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動かなかった足が動く?イノベーション車椅子「COGY(コギー)」について

動かなかった足が動く?イノベーション車椅子「COGY(コギー)」について

車椅子を足で漕ぐ(こぐ)という発想があった

足腰が不自由になった際に、多くの人が車椅子を使います。車椅子の利用者数に関する正確なデータはないのですが、足になんらかの障害を持った人を、仮に、車椅子の潜在的な利用者とすれば、その数は国内で約127万人(2013年)となります。

車椅子には、オーダーメイドから量販店で買える既製品まで、迷ってしまうほどに、様々なバリエーションがあります。しかし、そうした車椅子の多くは、基本的な構造は同じで、デザインや使い勝手の面において多様性をもたせているものがほとんどです。

そんな中で、ひときわ目立つ車椅子があります。それは「COGY(コギー)」という車椅子で、他の車椅子とは、設計の基本となっている構造自体が根本的に異なります。通常、車椅子は、介助者(介護をする家族など)が後ろから押すか、または、要介護者が、車輪の外枠を手で漕ぐ(こぐ)というのが主流です。

しかし「COGY」という車椅子は、足元に自転車のペダルのような機構があり、このペダルを足で漕ぐことで前に進むようになっているのです。そういえば、高齢者施設などでは、車椅子の足元のフットレストを外して、足で床を蹴って自走している人もみかけます。「COGY」は、そうした観察から生まれた車椅子なのかもしれません。

「COGY」開発の理論的な背景について

「COGY」は、もともと、リハビリを目的に開発された車椅子です。まず、歩行が難しくなった人でも、どちらか片方の足が少しでも動かせるのであれば、両足でペダルを漕げる可能性もあるそうです。では、足の不自由な人が「COGY」であれば、両足を動かせるのは何故でしょう。

人間が歩行するときは、脳からの指令が、脊髄(せきずい)を介して、足に伝わることで、足を動かしています。しかし歩行が難しくなった人というのは、そもそも脳から足への指令がうまく伝わらない状況にあることが多いのです。

このとき、脳から足への指令はうまくいかなくても、その途中にある脊髄が、重要な働きをします。脊髄には、片方の足を動かしたら、次に、反対側の足を動かすという、原始的なプログラムがあるからです。

脊髄にプログラムされている、両足が連動して動く仕組みによって、片足だけでも少し動かせるのであれば、反対側の足がそれに追従して動かせる可能性があるのです。東北大学名誉教授の半田康信博士は、これを「ニューロ・モジュレーション」と呼んでいるようです。

車椅子というと、こと下半身は動かさなくなる、という印象があります。しかし「COGY」はむしろ、要介護者に残されている能力を最大限に活かすような設計になっているのです。実際にこの「COGY」を使った人からは、以下のような喜びの声が届いているようです(足こぎ車いすセンターのホームページより引用)。

COGYに出会ったとき、正直こげるとは思いませんでした。立つことは出来るのですが、足のしびれがひどいものですから。それが自分の足で動かせるなんて。子供が自転車に乗れたときの喜び、といえば分かりやすいですかね。女房はそのとき写真を撮ってましたね。

介護機器(福祉用具)に求められる設計思想

介護業界で働く人間であれば、誰もが知っていることに「要介護者に残されている能力を活かす」という哲学があります。しかし、これを知識として知ってはいても、実際にそれを実践しているケースというのは、それほど多くないように感じます。

知っていることを、実際にやってみるには「行動の壁」があります。これを乗り越えてもなお、そこから教訓を引き出すには「気づきの壁」があります。さらに、それを超えたとしても、気づいたことを誰もが使えるものとして実現する「技術の壁」があるのです。

介護に関わっていると、介護の知識だけは、どんどん頭に入ってきます。しかし、そうした知識だけでは、介護の現実は変えられないのです。「行動の壁」「気づきの壁」そして「技術の壁」を乗り越えてはじめて、介護の現実が変わっていきます。

余談ですが「技術の壁」を超えたときは、それを特許として権利化することを忘れてはなりません。将来的には、介護は、日本の輸出産業にならなければいけません。そのとき、特許がなければ、すぐれた技術もコピーし放題です。そのようなことにならないよう、国はぜひ、福祉用具メーカーの特許支援に乗り出してもらいたいものです。

※参考文献
・足こぎ車いすセンター(ホームページ)

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