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ネガティブの原因は気になっても、ポジティブの原因は気にならない(予防はなぜ浸透しないのか)

ネガティブの原因、ポジティブの原因

ポジティブなことの背景について、真剣に考えてみる人は少ない

たとえば、高速道路で長時間運転しているとします。しっかりと、途中のサービスエリアで仮眠をとったとしましょう。この仮眠は、居眠りをして事故を起こしてしまわないための「予防」です。

このときの仮眠が、ほんとうに事故を予防したのかどうかは、その後、安全に目的地に着いた(ポジティブ)ときはわかりません。それは仮眠のせいだったのか、十分な運転経験を持っていたせいなのか、それとも運転の才能があったからなのか、いちいち考えないのです。

「終わりよければ、全てよし」というのは、要するに結果がポジティブであれば、その原因については気にしなくてよいという結果主義です。しかし、これは本当はとても危険なことでもあります。

ネガティブなことがあってはじめて、原因の究明が行われる

逆に、仮眠をとらないで居眠りをして、事故を起こしてしまった(ネガティブ)としましょう。このときは、おそらく仮眠をとらなかったからだといった原因の究明が行われます。次回からは、きちんと仮眠を取ろう・・・というのは、このときの事故が深刻ではなかったときにだけ有効です。

ネガティブなことの中には、取り返しがつくものと、取り返しのつかないものがあります。典型的には、健康がそれにあたります。いったん、健康を失ってから、その原因を究明しても、もとの健康な身体には戻れないことも少なくないからです。

しかし、残念なことに人間は、健康でいられること(ポジティブ)の原因については考えない生き物です。つい昨日まで健康だったということは、それまでの自分の生活習慣などについて深刻には考えないということでもあります。

あらゆる「予防」のサービスがうまく行かない原因もここに

このあたりが、いわゆる「予防」というものの普及がうまくいかない理由です。心理学的には「ツァイガルニック効果」が背景にあり、健康が満たされないという状況にならないと、健康自体に関心が向かないということです。

しかし、気づかないうちに、要介護状態にまで至ってしまい(ネガティブ)、それから要介護状態になってしまった原因を考えても遅いことも多いのです。特に大きな事故などもなく、徐々に弱っていき、気が付いたら寝たきりというケースは、少なくありません。

この背景として理解しておきたいのは「フレイル」という考え方です。要介護状態に至るまえに「自分の健康は、大きく脅かされている」という状況(ネガティブ)を意識することで「予防」に入ることを狙っています。

ビジネスにおけるキャリアの失敗もこれに似ている

ビジネスのキャリアで考えると、より、わかりやすいかもしれません。自分にとって最高とは言えないまでも「そこそこ」の状態が続くことが、キャリアにとっては一番危険です。

こうした「コンフォートゾーン(心地よいぬるま湯)」にいるということは、ポジティブだからこそ、今の自分を作っている原因(能力・スキルなど)について考えることもありません。

そうして、長年が過ぎて、リストラされて(ネガティブ)はじめて、自らの過去を振り返るのは遅いです。それでやっと、自分の過去にたくさんの間違いがあったことに気づいたりするのは、辛いです。この場合のネガティブは、取り返しのつかないものだからです。

ネガティブの原因は気になっても、ポジティブな原因は気にならないのが人間です。だからこそ、私たちは普段から、自分の状況についてネガティブな視点から疑ってみることが大事なのです。

介護という文脈でも、これと同じように、自分を健康だと考えず、それを疑ってみることが大事です。簡単な健康診断くらいで安心せずに、高齢になってきたら、フレイルの専門家にチェックしてもらうようなことが大事です。

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