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身体拘束の現実と課題

身体拘束

要介護者が動けないように縛ること

介護の悲しい現実ですが、要介護者が動けないように、その身体をベッドなどに拘束する(固定する)という措置が取られることがあります。当然、こうした身体拘束は、望ましいことではありません。しかし、認知症などの症状によっては、身体拘束がどうしても避けられないと考えられることがあります。

認知症介護研究・研修センターによる身体拘束実態全国調査(2005年度)では、調査の対象となった介護施設の約60%で身体拘束が行われていることが明らかにされました。また、全国抑制廃止研究会による身体拘束実態全国調査(2010年)においては、身体拘束を廃止できている施設は、わずか23.4%しかないことがわかっています。

こうした身体拘束には(1)関節が動かなくなったり、筋力が低下する(2)食欲が低下する(3)心肺機能が低下する(4)感染症への抵抗力が低くなる(5)認知症が悪化する、といった悪影響が指摘されています。

さらに、要介護者が拘束されている事実を見ると、家族は大きな罪悪感にさいなまれることになります。また、介護のプロたちとしても、自分が拘束する側になることで、自分が行っている仕事に誇りが持てなくなり、退職につながるといった点が指摘されています。

具体的にどのような身体拘束が行われているのか

以下は、厚生労働省『身体拘束ゼロへの手引き』(平成13年3月)に記載されている、身体拘束の具体例です。こうした行為は「望ましくない」と考えられていますが、同時にそれは「こうした行為がある」ということと同義です。残念ですが、介護施設は慢性的な人材不足であり、身体拘束をしないと、要介護者にとって危険な状況があるわけです。

1.徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
2.転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
3.自分で降りられないように、ベッドを棚(サイドレール)で囲む。
4.点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
5.点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6.車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
7.立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
8.脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
9.他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
10.行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
11.自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

要介護者の家族(介護者)として知っておきたいこと

介護施設などにおける身体拘束には、以下、3つの条件が満たされない限り、実施してはいけないことになっています(KAIGO LABにて加筆修正しています)。この条件について理解し、要介護者のいる介護施設が、こうした条件に違反していないか、評価していくことが必要になります。

切迫性

身体拘束をしないと、要介護者、または周囲の人の生命や身体が、危険にさらされる可能性が非常に高いこと。この判断には、身体拘束によって発生してしまう悪影響を考えても、それ以上の危険が認められるかどうかが確認されなければならない。また、この判断は、複数のスタッフによる検討というレベルを超えて、介護施設全体として実施されることが原則。

非代替性

身体拘束を行う以外に、こうした状況を乗り越える方法がないこと。いかなる場合でも、まずは身体拘束を行わずに対処する可能性が検討されなければならない。身体拘束以外に方法がないということが、複数のスタッフによって確認されなければならない。さらに、身体拘束がなされる場合も、最も制限の少ない方法で実施されなければならない。

一時性

身体拘束が、あくまでも一時的なものであって、日常的なものでないこと。身体拘束がなされる場合も、その時間が最も短くなる方法が検討されなければならない。また、要介護者本人やその家族に対して、身体拘束の内容、目的、拘束期間などが説明されなければならない。また、実際に行われた身体拘束については、記録として保存しておかなければならない。

身体拘束はほんとうに無くせないのか?

まず、イギリスでは、すでに20年以上にわたって身体拘束は(ほとんど)実施されていないそうです。また、アメリカにおける195の介護施設(ナーシングホーム)においては、要介護者の32.6%が身体拘束を経験しているという大変な状況(1991年)でしたが、そこから年々改善しているそうです。

どこの国でも、スタッフ不足が身体拘束の理由とされる傾向があるようですが、アメリカとスコットランドの介護施設におけるスタッフ状況はほとんど同じにもかかわらず、スコットランドでは、アメリカよりも身体拘束が少ないことが報告されています。

各国の取り組みとして、スタッフを増員することなく、身体拘束を減らしているという実績があります。今はまだ、仕方がないと判断されるケースも、将来的には身体拘束なしで対応できるようになっていく可能性が高いわけです。

※参考文献
・山口友佑, 『介護現場における「緊急やむを得ない」身体拘束のあり方と拘束廃止に関する考察』, 東洋大学
・厚生労働省, 『身体拘束ゼロへの手引き ~高齢者ケアに関わるすべての人に~』, 平成13年3月
・茨城県地域ケア推進室, 『身体拘束は本当になくせないのか』
 

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