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特養からも、派遣職員の悲鳴が聞こえる・・・(ニュースを考える)

特養からも、派遣職員の悲鳴が聞こえる・・・(ニュースを考える)

特別養護老人ホーム(特養)の充実が期待されているのに・・・

特別養護老人ホーム(特養)は、年金の範囲内でも、なんとか入居できる介護施設です。自治体が(民間に委託しつつ)運営しているため、安価なのに、民間の老人ホームと遜色ないどころか、場合によってはそれをしのぐほどに充実しています。

介護離職を避けるためには、こうした介護施設を活用できることが条件になることもあるでしょう。しかし、特養はどこも満床であり、なかなか入居できないという認識が広がっています。実は、介護職の人手不足が原因で、満床ではないにも関わらず入居できない特養も多くあることが知られています。

税金が投入されていて(建設費の約5〜7割が補助金)、ベッドは空いているのに入居できないというのは、本当におかしな話です。しかし、人手不足の深刻さはまったく解消される気配がありません。以下、東京新聞の記事(2017年5月23日)より一部引用します。

都内の特別養護老人ホームで、各施設が独自に定める職員の配置基準を満たしていない割合が62・1%に上ることが、都高齢者福祉施設協議会の調査で分かった。過去二年の調査では五割台だったが、今回初めて六割を超えた。協議会は「介護の人材不足が深刻化している」と懸念している。(中略)

独自基準を満たしていないとした百三十一施設のうち、61・7%が「一~三人不足」と回答。不足期間は「六カ月以上」が65・4%と最多だった。人員不足の解消に向けては、「派遣職員の雇用」(66・2%)、「職員の超過勤務」(64・7%)といった対策でしのいでいる。

派遣職員という存在自体を見直すべき

派遣職員という雇用の仕組みは、日本の解雇規制が生み出している歪みであることは、周知の事実です。正社員の解雇ができないので、契約によっていつでも解雇できる人材がいないと、どこも経営が立ち行かないのです。しかし、正社員だけを守るのは、明らかに不平等です。以下、日経新聞の記事(2015年3月5日)より、一部引用します。

塩崎恭久厚生労働相は5日午前の衆院予算委員会で、労働者派遣法を担当する同省課長が派遣労働者をモノ扱いする発言をしていたとして陳謝した。「派遣労働は期間が来たら使い捨てというモノ扱いだったが、ようやく人間扱いする法律になってきた」との発言で、厚労相は「誤解を招く不用意な言葉を使った。おわび申し上げたい」と表明。

いまの日本では、約4割が派遣労働者(正確には非正規雇用の労働者)です。この数字の中には、高齢の労働者のように、自ら望んで派遣を希望している人も入ってはいます。しかし、全体の約4割もの人が「多様な働き方」という美談のもと、本音では「モノ」としての労働を望んでいるはずもありません。

ここで、派遣のマージンは、30〜40%程度です。つまり、特養が派遣社員をお願いすると、その料金の30〜40%は、派遣会社に流れていくということになります。ただこれは、派遣会社が悪徳というわけではありません。派遣会社のほうも、人材の教育や管理、社会保険料などにお金がかかるからです。諸悪の根元は、解雇規制にあります。

正社員だけが守られる社会を終わらせるべき

派遣職員だけ、いつでも(実質的に)解雇することが可能です。しかし正社員を解雇することは、逆に、事実上不可能に近いことです。現在約4割になっている派遣職員は、今後も増えていくでしょう。そのとき、派遣職員は、自分たちの存在を生み出している解雇規制の存在を許すでしょうか。

民主主義の日本において、大多数が派遣職員となったとき、解雇規制を撤廃するという法案への支持率も上がるはずです。そうなる前に、解雇規制に変わって、広く、すべての労働者を守るセーフティーネットを整えるべきだと思います。

さらに、今回の場合のように、介護業界における派遣職員が問題なのは、介護業界の外にお金が流れていくということです。この料金は、本来であれば、介護業界の内部に止め、できるだけ、現場で働く介護職の給与として支払われていくべきお金ではないでしょうか。

派遣職員は「雇い止め」という名の解雇を恐れて、より厳しい仕事をこなしている可能性もあります。そして介護現場の仕事は、他の仕事よりもずっと厳しく、かつ、不当な待遇を押し付けられる世界です。介護業界を、一部の「聖人」のような人物しか働かない業界にしてはなりません。自分に介護が必要になったとき、そこには誰もいないかもしれないのです。

※参考文献
・東京新聞, 『特養の職員不足が深刻化 6割超が独自基準満たさず』, 2017年5月23日
・日本経済新聞, 『厚労相、「派遣労働者モノ扱いの課長発言」を陳謝』, 2015年3月5日

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