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東日本大震災・被災地における介護事情;震災を忘れないだけでなく、今を知る/生活不活発病との戦い

第18共徳丸
(かつて気仙沼市鹿折にあった第18共徳丸/KAIGO LABスタッフ撮影;2013年8月)

介護人材不足が特に深刻な状況

日本全国で介護人材は不足しています。その中でも、特に深刻なのが東日本大震災の被災地です。色々な理由がありますが、一番大きいのは、被災地においては、防潮堤の建設などのために建設業の人材需要が大きく、そちらの待遇が「かなり良い」ということだと聞きます。

それに対して、これまで何度も述べてきたとおり、介護業界の待遇は、決して良くありません。ここを改善しないかぎり、こうした慢性的な人材不足の根本的な解決はできないのです。被災地に就職する介護人材には、奨学金が免除されたりということもなされていますが、もっと多くの支援が必要です。

こうしたことが、被災地において強調され、顕在化している事実は、私たちに、そもそも「復興」とはなにかを問いかけているでしょう。もちろん建設も大事です。しかし、莫大な税金が建設業界に流れるかたわらで、介護業界の人材にはこれといった支援がないままでよいのでしょうか。

進行する「生活不活発病」と増える要介護者数

東日本大震災の被災地においては、8割の市町村にて、要介護の増加割合が全国平均を超しているそうです。この原因と考えられているのが「生活不活発病」です。

「生活不活発病」という病気は聞き慣れないものだと思います。しかし、被災地の高齢者の間では、現在約3人に1人が、この「生活不活発病」にかかっていると言います。結果として、震災前は元気だった高齢者の中に、いまや歩くことも困難な人が続出しているそうです。

「生活不活発病」の発生メカニズムは(1)やることがない(2)身体や頭を使わない(3)動きにくくなる(4)やれることが減る→(1)に戻る、という悪循環モデルです。

震災以前は、多くの高齢者が漁業や農業などに従事していました。漁業や農業には定年がありません。しかし、震災によってこうした漁業や農業が続けられなくなってしまったのです。仮設住宅暮らしで、地域の行事やつきあいも減ってしまいました。

そして、ここは特に難しいところですが「被災者を助ける」という善意のボランティア行為が、結果として、自分でやれることでも他者に依存する高齢者を増やし、先の悪循環モデルを進めてしまったのではないかという仮説もあります(注:人間の善意そのものを否定しているのではありません)。この問題について、詳しくは、過去の記事をお読みください。

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(女川町地域医療センターからの景色/KAIGO LABスタッフ撮影;2015年5月)

現在の復興状況

そもそも、介護事業者の多くも被災し、亡くなられた方もたくさんいます。施設ごと流されたケースもあります。そうした中で、少しずつですが、県外からも介護のプロとして移住してくる人もでてきているようです。

とはいえ、全国平均を上回って要介護者数が増加し、賃金の高い建設業界との人材の取り合いになっている東日本大震災の被災地の介護は、まだまだ「復興」どころか「復旧」もままならない状態です。

さらに、認知症には「環境の変化」が御法度で、それによって症状が悪化することが知られています。にもかかわらず、これからは仮設住宅からの退去が増えていきます。かなり厳しい状況が予想されます。

私たちにできること

もちろん、介護事業者として、直接被災地に関われたら最高です。また、現地で活動するNPOやボランティアへの寄付をするなどもあるでしょう。とはいえ「そうしたことは難しい」というケースが、ほとんどだと思います。

それでも、震災を忘れないこと、そして今を知ることであれば、誰にでもできることです。休みがあれば、東日本大震災の被災地を訪れ、現地の空気を吸うことが、長い目でみれば復興の助けにもなります。交流人口を増やし、経済を活性化させ、少しでも雇用が増えていくことが(時間はかかりますが)復興の保守本流だからです。

お祭りや各種イベント、震災遺構から学ぶダークツーリズム(不幸があった場所を保全し、そこに教訓を学んでもらう)など、調べれば被災地に行くきっかけはたくさんあります。魚介類の美味しさは、言葉で表現できないほどです。子供がいる方であれば、震災の怖さと、防災について学ばせる機会にもなります。

被災地は、いつまでも被災地ではありません。魅力ある日本の地方として、その魅力を楽しむべき場所にしていくのは、私たちひとりひとりだと信じています。

お知らせ

KAIGO LABは、東日本大震災・被災地での介護事業、寄付、支援などを考える企業を応援します!地縁などがなく、どのように入り込めばよいのかわからないという企業の方は、お気軽にご連絡ください。微力ですが、できるかぎりサポート致します。

※参考文献
・NHK解説委員室, 『視点・論点 「東日本大震災4年 ”生活不活発病”を新しい常識に」』, 2015年3月11日
・共同通信 , 『被災地、要介護の割合増加 8割市町村、全国超す伸び 長期の仮設暮らし影響か』, 2015年3月5日

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