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ついに経営者が摘発された。無届けの介護ハウス問題について(ニュースを考える)

無届けの介護ハウス

介護施設に入るしかない高齢者もたくさんいるが・・・

24時間365日の介護が必要なのに、家族の支援が受けられない高齢者は、どうすればいいのでしょう。介護保険を使って、ヘルパーに来てもらうだけでは、生きていくために必要な支援として不十分だとしたら、どうするのでしょう。

この場合の選択肢としては、24時間365日のケアがある、介護施設に入所するしかありません。ですが、民間の介護施設の入所料金は、平均で、毎月25万円程度と言われています。これだけのお金を払えない高齢者は、どうすればいいのでしょう。

本当は、自治体が運営する、比較的安くて安心な「特別養護老人ホーム(特養)」が、こうした低所得の高齢者を受け入れるべき施設となるべきです。しかし特養はすでに満杯です。満杯でも、特養に入所したいと考えて、空きを待っている人は、公式で50万人以上います。

本当は入所したくても入れないので、諦めている人も入れれば、100万人以上が空きを待っているとも言われます。しかし、特養の入所待ちは、3年以上かかるケースもざらにあります。

無届けの介護ハウスとは?

自宅にいたら、死んでしまいます。しかし、民間の介護施設に入るにはお金が足りないし、かといって特養にも入れないとなれば、どうすればいいのでしょう。もっと安い介護施設を探すしかありません。

では、もっと安い介護施設など、あるのでしょうか?それが、無届けの介護ハウスと呼ばれるものになります。実際に、無届けの介護ハウスの入所料金は、毎月、数万円〜10数万円です。この金額なら、少ない年金でも、なんとか入所することが可能でしょう。

こうした介護ハウスの入所料金が安いのは、運営コストが安いからです。では、無届けの介護ハウスが、いったいどこで運営コストを浮かせているのかというと、設備や職員の数など、厳しい国の指針を「無視」することです。

安全や品質を厳しく定めた国の指針に従うには、施設の設備や、人材の確保に大きなコストを支払わないとなりません。しかし、無届けの介護ハウスは、こうした国の指針を「無視」することで、このコストを支払わないのです。結果として、入所費用が安くなります。

病院や自治体としても、介護施設に入るしかない高齢者がいて、その高齢者にお金がない場合、無届けの介護ハウスを紹介するしかありません。無届けにも関わらず、高齢者は、病院や自治体の紹介によって、無届けの介護ハウスに入所したりもしています。

全国に少なくとも1,941件はある

2015年に実施されたNHKによる調査では、こうした無届けの介護ハウスは、全国に、少なくとも1,941件はあることがわかっています。そもそも無届けなので、存在の把握自体が困難です。ですから、実際には、こうした無届けの介護ハウスは、もっとたくさんあるはずです。

しかも悪いことに、無届けの介護ハウスは、毎年どんどん増えていることもわかっています。その背景には、増え続ける要介護者と、高齢者の貧困問題があります。仕方がないのです。

ただ、無届けの介護ハウスは、国の指針を「無視」しているために、安全や品質の面で、問題があります。また、無届けであるため、各種報告の義務にも従わないため、内部に問題があっても、それを国が把握することができません。

群馬県渋川の無届けの介護ハウスで起こった火災(2009年)では、入居していた10名の高齢者が亡くなりました。名古屋緑区の無届けの介護ハウスで発生した火災(2015年)でも、2名の入居者が亡くなっています。いずれの施設にも、スプリンクラーが無かったのです。

無届けの介護ハウスの運営会社社長が摘発される

こうした流れの中、ついに、無届けの介護ハウスを運営する会社の社長が、老人福祉法違反などの疑いで書類送検されました。無届けの介護ハウスが摘発されたのは、日本では、これがはじめてのケースとなります。以下、NHK NEWSWEB(2016年2月4日)より、一部引用します。

東京・練馬区のマンションで、高齢者に介護サービスを提供する施設を無届けで運営していたなどとして、警視庁は、運営会社の社長を老人福祉法違反などの疑いで書類送検しました。こうした施設は「無届け介護ハウス」と呼ばれ、警視庁によりますと、摘発は全国で初めてだということです。

書類送検されたのは、東京・練馬区で高齢者施設「ほほえみガーデン」を運営していた会社と52歳の社長です。警視庁によりますと、この会社は、去年7月までのおよそ1年半の間、練馬区のマンションの部屋で、法律で義務づけられた届け出を行わないまま、70代から90代の高齢者6人に対して介護サービスを提供していたなどとして、老人福祉法違反などの疑いが持たれています。

気になるのは、今、この施設に入所している高齢者のことです。今後、この施設を出ていくことになるのでしょうが、いったい、どこに行けばよいのでしょう。特養に入れればよいのですが・・・。

とにかく国は、こうした無届けの介護ハウスに、届け出を急がせる方向で動いています。この摘発は、それを即すための起爆剤としての位置付けがあるのでしょう。ただ、摘発はよいのですが、結果として行き場のない高齢者が生まれてしまうのは問題です。

現実的には、とにかく無届けの介護ハウスの実態を把握するため、届け出だけはさせる必要があるでしょう。同時に、そうした施設の問題(スプリンクラーがないなど)に対しては、改善のための補助金や助成金を出していく必要があると思われます。

※参考文献
・NHK NEWSWEB, 『「無届け介護ハウス」 運営会社社長を書類送検』, 2016年2月4日
・クローズアップ現代, 『“無届け介護ハウス” 急増の背景に何が』, 2015年1月20日

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