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自動運転の技術が実用化されたら、タクシー、トラック、バスの運転手はどうなるのか?自動化による失業について考える。

自動運転の技術が実用化されたら、運転手はどうなるのか?

自動運転は夢の技術であり、この社会にとって必要なもの

自動車は、人間の社会を一変させた重要なものです。物流を劇的に効率化させただけでなく、関連する産業において多数の雇用も生み出しています。自動車は、近代の経済を牽引する中心的な役割をになっていると言っても過言ではありません。

自動車には、死亡事故にもつながる、凶器としての側面もあります。自動車による環境汚染も深刻です。同時に、救急車、パトカー、消防車といった自動車は、人々の命を救うものでもあります。

こうした自動車の功罪を受けて、自動車は、より安全に、より環境に優しく、より効率的なものへと急速に進化してきました。この進化の究極のステージとも言えるのが、自動運転技術の実用化です。

自動運転は、単に、運転を楽にするテクノロジーの開発ではありません。自動運転 → 事故を想定しない → 運転する人の安全に必要な車内設備が減る → 軽量化できる → 燃費も良くなる → 自動車のネガティブな面が劇的に減らせる、という図式が見えています。この全てが、自動運転からはじまるというところが重要です。

高齢者の運転による事故も増えてきている今、この自動運転への期待は高まっています。そして自動車は、車椅子との融合に至るはずです。そうなれば、高齢者の生活は、仮に要介護状態であったとしても、より豊かなものになります。

自動化には、特定の人の雇用を奪ってしまうという側面もある

駅の改札にいた切符切りの人は、自動改札になりました。銀行の窓口もATMになり、さらにインターネットでの決済がどんどん便利になっています。こうした自動化の波は、私たちをどこに導いているのでしょう。

自動車の自動運転というのも、こうした自動化の一つです。そして2020年の東京オリンピックまでには、自動運転のタクシーを走らせる計画が、政府の後押しを受けて進められています。

しかし、自動運転と、それによるタクシー業務が実現したら、タクシー運転手として仕事をしてきた約38万人(平成23年時点での企業所属運転手+平成25年時点での個人タクシーの台数)の人々はどうなるのでしょう。

タクシー運転手の平均年齢は、平成22年の時点ですでに56.8歳でした。平均的なタクシー運転手が高齢者(65歳以上)になるタイミングが、まさに、自動運転が実現するタイミングに近いのです。

また、運送業社としてトラックを運転している人々も、約84万人(平成25年時点)います。この人々も、自動運転の実現によって、職を失っていくでしょう。人数的には、トラックほどではありませんが、バスの運転手も、約13万人(平成22年時点)います。

自動運転の技術が完全に実用化されたとき、タクシー、トラック、バス、合わせて約135万人分の雇用が、一気に失われます。約135万人というのは、日本の就業者数6,396万人(2016年)の2%にあたります。

運転手の失業インパクトは、通常の社会活動では解消できない

日本の失業率は、だいたい、3〜4%で推移しています。ですから、この、2%という自動運転の技術が実用化されたことによる失業のインパクトは、決して小さいものではありません。しかも、この2%の失業者には高齢者が多く含まれており、かつ短期間に生み出されるという特徴があるのです。

確かに、高齢者の雇用は増えてきています。しかし、全就業者の2%にも及ぶ大量の高齢者が失業した場合、その人々を一気に雇用として吸収するのは困難です。再就職のためのトレーニングには、かなりの費用と期間が必要になるからです。

かといって、2020年までには自動運転が実用化されることを考えると、ベーシックインカム(無条件で、個人に対して生活に必要となるお金を支給する仕組み)のような抜本的な対策は間に合いそうもありません。

繰り返しになりますが、ここで生まれてしまう失業者の中には、高齢者が多く含まれているという点には注意すべきでしょう。高齢者の再就職は、若者の再就職よりもずっと困難であるのが一般的だからです。

そうなると、今からでも、こうしたプロの運転手の失業に備える各種法案を成立させるべく、政治的な議論を開始しなければならないはずです。無邪気に、自動運転の可能性だけを追求するのではなく、その登場によるネガティブな影響についても、しっかりと準備をしておくべきです。

※参考文献
・全国タクシー・ハイヤー連合会, 『従業員数及び運転者の推移』, 2014年
・全日本トラック協会, 『就業者数の推移』, 2015年
・国土交通省, 『バスの運転者を巡る現状について』, 平成25年12月20日

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