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保証人がいないと、介護施設には(なかなか)入れない。

介護施設と保証人

不動産の所有者(大家)の目線からみた高齢者問題とは?

高齢者になると、そもそも、普通の賃貸でも、保証人がいなければ、契約を結ぶことが難しくなります。これはよくないことです。しかし、不動産の所有者(大家)の気持ちになると、この問題の解決が難しいということも理解できます。

たとえば、自分が所有している不動産に、保証人のいない高齢者の入居者が「住みたい」と希望してきた場合、どう考えるでしょう。当然、貸してあげたい気持ちもあります。

しかし、この高齢者が健康を害して入院し、入院費用がかさんで、お金がなくなってしまったらどうでしょう。そこで「出ていってくれ」とは、とても言いにくいです。また、最悪、その物件で、入居している高齢者が孤独死をしてしまったら、その後の対応は、どうすればよいのでしょう。

こうした背景から、高齢者の入居が拒否されることは、不動産の所有者を責めても仕方がないことがわかります。これは、個人の資質の問題ではなくて、社会的な問題だからです。

不動産の所有者が、個人的に解決しようとしても、どうにもなりません。こうしたことは、国が(きちんと運用できる)法律を整備し、高齢者に万が一のことがあったら、その保証を個人に押し付けない方向に調整していくべきでしょう。

高齢者の介護施設への入居問題について

これと同様の背景から、介護施設の多く(=91.3%)も、高齢者の入居にあたっては、保証人を求めています。保証人が得られない場合、入居が拒否されるケースもあり、これが問題になっています。以下、この問題を報道した東京新聞の記事(2016年3月6日)より、一部引用します(太字はKAIGO LAB)。

身寄りのない高齢者が保証人がいないことを理由に、介護施設への入所を断られるケースが絶えないことから、厚生労働省は、国が定めた運営基準を順守し、正当な理由がないのにサービス提供を拒否しないよう、自治体を通じて施設側への指導を強化する。七日、都道府県や政令市の担当者を集めた会議で伝える。(中略)

厚労省高齢者支援課によると、特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設の運営基準は「正当な理由なく、介護福祉施設サービスの提供を拒んではならない」と規定。「保証人がいないこと」だけを理由に入所申し込みを拒むことはできず、この原則は都道府県の条例などにも盛り込むこととされている。

しかし、介護保険制度が始まった二〇〇〇年以降、介護施設への入所が行政の「措置」から利用者と施設の契約に切り替わり、保証人を求めることが一般的になるとともに、保証人のいない高齢者の入所を拒む施設も増えたとみられる。有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅を含めると、一三年には保証人を求めるとする施設のうち30%超が入所を認めていないとの民間調査もある。

国が介護施設の「指導を強化する」ことで問題は解決するのだろうか?

厚生労働省が、介護施設に対して「指導を強化する」というのは、具体的にはどういうことなのでしょう。先にも述べたとおり、この問題は、不動産の所有者(または介護施設)に押し付けることはできない話です。

KAIGO LAB編集部とつながっている、ある介護施設には、1円も支払えないどころか、各種の生活費まで介護施設のほうが出している入居者がいます(それなのに、生活保護は通らない)。あくまでも善意からのことで、仕方なく対応しているのです。

実は、介護事業者の多くは、こうした経験をしています。苦い経験を繰り返すうちに、介護施設の経営者たちは「これ以上、お金も身寄りもない利用者(要介護者)を増やしたら経営破綻してしまう」という危機感が定着しています。

国は、一方では、介護事業者への報酬を減らして経営努力を求めています。しかし他方では、こうして無理なリスクを受け入れるという「指導を強化する」というのです。

ただでさえ、昨年、過去最高の倒産件数を出したのが介護業界です。国から、これ以上のリスクを押し付けられるようでは、介護事業者は、事業を続けられません。介護施設は足りていませんが、ここへの新規参入の魅力は、もはやありません。

繰り返しになりますが、この問題は、介護施設に限った話ではありません。一般の借家契約でも、身寄りがなく、保証人も得られない高齢者は、家を借りることが非常に困難な状況です。

高齢者の保証人問題を解決するための法律が必要

こうした、高齢者の保証人問題を解決するための(きちんと運用できる)法律が必要です。実質的に無料で介護施設に入居していたり、無料で介護サービスを利用している高齢者の介護費用を、介護事業者に押し付けるのは間違っています。

とはいえ「お金がない高齢者は、入居させなければいい」「お金のない高齢者には、介護サービスはいらない」というようなことを考えないのが、介護業界の人々です。現在は、そうした優しさを持っている人々に、社会が甘えている状態なのです。

そうした人々に対して「指導を強化する」ことで、さらに、重荷を背負わせることで、日本の介護は良くなるのでしょうか。保証人のいない高齢者に不動産を貸すということは、今は、どう考えてもリスクが高すぎます。

国が、このリスクを下げることが、保証人問題の解決にとって、本当に必要なことです。国家とは、そもそも、こうしたことのために存在しているわけです。それができないなら、何のために国民が税金を納めているのか、わかりません。

※参考文献
・東京新聞, 『保証人ない高齢者の入所拒否 介護施設に是正指導へ』, 2016年3月6日

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