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まだ改善の余地が大いにある?腰痛を避けながらの介護技術の現状について

まだ改善の余地が大いにある?腰痛を避けながらの介護技術の現状について

介護における腰痛は深刻すぎる問題

介護における職業病(業務上疾病)と言えば、腰痛です。介護は、要介護者の体位を変えたり、ベッドから車椅子に移動(移乗)させたり、なにかと重たいものを持つことになる仕事です。重たいものを持つ仕事では、腰痛が深刻な問題になります。とくに介護の世界では、腰痛が原因の離職も多いのです。

介護職が不足している状況において、これは深刻すぎる問題です。同時に、介護をする家族もまた、腰痛になってしまえば、できていた介護を続けられなくなります。そうなると、プロの介護職にお願いしなければならないことが増え、出費まで増えてしまいます。

腰痛の問題は、介護業界では広く認識されています。KAIGO LAB でも、多数の記事にしてきました。その中には、ノーリフト運動など、可能性の感じられる取り組みもあります。しかし、KAIGO LAB の周囲では、いまだに腰痛の心配がなくなったという声は聞きません。

要介護者(利用者)にとっても良くない

腰痛になるほどに力を加えるということは、要介護者に残されている力(残存能力)が有効活用できていない可能性も示唆しています。この場合は、介護職や介護をする家族にとって危険であるだけでなく、要介護者の自立という介護の目的にとっても良いことではありません。

では、実際に、介護業界における腰痛をめぐる環境はどうなっているのでしょう。これについて調査した比較的あたらしい論文(郭, 2016年)があるので、以下、そこから結論を引用してみます(改行位置などは KAIGO LAB にて修正)。

今回実施した調査により人体力学の視点から不合理な介護方法の実践が確認できたことは、ひとつの成果であったと考える。不合理な介護は、不必要な身体的負担を生み、介護者に対して少なからず影響を及ぼしていることが推察され、離職理由のひとつであった、「身体不調」・「腰痛」の発生に影響していると考えられる。

また、今回の調査からは、被介護者の身体機能を活かすことをしない形で介護が行われている可能性が示唆された。持っている身体機能を長期間活用しないということは、身体機能の低下につながり、やがて廃用性症候群による二次障害を生み出すことになる。(中略)

今回の調査からは、介護現場において福祉機器が十分に活用されていない状況が示唆された。先行研究でも報告があるように、福祉機器の活用は、介護負担の軽減に繋がることが欧米を中心に広く理解され支援場面で導入されている。

この分野でこそ福祉機器の開発が待たれる

先の論文の結論にあるとおり、現状は、まだまだ改善の余地があります。介護技術の向上も大事ですが、今後も、未経験者が多く入ってくることが予想される介護業界においては、業界全体の介護技術がいきなり向上することは期待できません。

そうなると、残されている可能性は、福祉機器の有効活用です。とくに近年、福祉機器は急速に発達してきています。介護の経験がまだ未熟な人でも、腰などへの負担の少ない介護を実現するのは、福祉機器をおいて他にありません。

福祉機器のメーカーは、ぜひとも、この分野における競争を活性化してもらいたいです。そのためにも、政府は、この分野への助成金を手厚くする必要があるでしょう。また、こうして開発された福祉機器の技術が、外資系企業に簡単にコピーされてしまわないように、特許の面でのサポートも必要になります。

※参考文献
・郭 丹, et al., 『腰痛予防を考慮した介護技術の検討(その1) : 介護現場で実践されている介護技術の分析』, 植草学園短期大学紀要 17, 1-10, 2016-03

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