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教職課程で必修化される「学校安全への対応」は介護の教育にも生きてくる。

教職課程で必修化される「学校安全への対応」は介護の教育にも生きてくる。

「学校安全への対応」が教職課程で必修化される

学校現場における安全に関する取り組みが、ニュースで話題になっています。毎日新聞によると、文部科学省は2019年度から、大学の教職課程において「学校安全への対応」を必修化する方針を固めたそうです。

先生になることを目指すすべての学生が、様々な学校安全への対応法を、単位として修得しなければならないということです。現在のところ、講義内容に決まった形はなく、各大学が特徴や独自性をいかして授業内容を決定し、それを文科省がチェックする形で検討されています。

また、これとは別に、子供たちの「身を守る力」についての調査をすることも検討されています。全国各地の無作為に選ばれた学校の児童・生徒を対象に、ペーパーテストなどを行い、危機管理に関する判断力や行動力を測定するそうです。

「学校安全への対応」とは、学校教育の管理下における事件や事故、災害から、子供たちを守ることです。先生方は新人であっても、赴任したその日から、子供たちの命を預かっているといっても過言ではありません。いざという時に、いかに的確な判断が出来るかが、子供たちの将来を大きく左右することも考えられます。

これは学校に限らず、人に直接携わる仕事、特に人が集まってくる場所で、それを受け入れる側の人間にとっては、全員が学ばなければならない力です。まずはそもそも危機を作らないように、様々な対策を打っておく意識や知識が必要です。さらに万が一、危機が発生してしまった場合に、すぐに対応できる準備、判断力、実行力が必要でしょう。

事件衝動型で進められてきた学校安全への対策

学校現場でこのような動きが起きてきた背景には、いくつかの事件・災害があります。たとえば、2001年6月には、大阪の小学校に刃物を持った不審者が侵入し、多くの児童の命を奪うという痛ましい事件が起きました。この事件では、不審者が自由に学校に入ってくることが出来た点や、事件発生後の救命活動など、学校の安全管理に不備があったとして大きな問題になったのです。

この事件を受けて、学校の入り口などに防犯カメラが設置されたり、校門は原則施錠されたり、サス叉が設置されたりするなど、不審者への対策を強化する学校が増えました。また2001年に学校で起きた犯罪が、初めて4万件を越えたことを受け、文部科学省は「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」を作成し、全国の学校に配布しました。

学校の外も例外ではありません。2005年11月には広島、2006年12月には栃木で、学校の下校時間中に誘拐、殺人の被害にあってしまう事件が起きました。これは学校の外での安全管理の問題です。これについては、保護者による送迎や、地域の高齢者ボランティアによる安全指導や見守りなど、様々な対策がとられました。

体育の授業や部活動の場面でも、安全管理は問題になります。たとえば、学習指導要領の変更で、2012年度からは中学校1、2年生で「武道」が必修になりました。体育の授業で剣道か柔道を必ず実施しなければならないのです。これは学校の先生方にとっては、安全面の確保を考えると、実はかなりの負担になります。

というのも、柔道は、数ある運動部活動の中で、死亡事故が圧倒的に多い競技です。もちろん体育の授業レベルでそこまで危険な練習には取り組まないと思いますが、ひとつ練習方法を誤れば、重大な事故につながる危険性をはらんでいます。

もう一つ、忘れられない事故があります。それは東日本大震災による津波の被害を受けた、大川小学校で起きた痛ましい事故です。震災後、51分間にわたり校庭に避難していた児童や教職員の方々が、津波の犠牲になったこの事故は、地震発生時の避難に関する教職員の対応について、多くの議論が巻き起こりました。この事故については、いまだ裁判が続いています。緊急災害が起きた際の、学校現場の危機管理に大きな問いを投げかけた事故だったと言えるでしょう。

「学校安全への対応」は「介護施設の安全への対応」と同じ

ここまで見てきた事件、事故については、全て学校現場における問題ですが、どういう環境でも起こりうる状況だと考えられます。特に、介護施設については、ほぼ全ての事例が、学校現場と同じように起こる可能性が高いでしょう。

外部からの不審者の侵入については、不特定多数の方の出入りが起きる施設では十分注意しなければならない問題です。体を動かすようなレクリエーションやリハビリ中の事故も気を付けなければなりません。また学校の事例ではあげませんでしたが、要介護者同士のトラブルも起こります。

要介護者が、震災など災害時に避難する際には、数多くのトラブルが想定されます。不測の事態が起きた際に、介護施設で働く職員が、いかに判断し、実行するかが勝負になります。その点では、介護施設で働く人々も、今回教職課程で必修化される「学校安全への対応」のような、安全に関する教育をしっかり受けておくにこしたことはないのです。

介護施設内で起きている小さな事故も見逃さず、しっかりと蓄積し、その知識を伝達していかなければ、その先には重大な事故が待っています。小さな事故を隠さず、報告しやすい関係を作っておくことも重要でしょう。そこで貯められた情報は、これからの介護を担う人材にも浸透させていくべき重要な情報であるはずです。

最近の学校現場や子育てに見られるように、ただリスクから子供を遠ざけることは、危機管理能力を育てることになりません。何が危機なのか、どこに危機があるのかを教育し、そのリスクに対応をする力を伸ばしていく必要があります。

※参考文献
・毎日新聞, 『学校安全対応 大学教職課程で必修に 文科省方針 19年度にも』, 2016年6月6日
・毎日新聞, 『文科省 身を守る力の全国調査 効果検証へ』, 2016年6月4日
・上北 彰, et al., 『学校安全と危機管理教育 -安全教育から危機管理教育へ-』, 千葉科学大学紀要, 1, 119-133, 2008

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