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自治体の窓口でさえ「無届け老人ホーム」を紹介している?

自治体の窓口でさえ「無届け老人ホーム」を紹介している?

「無届け老人ホーム」の問題

本当は、それが必要な人であれば、誰もが特別養護老人ホーム(特養)に入居できれば良いのです。特養は、自治体が運営(実運営は民間への委託が多い)する公的な介護施設であり、安価であるにも関わらず、高度な介護サービスが受けられるからです。

しかし、特養は人気がありすぎて、どこも入居待ちの状態になっています。そして、制度上は、要介護3以上であれば入居できるのですが、実質的には要介護4以上でないと入居が難しいなど、入居の難易度は、どんどん上がっているのです。

では、特養には入れないけれど、自宅での介護はもはや限界というとき、どうすればいいのでしょう。こうしたとき、法的には、民間の老人ホームしか残されていません。しかし、民間の老人ホームは、平均月額25万円程度の費用がかかるのが普通です。数百万以上の入居金がかかることも珍しくありません。

もちろん、もっと安いところもありますが、そこには安いなりの理由もあります。例外的な存在としての、安くて良い介護施設は、当然満床であり、特養のように入居待ちの状態になっています。

一般的な老人ホームに入居するだけのお金を持っている人は、決して多くはありません。その場合、あきらめて自宅での介護を続けるしかないのでしょうか。しかし、それが限界だから介護施設を探しているのですから、自宅という選択はないはずです(とはいえ、小規模多機能などは検討すべきですが)。

そこで、実質的な選択肢になっているのが、自治体への届け出をしていない「無届け老人ホーム」です。こうした「無届け老人ホーム」は、通常の老人ホームとは異なり、自治体が設定している様々な基準を無視して運営されています。基準を守るためのコストがかかっていないため、安価なサービスを提供できるのです。

「無届け老人ホーム」はどの程度広がっているのか?

KAIGO LAB でも、これまでに何度も、この問題について取り上げてきました。「無届け老人ホーム」の経営者が摘発されたりもしています。それでも、この問題は消えるどころか、より大きくなってきています。

厚生労働省の調査では、全国で、少なくとも1,650件以上の「無届け老人ホーム」が確認されています(2016年時点での数字)。現在もこの数字は増え続けているはずですが、自治体でさえ、その実態はつかめないでいるというのが現実です。

しかし、国や自治体に実態がつかめないのは当然です。把握されてしまえば、無届けのままではいられないからです。今後は、こうした「無届け老人ホーム」は、より地下に潜るかたちで、見つからないように、その数を増やしながら経営されていくことでしょう。

仮に摘発できたとしても、経営停止にすればいいという話ではありません。その施設には、すでに行き場のない高齢者が多数入居しているのです。そして、そこの経営者は、実質的に、介護の担い手でもあります(職員は経営者のみというケースも多いため)。

こうした「無届け老人ホーム」を経営停止にするには、そこにいる高齢者が、お金がなくても入居できる介護施設を探さないとなりません。それはつまり、特養ということです。しかし特養は満床です(正確には空いていても職員が足りない)。

このような状況においては、現実的には「無届け老人ホーム」は、社会的に黙認されていると言わざるをえません。その証拠となるようなニュースがありました。以下、yomiDr.の記事(2017年6月9日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

都道府県などへの届け出をしていない違法な「無届け有料老人ホーム」を対象とした調査で、7割の施設が、病院やケアマネジャーから入居者を紹介されていたことがわかった。無届けホームは一般的に費用が安く、医療・福祉関係者が、身寄りのない低所得の高齢者をやむなく紹介する例が多いとみられる。(中略)

高齢者がどこからの紹介で入居したかについて複数回答で聞いたところ、最多が「病院や診療所」で70・7%。高齢者の介護プランを作る「ケアマネジャー」が68・9%、高齢者の総合相談窓口である「地域包括支援センター」が42・7%と続いた。「入居者の家族」が35・6%、「行政窓口」が8・9%、自治体の「福祉事務所」も6・2%あった。(後略)

後追いで認可していくしかない

病院やケアマネからの紹介が約7割、地域包括や家族からが約4割、そしてなんと、行政窓口からの紹介も8.9%あるという現実は、かなりショッキングなものです。しかし、行政窓口までもが、それを違法と知りながら「無届け老人ホーム」を紹介しなければならない現実のほうに目を向けるべきでしょう。

安価で安心できる特養は、もはや宝くじのようなもので、相当運がよくなければ入居できません。同時に、民間の老人ホームは、高くて、普通の人には入居できないということもあります。広く理解されるべき現実とは、この特養と民間の老人ホームとの間に「供給の谷間」ができているという部分です。

だからということで「無届け老人ホーム」を黙認しつづけることはできません。それは、法律が無視されているということであり、法治国家の否定にもつながりかねないからです。国は、できる限り早く法律を整備して、こうした「無届け老人ホーム」を後追いになっても認可していくしかないと思われます。

このとき注意すべきなのは、真面目に法律を守ってきた民間の老人ホームが不利益を被らないようにすることです。具体的には、自治体の基準により老人ホームのランクを分けて、ランクによって、なにか事故があった場合の賠償責任に上限を設けるという方法が考えられます。

安全基準などが満たされており、十分なサービスが行われている老人ホームの場合は、賠償責任の上限も低くしてあげるのです。逆に、現在無届けになっている老人ホームには、なにか事故があった場合の賠償責任の上限を高くして、コストをかけないなりに注意をするインセンティブを与えるということです。

※参考文献
・yomiDr., 『無届け老人ホーム、病院が紹介「7割」…身寄りない低所得高齢者をやむなく』, 2017年6月9日
・NHK NEWS WEB, 『無届け介護ハウス 約7割 病院などから紹介受ける』, 2017年6月10日

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