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高齢者が死ぬまで運転を楽しめる社会?自動車メーカーが提示する別の視点

高齢者が死ぬまで運転を楽しめる社会?自動車メーカーが提示する別の視点

免許返納の流れの先にあるものは?

高齢者による自動車運転の事故が、大きく報道されるようになりました。統計的には、実は、自動車の事故そのものは減っています。とはいえ、事故全体にしめる高齢者の割合は増えています。高齢者は、老化によって事故を起こしやすい状態にあるため、やはり、免許の返納などは必要でしょう。

しかし、自動車がないと、基本的な生活を営めない地域に暮らす高齢者は、どうすればいいのでしょう。そうした高齢者に対しては、自治体から移住勧奨が行われていくことにはなります。しかし、そうして移住勧奨を受けたすべての高齢者が引っ越せるわけではありません。引っ越しには、リロケーション・ダメージ(引っ越しによる心身の虚弱化)もともないます。

そこで、自動運転技術への期待が高まっているわけです。自動運転技術が実現されれば、こうした高齢者も、住み慣れた地域に住み続けることもできるようになります。また、人口減少社会において確保しにくくなっていくドライバー人材も、必要なくなっていくでしょう(短期的にはドライバーの失業につながるので、それはそれで、別の対応が必要になります)。

自動運転技術は間に合うのだろうか?

自動運転の自動車が、日本の市場に投入されるのは、東京オリンピックの年となる2020年からです。これが2030年には、日本の自動車における7〜13%が、自動運転の自動車になると予測されています。そして2035年には、新車販売台数の25%が自動運転の自動車になると考えられています(BCG, 2015年)。

予想通りに行ったとしても、日本全国の高齢者ドライバーが、自動運転の自動車に乗っている未来は、まだまだ先のことになりそうです。少なくとも、2025年問題には間に合わないことは明白です。これは、かなり不安な気持ちになります。

よく知られていることですが、免許返納をした後の高齢者は、元気がなくなります。ひどい場合は、それをきっかけとして、要介護状態にもなります。自動車を運転すること自体が、多くの高齢者にとって楽しみであり、また、社会とつながるための大切な手段になっているからです。

自動車メーカーには、別の視点がある

こうした「間に合わない」という問題について、自動車メーカーは、当然、認識しています。そして、そんな自動車メーカーが提示している視点は、より広く、一般社会にも認識されるべきものだと思います。以下、NIKKEI STYLEの記事(2017年5月1日)より、一部引用します。

他メーカーに先駆け、国内で販売するほとんどの新世代商品に対して先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」を年内に標準装備することを発表したマツダ。だが、同社はその後に行った安全技術試乗会でさらなるユニークな方針を発表。それは「高齢者こそギリギリまで運転を楽しんでいただきたい」という大胆な提案だ。(中略)

2025年には日本の認知症患者が700万人を超えるという話もあります。だからつくづく今は技術以上に考え方が大切な時代が来たと僕は思っていて、同じ自動運転時代でもそれを「なるべく完全自動運転」で推進していくのか、「なるべく自分運転」で進めていくのかで、問題の解決度合いが変わっていく。ヘタに完全自動運転ばかりに注目すると、人間の退化を進めることにもなりかねないわけです。(中略)

実はわれわれの方針のほうが完全自動運転よりも技術的に面倒な部分もあるんですね。つまり機械による自動運転はドライバーがそもそも介在していないので機械が全部計算すればいい。一方、コ・パイロットコンセプトはドライバーの意識のあるなし、アルコールを飲んでいるかいないかなどの検知機能が正確でないとダメなんです。大変なのは人の状態を知ること。つまり人間研究なんです。(後略)

注意しないとならないのは、なにも、自動車メーカーは、運転事故を推奨しているわけではないという点です。運転者が誰であれ、自動車は(今のところは)危険な乗り物です。そして、深刻な事故を起こすのは、高齢者だけではありません。

危険を承知していても、そのリスクをとるだけの利便性があるからこそ、人類社会は、自動車の存在を容認してきたわけです。救急車や消防車、パトカーもまた、自動車です。だからこそ、このニュースにあるような、安全性向上を進めようとする自動車メーカーを応援していく必要もあるのだと思います。

※参考文献
・NIKKEI STYLE, 『マツダ流「高齢者こそギリギリまで運転を」の本気度は』, 2017年5月1日
・出典:BCG, 『自動運転車市場の将来予測』, 2015年4月

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