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話題のニュース;特別養護老人ホームの入居者数は、本当に増えるのか?

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特別養護老人ホームが増える?

新聞各社が報道しておりますが、安倍首相は、公約としていた「介護離職ゼロ」を実現すべく、特別養護老人ホーム(特養)の大幅な増設に乗り出すことを表明しました。

・読売新聞, 『「介護離職ゼロ」目指し、特養増設・待機解消へ』, 2015年9月24日
・日経新聞, 『GDP600兆円目標、特養待機の解消めざす 首相が24日夕会見』, 2015年9月24日

KAIGO LABでも何度か取り上げてきましたが、民間の有料老人ホームよりも割安で、かつ退所させられにくい特養は、まったく足りていません。公式な発表でも、入所待ちが52万人(2013年度)いるとされています。

在宅や、高価な民間の有料老人ホームに入所しながら、本当は特養に入りたいと思っている潜在的な部分も含めると、特養の空きを待っているのは、介護業界では100万人規模とも言われます。

安倍首相が目標としたのは、この入所待ちになっている52万人のうち、本来は介護施設に入所すべきなのに、在宅介護になっている15万人(要介護3以上)を、2020年代初めまでにゼロにすることです。

目標はいい。でも、この施策は正しいのか?

「介護離職ゼロ」や「待機している15万人をゼロ」という目標はいいと思います。ただ、そもそも一番クリティカルなのは、介護施設の数ではなくて、介護施設職員の人材不足なんですよね。その原因は、介護業界の待遇の悪さにあることは、KAIGO LABでも何度も主張してきました。

施設そのものには空きがあるのに、入所を待機させている特養も少なくないと聞きます。何故って?職員のなり手がいないからです。何故って?辛い仕事なのに、待遇が悪いからです。

Career Garden;介護福祉士の給与・年収(詳しくはリンク先参照)

http://careergarden.jp/kaigofukushishi/salary/
事業所や役職、雇用形態によって異なりますが、一般的に施設で働く正規職員の介護福祉士の月給は手取りが15〜17万円前後で、年収は250万〜400万くらいが一般的です。決して、他の業種と比べて高い給料とはいえません。施設の場合は、夜勤が月に4回ほどあり、日曜日や祝日の当番もあります。変則勤務で肉体的、精神的にハードな割には、給与が見合っていないと言われ、給与面に満足できずに離職をする人もいます。

ちなみに、介護施設の建設費は、100人収容できる特養の場合で(土地代を含まずに建設費だけで)15億円程度だそうです(もちろん、建材の時価にもよりますから、かなり上下します)。自治体は、通常、この50%程度の費用を負担するようです(昔は75%だった)。

今回の施策は、この50%の自治体負担分を、昔のレベルか、それに近いところまで高めるという意味なのでしょう(違っていたら、ごめんなさい)。15万人分ということで、それは少なくとも1,500施設くらいですね。かけ算で、2.25兆円の支出になります。で、仮にこのうちの75%が税金の負担として、約1.7兆円が税金から建設業界に流れるわけですね。

なにがいいたいのか

東日本大震災の被災地でも、建設業界にばかりお金が流れて、介護業界の現場の待遇改善が行われていないという問題を指摘しました。

マクロ経済的に言って、建設業界にお金が流れるのは、日本経済にとって大事なことです。それは否定しません。ただ「人間の尊厳」と正面から向かい合っている介護業界の現場にも、もう少しお金が流れても良いのではないでしょうか。

施設への投資も大事でしょう。ですが、介護業界の人材への投資も、それ以上に大事です。「特別養護老人ホームの大幅な増設」という言葉の中には、介護業界の待遇改善が含まれていることを祈るばかりです。文句が言いたいのではなくて、みんな、日本の介護を少しでも良くしたいのです。本当に、お願いします。

注:KAIGO LABは政治的に中立な存在です。施策レベルでの賛成反対のみ表明します。
 

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