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認知症の人を、患者として扱わないために注意したいこと

認知症の人とともに生きる

看護学生の学びを通して見えてくることがある

看護学生が、認知症ケアの現場(グループホーム)でなにを学ぶかについての調査研究があります(道繁, 2015)。これは、普段は病気で入院している患者を相手にしている医療者が、介護の現場における考え方とのギャップを認識するという、とても興味深いプロセスです。

看護学生たちは、認知症を病気としてみており「治療を最優先とした対応」をあるべき姿としています。それに対して、介護の現場では「認知症の治療」ではなくて「認知症とともに生きる」という視点から、ケアを行っています。

この認識のギャップは、認知症の要介護者をかかえる家族にも見られることです。なんとか認知症を改善させたいという家族の気持ちはわかりますが、それは医療者の仕事です。家族としてできることは、認知症に寄り添うことであり、結果としてそれが、認知症の改善につかがることも多くあるのです。

今回は、この調査研究の結果をベースとして「認知症とともに生きる」ために、注意しておきたい点をまとめてみます。内容は、KAIGO LAB にて考えて追記・修正しているので、気になる場合は、参考文献から、もとの論文を参照してください。

認知症の人を、患者として扱わないとはどういうことか?

認知症の人を患者として扱わないということは、その人の生活を優先させるということです。病院では、医療の中に生活があります。これに対して、介護の現場(グループホーム)では、生活の中に、一部、医療があります。この点を間違えると、認知症の人との長期的な関わりがおかしくなってしまいます。

誤解を避けるために付け加えておきたいのは、これは、病院のありかたがおかしいということではありません。認知症の治療も大事ですし、医療者は、やはり、治療を第一とすべきだからです。ここで主張したいのは、認知症の人と長期的に関わる人(家族や介護職)にとって大事なことは、医療者の専門である治療ではないということです。

1. 認知症の人が時間をすごす環境を心地よく整えること

看護学生が驚いているのは、認知症ケアの現場では、その人の居心地を最優先して、以前暮らしていた環境にできるだけ近づける工夫がなされていることでした。病院では、治療が最優先されるため、ベッドや机などは、すべての部屋で統一されているのです。さらに、認知症の人に関わる介護関係者まで、その環境に含まれているというところも重要です。介護関係者の言動や行動は、認知症の人の居心地の良さを追求するために、細心の注意が払われています。本人が嫌がるような環境の変化は、できるだけ起こさないようにします。

2. 認知症の人がやりたいことを、できるだけやらせてあげる

看護学生にとっては、認知症の患者の安全も大切なことです。骨折を避けるため、病院内の移動にはできるだけ車イスを使い、ベッドから車イスなどへの移乗も手取り足取り行います。さらに患者の動きを関知するセンサーによって、認知症の患者の「徘徊(意味なく歩き回ること)」をナースステーションに知らせる仕組みが導入されています。これに対して、認知症ケアの現場では、その人の安全が守られる限りにおいて、自由に歩いてもらいます。ケアの文化では「生きているものは動く」のだし「動くことが生きていることだ」と考えるからです。それを「徘徊」とは考えず、背後に本人にしかわからない意思があると考えます。それをできるだけ尊重しようとするのです。

3. 禁止事項に従うのではなく、認知症の人を応援する

看護学生は、認知症の人に対して看護師が避けるべき態度(禁止事項)として「失敗しても怒らない」「できないことを責めない」「嫌がることをしない」「焦らせない」「無理強いしない」「反応が遅くてもイライラしない」「傷つけることを言わない」という7つのコードを大切にしています。これに対して、介護の現場では、こうしたことも認識してはいますが、禁止事項によって自らを律するのではなく、認知症の人の良いところをポジティブに探し出し、その人と良好な人間関係を築こうとしています。

認知症の要介護者を在宅介護する場合にも

こうした、介護の現場における看護学生の学びは、認知症の要介護者を在宅介護している介護者(家族)にとっても参考になるはずです。認知症の人とともに生きるということは、医療者として認知症を治療しようとすることではなく、ケアすることだからです。

記事『女神クーラの神話;人間とはケア(介護)をする存在である。』でも述べたとおり、人間とは、他者をケアする生き物です。たまたま、その相手が認知症だからということで、ケアするという行為そのものが変わるわけではありません。

認知症の人にとって心地よいケアができる人は、一般にも、多くの人をケアし、広く愛される人格を築けるはずです。その意味から言えば、介護の現場とは、優れた人格形成の場だと考えることも可能です。もちろん、それを簡単なことだというつもりはありませんが。

※参考文献
・道繁祐紀恵, et al., 『介護老人保健施設およびグループホームにおける認知症高齢者に対する看護学生の学び』, 山陽論叢 21, 43-53, 2015-02-16

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