える仕組み。顧客の高齢化が進むなか、本店を含む15店に設置して、窓口でのやり取りに利用してもらう。(中略)

雑音や騒音があっても鮮明に聞き取れることから、大声で話して個人情報や取引内容を他人に知られることなく、スムーズに行員と会話できる。同社によると金融機関で導入したのは青森銀行に次いで2行目になる。(後略)

このテクノロジーは、骨を振動させて音を伝える(骨伝導)というものです。一般の補聴器とは異なり、耳の鼓膜に向かって音を伝えるわけではないので、そもそも耳をふさぐ必要がありません。もちろん、一般の耳をふさぐ補聴器の代わりとして利用することもできますが、音楽を聞きながら誰かと会話をするといったことも可能になります。

ここでも考えておきたいのは、骨伝導のテクノロジーは、全ての難聴に対して有効というわけではないことです。障害の原因によっては、骨伝導のテクノロジーでは対応できない可能性もあるので、期待しすぎるのも問題かもしれません。

骨伝導のテクノロジーを使った補聴器は新しいのか?

骨伝導のテクノロジーを活用した補聴器に関する特許を調べてみると、日本では少なくとも出願された特許が57件存在しています。古くは、1978年にパナソニック(旧松下電器)とパイオニアが、骨伝導のテクノロジーを活用した補聴器に関する発明を出願しています。

これだけの出願があると、骨伝導の補聴器に関する基本的なテクノロジーは、すでに特許でおさえられています。日本では40年に渡って開発されてきた骨伝導技術の歴史があるのです。実用化はこれからという部分もあるでしょうが、ベンチャーが参入するにはハードルが高いかもしれません。

逆に言うなら、これだけ長期間に渡って開発されてきたテクノロジーが、ほとんど実用化されていない背景には、なんらかの理由があるのでしょう。その背景を克服し、老人性難聴に悩む多くの高齢者の日常を変えてもらいたいです。

※参考文献
・加古川医師会, 『老人性難聴』, 2009年6月
・日本経済新聞, 『岩手銀、高齢者との会話に骨伝導システム』, 2018年3月14日

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