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介護現場でも、派遣スタッフが頑張っている

介護現場の派遣スタッフ

人材難から、派遣スタッフの需要は高い

介護事業所へのアンケート(堀田, 2009)で、派遣スタッフを雇うのは「職員の欠員を一時的に補うため(70.3%)」という理由が7割となり、最も多いことがわかりました。介護業界は、ただでさえ人材が足りないだけでなく、離職率も高いので、そこを埋めるという背景があるのでしょう。

同アンケート結果で、派遣スタッフを雇う理由の第2位と第3位は「正職員を募集しても集まらないため(56.0%)」「非正職員を募集しても集まらないため(48.4%)」でした。そのまま、介護業界の人材難を表しています。

ここで、非正職員とは、パート・アルバイトなど、派遣スタッフよりも責任の少ない仕事をする職員のことを指しています。こうした非正職員は、基本的に、厳しい介護事業経営の中で、人件費を抑制することが目的になっています。

派遣スタッフは、正職員とほとんど同じ仕事をしている

派遣スタッフは、女性が9割近くを占め、年齢は39歳以下(平均39.7歳)が約半数です。ここにも、日本が女性を搾取している側面が見え隠れしています。1回の労働者派遣契約期間は、3ヵ月(65.0%)が最大で、6ヵ月(32.9%)、1ヵ月(20.7%)、1年以上(16.3%)となっています。

ここで「自分とほとんど同じ仕事をしている正職員がいる(66.0%)」という部分は、注目に値します。不安定な派遣スタッフという立場にありながら、実質的には、派遣先に直接雇用されている正職員と変わらない仕事をさせられているのです。

もちろん、正職員の中でも、ベテランと呼ばれるような人々と同じ仕事をしているわけではありません。そこまで行けると、派遣スタッフも、正職員として雇用される場合が多いからです。

とはいえ、介護事業経営をしているほうからすれば、極端に言えば、一部のベテラン正職員以外は、すべて派遣スタッフだけでも経営できる状態になっています。これは、経営的には便利ですが、派遣スタッフのほうからすれば、不公平だと感じて当然の状態です。

「派遣スタッフは、働く場所や時間を自由に選べる」という意見があります。しかし、これは本来、正職員と派遣スタッフの違いによらず、柔軟な働き方が許される社会では、すでに実現されていることです。

日本の介護を担う仲間なのに・・・

職場の仲間として一緒に頑張ってきた派遣スタッフが、契約によって切られてしまう状況に対して「それはないんじゃないか」と感じている介護職の人も少なくありません。デンマークであれば、公務員の身分にあるような職種なのですが、日本では、一方的に便利に使われ、搾取されている存在です。

もっと言えば「懇親会やイベント等職場内の交流を深める機会」に参加できる派遣スタッフは少なく(34.2%)、同じ仕事をしているのに、仲間はずれにされている印象です。

学習機会についても「派遣先事業所内部でのケアカンファレンス」に出られる派遣スタッフは22.7%、「職場全体の課題を共有・議論する機会」に出られる派遣スタッフは22.1%にすぎません。簡単な「派遣先事業所が行う定期的な研修」でさえ、参加しているのは21.2%にとどまっています。

介護業界に限らず、こうした派遣スタッフの現状を見ると、日本には「身分社会」が定着してしまっていることがわかります。仕事内容がほとんど同じでも、正職員と派遣スタッフの間には、越えられない壁ができています。

ただでさえ人材が足りない介護業界で、特に教育機会において差別的な対応が取られているのは、社会的損失です。知らないフリもできますが、その結果、痛い目にあうのは、将来の私たちです。

※参考文献
・堀田聰子, 『介護施設の派遣受け入れ 高齢者介護施設における派遣スタッフの活用』, 人材ビジネス 24(5), 24-28, 2009-05
 

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