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福祉用具レンタルが自己負担に。これが日本の介護を崩壊させる決定打になる?(ニュースを考える)

福祉用具レンタルが自己負担に

介護保険の福祉用具レンタル費用が原則自己負担になる?

介護保険の費用を抑制するため、介護保険の福祉用具レンタルを、原則自己負担にするという方針が財務省から出されました。急速に高齢化が進む状況において、財源がないというところは(頭では)理解できますが、介護をする家族にとっては、かなり苦しい話です。

実は、2015年6月に閣議決定した「骨太の方針」には、福祉用具のレンタルを含む軽度者向けサービスの見直しについて、すでに明記されています。また訪問介護の生活援助やバリアフリー化の住宅改修費の見直しについても検討されてきました。

財務省はこれらを介護保険の給付から外して、原則自己負担にすることを主張し、議論を進めてきています。以下、東京新聞の記事(2016年8月3日)より、一部引用します。

介護保険の費用抑制のため、政府内で検討が進む要介護度が軽い人へのサービス見直しのうち、特に身近な福祉用具レンタルの全額自己負担化方針に、対象の高齢者から悲鳴が上がっている。当事者らには「用具を使って行動できるからこそ、元気でいられる」「生活を壊さないで」との思いが共通しており、「政府方針は逆に重度者を増やす」と主張する。(中略)

介護保険を利用してレンタルできるのは、トイレやベッドに設置できる手すり、歩行器、車いす、電動ベッドなど十一種。一割負担の場合、車いすだと一般には月に数百円で借りられ、利用者にとっては在宅で自立生活を続けるのに大きな手助けとなっている。

厚生労働省の統計によると、一六年二月に介護保険で福祉用具をレンタルしたのは百八十四万人。うち政府側が要介護度が軽いとみなす要支援1、2と要介護1、2の人(軽度者)は百十四万人で六割を占める。一方、それらの人への福祉用具貸与のための給付費は九十五億円で、介護保険全体からみれば1.4%にすぎない。

要介護者の状態が悪化し、かえって財源を痛めるのでは?

これまで福祉用具を利用して自分で行ってきた日常の生活行動は、用具がなければ、自分ではできなくなります。今まで(用具の助けがあれば)自分でやれていたことをやらなくなるのは、要介護度を上げてしまう危険があります。これは、要介護者の自己有能感を下げることにつながります。そうなると、認知症の発症リスクも、間違いなく上がってしまうでしょう。

福祉用具のレンタルから収益をあげている介護事業者も、その多くが淘汰されてしまうでしょう。そうなると、福祉用具の市場そのものが小さくなります。これにより、福祉用具を作って売っているメーカーも、売り上げが下がり、福祉用具を開発するメリットが失われてしまいます。

たかが福祉用具のレンタル、という話ではないのです。ここの改悪は、日本の介護の方向性を大きく決めてしまう、恐ろしいものだという認識が求められます。要介護者の状態が悪化し、かえって介護のための財源を痛めることにつながる危険性をともなうものなのです。

高齢者の貯蓄は足りていない=家族の負担が上がる

以前にも記事にした通り、高齢者の貯蓄については、モデル世帯であっても、老後の生活をギリギリ回せるか、足りないのが現状です。今まで1割負担だったものが、10割負担になってしまえば、生活が破綻する人が増えてしまいます。

これは、自分で、介護にかかる費用を負担できない要介護者が増えるという話です。そうなると、介護をする家族の負担が増えてしまうことは目に見えています。そんなお金に余裕のある家族は多くないでしょう。

2025年までに、介護保険の財源は、現在の約10兆円から、倍の20兆円になると考えられています。つい先日も、防衛予算の増加について報道がなされていましたが、世界が大きく変わろうとする中で、どこに予算をかけるのかは、非常に難しい問題です。

高齢化がどんどん進む中で、財源は限られており、介護に関わるサービスが改悪されていくのは避けられないかもしれません。ただ、先々のことを考えれば、介護をする家族を守りながら、少しでも元気な高齢者を減らさないための予算は、確保すべきでしょう。

世界一の超高齢国家として、日本が抱えている問題は山積みです。今後、ベーシックインカムへの移行を含めた、抜本的な改革を検討していく必要があるのではないでしょうか。

※参考文献
・東京新聞,『介護保険の福祉用具レンタル 全額自己負担方針に悲鳴』,2016年8月3日

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