閉じる

赤字の特養が過去最悪の3割超に・・・日本社会が溶けていく

赤字の特養が過去最悪の3割超に・・・

介護が儲からないのは常識としても・・・

売上が税金(介護保険料もある種の税金)に依存している介護業界は、国の財政難によって、今後の売上の見通しが非常に厳しい状況にあります。近年の好景気にも関わらず、毎年の倒産件数が過去最高の記録を更新してしまうような状況です。

とはいえ、経営が厳しいのは、主に、要介護者(利用者)の自宅で介護を行う在宅介護系の事業者だと思われることが多いものです。いわゆる老人ホームのような形態(施設介護)は、一度入居者を確保すれば、その後は安定的な収益が見込めそうに思えるからです。

実際に「施設介護で失敗をするのは立地がまずいからであって、よっぽどのことがないと経営難には陥らない」という意見を聞くこともあります。しかし、そうした意見は事実とは違うようです。以下、福祉新聞の記事(2017年9月5日)より、一部引用します。

全国老人福祉施設協議会(石川憲会長)は8月23日、厚生労働省に2018年度の介護報酬改定と予算要求に対する意見書を提出した。特別養護老人ホームの赤字施設は過去最悪の3割超となり、職員の労働環境改善や新たな設備投資を行うことが難しい状況にあるとして本体報酬の引き上げを求めた。(中略)

人材関連では介護職員が行う医療行為の拡大とその報酬上の評価を要望した。また職員配置について専任の規定を創設して同じ拠点内であれば他の事業にも従事できるよう検討すべきだとした。(後略)

報酬を少しくらい引き上げたくらいでは足りない

まだ介護との関わりがない人の場合は「親の介護がはじまったら、老人ホームに入ってもらえばいい」くらいに考えていることが多いものです。しかし、民間の老人ホームに入居するには、1人あたり毎月25万円程度の出費は覚悟しないとなりません。それだけのお金が出せる人は、決して多くはないでしょう。

そこで必要になるのが、今回のニュースに出てくる特別養護老人ホーム(特養)です。特養であれば、毎月の出費は数万〜10万円ちょっとで済むことが多く、年金がもらえている高齢者であれば、それほど無理なく入居できます。しかし、この環境は特養の赤字(および職員の低い報酬)によって成立していることは、忘れられるべきではないでしょう。

いかに公的な資金が入っているとはいえ、特養もまた、その多くが民間によって経営されています。赤字であれば、いまのような価格でサービスを提供することも困難になってくるでしょう。あの手この手で、自己負担してもらう部分を大きくしていかないと、経営になりません。

特養が瓦解してしまうと介護離職が激増する

すでに、特養に入居するには、実質的には要介護4以上の介護レベルであることが求められます。これは、ほとんど寝たきりの状態であり、介護サービスが受けられないと死んでしまうようなレベルです。

そうした人にとって、特養の存在は文字通り命綱です。しかし、そんな特養も、今後は倒産してしまう可能性が高くなっていきます。特養が倒産してしまったら、別の特養に転居できればよいのかもしれません。しかし、そもそも入居待ちが長蛇の列(少なく見積もっても30万人以上)になっている特養に、すぐに転居できたりはしません。

この煽りをうけるのは、家族です。そして現代の家族は、昔とは異なり、兄弟姉妹が多数いて、専業主婦もいるような状態ではありません。要介護4以上の高齢者の介護には24時間体制が求められることも多いわけで、とても仕事と両立できるものでもありません。

特養を赤字のままにしておいて、本当に困るのは将来の私たちです。いざ、自分の親の介護状態が重たくなってから「どうなっているんだ!」と叫んでも遅いのです。しかし、世間一般が、こうしたニュースに目を止めることはありません。私たちは、どの政治家を当選させるべきか、本当に真剣に考えるべきなのですが・・・いま、まさに日本社会が溶けています。

※参考文献
・福祉新聞, 『「3割が赤字、過去最悪」 老施協が介護報酬アップを要望』, 2017年9月5日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR