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急増する無届けの介護ハウス・・・自治体の半数が実態を把握できていない(ニュースを考える)

急増する無届けの介護ハウス・・・自治体の半数が実態を把握できていない

もはや無視できない存在になっている

無届けの介護ハウスとは、介護施設として法律で義務づけられた対応や報告を行っていない、非合法の介護施設のことです。届出を行っていないということは、火災・震災対応などの安全面や、入浴・排泄といった衛生面など、問題があっても、自治体などが把握できないということです。

こうした介護ハウスを、介護施設と呼ぶこと自体にも抵抗があります。しかし、もはや、こうした無届けの介護ハウスは、無視できない存在になってきています。無視できないどころか、急増しているというのが実情です。

これは、もはや私たち自身の問題になりつつあります。実際に、私たちも、介護が必要になった自分の親への対応として、無届けの介護ハウスを活用することも視野に入れざるを得なくなっていきそうなのです。もう少し詳しく考えてみます。

どうして無届けの介護ハウスが急増しているのか

要介護者を自宅で介護ができる状態なら、問題はありません。しかし、要介護度が上がり、とても自宅での介護はできないという状況になることは、誰の身にも起こり得ます。そうしたら、どうするのでしょう。

こうした場合、本当は、特別養護老人ホーム(=特養)に入るのがベストというケースは多数あります。特養は、入居日数に制限がないので、終の住処にできます。自治体が運営する公的な施設なので安心ですし、入居費用もかなり安くなっています。

しかし、こうした特養に入るのは、容易ではありません。まず、そもそも入居待ちになっている人が多数いますので、すぐに入れたりはしません。運良く空きが出るまで、かなり待たされる(3年以上待っているという話もザラ)のが普通です。

また、特養への入居条件は、財源の問題から、どんどん厳しくなってきています。相当高い要介護度(現在は要介護3以上)にならないと、そもそも入居待ちをすることもできないのです。2015年の介護保険改正までは、要介護1以上で入れたのです。

急速な高齢化によって、医療・介護の社会福祉財源は枯渇してきています。こうした背景から、今後、24時間365日の介護をお願いできるような、公的な介護施設は、減ることはあっても増えていくことはないでしょう。ですが、自宅では介護ができないという要介護者の数は、増え続けていくのです。

しかし、国の基準を満たし、きちんと届出を行っているような民間の介護施設は、平均でも月額25万円程度の費用がかかります。毎月、これだけの金額を出せるような家庭は、決して多くありません。こうした背景から生まれてしまうのが、無届けの介護ハウスなのです。

無届けの介護ハウスは、国の基準を無視し、空き家などを活用することで、安い費用で介護施設を作っています。安い費用で作っているので、サービスを安く提供することが可能になります。結果として、特養と変わらないような入居費用(場合によっては特養よりも安い)にできるのです。

無届けの介護ハウスにはリスクも多い

2009年に、静養ホームたまゆら(群馬県)で発生した火災では、入居者16名中10名が死亡しています。この施設は、無届けの介護ハウスでした。本来であれば設置義務のあるスプリンクラーはなく、消火設備も貧弱だったことが、後の調査でわかっています。

近いところでは、2015年にも、名古屋市の高齢者集合住宅で発生した火災により、2名の入居者が死亡しています。この施設も、無届けの介護ハウスでした。こちらも、火災報知器などがなく、貧弱な消火設備しかなかったことが、後の調査で判明しています。

無届けの介護ハウスは、安いというメリットがありますが、その安さは、安全性を犠牲にして得られているものだという認識が必要なのです。自治体の指導や監視がきかないため、虐待などがあっても、それへの対応ができないのが実情です。以下、NHKの報道(9月13日)より、一部引用します。

法律で義務づけられた届け出を行っていない、有料老人ホーム、いわゆる「無届け介護ハウス」について、去年、総務省が調査を行った自治体の半数が、実態を十分把握できていないことがわかりました。(中略)

こうした施設は、空き家やマンションの一室を利用しているケースも多く、総務省行政評価局は、実態の把握状況を確認するため、去年、全国の30の都道府県や市町村を抽出して調査を行いました。

その結果、半数の15の自治体が、介護の相談窓口の地域包括支援センターとの間で、情報交換の機会や情報共有の仕組みを設けていないなど、連携が不十分であることがわかりました。

また、2つの県では無届けと把握していながら、2年以上にわたって届け出を指導していなかったほか、「虐待の疑いがある」と元職員から通報があったにもかかわらず、3年間にわたって指導していなかった県もあったということです。

何が必要なのか?

特養への入居ができる人と、できない人が生まれてしまっている不公平を放置することはできません。特養には、税金が投入されているのに、運が良い人だけが特養に入れて、運が悪いと介護ハウスしかないという現状は、そもそも、日本国憲法における法の下の平等(日本国憲法第14条)に違反しています。

本来であれば、特養に使われている財源は、急増する無届けの介護ハウスの安全対策と監視に使われるべきものです。今後は、特養に入居できる人は減り、介護ハウスは急増してしまうこと自体は止められません。であれば、介護ハウスのネガティブな面(安全性など)の改善が急務のはずなのです。

私たち自身も、将来は、無届けの介護ハウスに入る可能性が高いのです。将来的には、財源の問題から、特養など、そもそも存在できないと考えられるからです。自分自身が入居する施設に対して、何を望むのか、考えてみる必要があると思います。非常に、緊急性の高い課題なのです。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『無届け介護ハウスの実態 自治体の半数が十分把握できず』, 2016年9月13日

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