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介護のプロによる、虐待回避(虐待予防)のノウハウ(7選)

虐待回避のノウハウ

介護のプロにも、虐待回避(虐待予防)が必要である事実は重い

高齢者(要介護者)の虐待が問題になっています。この問題については、過去にも『高齢者の虐待に関する報道には、決定的に欠けている視点がある』や『要介護者による暴行・殺人事件もある』といった記事にしてきたとおり、本来は、介護する側、介護される側の双方が歩み寄るべき問題です。

介護の現場にいない人にはわかりにくいのですが、要介護者の中には、暴力を振るったり、セクハラをしてくる人もいます。特に問題行動の多い要介護者に相対するときは、誰もが虐待をしてしまう危険性があるのです。そうした場合、介護のプロは、どのように自分の気持ちを落ち着かせているのでしょうか。

まず、職場経験の長い介護のプロでさえ、自分が高齢者を虐待してしまうことを恐れているという事実は大事です。介護の現場には「虐待が生まれやすい環境」があるからです。

そうした環境に身を置く介護のプロたちは、この危険性をよく理解した上で、対策を行っています。この介護のプロたちの対策に関する調査研究(藤江, 2015年)をベースにして、以下、学んでいきたいと思います。

1. ちょっとした工夫で虐待を回避する

介護のプロは、介護を行う前に「正しい介護とはなにか」を思い出すようにしています。また、コミュニケーションを成立しやすくするために「どうすれば、要介護者に伝えたいことが上手く伝わるか」を試行錯誤しています。

要介護者に、嫌なことを言われたり、暴力を振るわれたりして「カッ」となったときは、良い関係性が築けている別の要介護者のところに行って、気分をリセットしたりもしています。「イラッ」としたら、その場を離れて深呼吸することなども行っています。

これは、そのまま在宅介護をしている家族でも実行できるノウハウでしょう。特に「イラッ」としたら、その場を離れて深呼吸というところは、すぐにでも実行していただきたいです。

2. 介護の知識をつけることで虐待を回避する

認知症について学び、要介護者の行動の背景を考えることで、行動そのものに対するネガティブな感情を抑えることができるようです。どうしても余裕がなくてイライラしてしまうときは「虐待は、人としてやってはいけないこと」という当たり前のことを意識して思い出すようにもしています。

また、問題行動を起こしてしまっている最中の要介護者と接するときは、普段の穏やかなときの要介護者の姿を思い出して、自分の心を落ち着けたりもしているようです。「この状態は、この人の本当の姿ではない」と考えることで、まずは落ち着かせようという気持ちにもなります。

特に、認知症の要介護者を在宅介護をしている家族の場合も、認知症の特徴について十分な知識をつけておくことが大事です。要介護者の問題行動の背景にあることを理解できたとき、感じかたも変わるからです。

3. 誰かが見ていると考えることで虐待を回避する

介護のプロは、周囲に誰もいなくても「誰かが見ている」と考えるようにしています。また「虐待はしてはいけない」ということを、何度も自分に言い聞かせるようにもしています。

そうでもしないと虐待してしまう可能性のある環境というところは、本当に怖いです。介護のプロは、自分で自分を監視し、また教育していかないといけないと考えています。介護のプロではない一般の人であれば、なおさらでしょう。

在宅介護をしている家族の場合も、やはり「誰かが見ている」と考えることが大事です。たとえば、故人となっている自分の祖父母の写真などを要介護者の近くに置いておくことで「おじいちゃんが見ている」「おばあちゃんが見ている」と感じられるような環境を作るとよいかもしれません。

4. 自分自身の心理状態を観察することで虐待を回避する

介護のプロは、自分が虐待をしそうになって、それを思いとどまったときの記憶を大事にしています。その記憶を振り返り、そうした考えにとらわれてしまった自分を反省します。

人間は、どうしても感情的になるときがあり、それが危ないということを何度も確認します。問題行動を起こしている要介護者の介護をしているときは、自分の感情を観察し、それを制御することで、虐待を避けています。

在宅介護をしている家族の場合も、自分自身が危ない状態になったときの心理状態を思い出してみて、それを反省するように心がける必要があります。自分自身に対して、何度でも「虐待はいけないことだ」と言い聞かせる必要もあります。

5. 相手の立場に立つ想像力を用いて虐待を回避する

もし自分が相手の立場にあったらと考えて、虐待される側の気持ちをリアルに想像しています。また、その要介護者が自分の両親や愛する人だったら、どのように対応するかを想像することでも、虐待を避けることができます。

仮に、自分が虐待をしてしまった場合、それによって要介護者はもっと問題行動を起こすようになるという想像もしています。とにかく、虐待をしてしまえば大変なことになるわけで、そうした大変な状態を想像することでも、虐待を避けられるようになります。

在宅介護をしている家族の場合は、そもそも、相手が自分の両親だったりすることが多いでしょう。その場合は、昔、優しかったころの両親を思い出したりすることで、なんとか虐待を回避してもらいたいです。

6. 介護の仲間たちと苦悩を共有することで虐待を回避する

同じ介護施設で働く仲間たちも、自分が要介護者を虐待してしまうことを恐れています。そうした恐れや、危なく虐待をしそうになったときのことを共有することで「悩んでいるのは自分だけではない」ということに気づきます。

また、それぞれが持っている虐待を避けるためのノウハウも共有されます。さらに、皆でビジネスマナーを学ぶことで、あらためて、要介護者を「お客様」として考えるようにしています。

在宅介護をしている家族の場合は、ぜひ「家族会」に参加してみてください。自分と同じように「要介護者に死んでもらいたい」と感じたことのある、苦悩を共有できる仲間に出会うことができます。

7. 周囲の目を意識することで虐待を回避する

特に問題行動の多い要介護者と接するときは、なるべく一人でその現場にいることを避け、誰か別の人と一緒に接するようにしている人もいます。こうすることで、周囲の目を意識することができ、虐待を避けることができます。

そうした別の人として、介護職員を選ぶことができない(人手不足で、そもそも介護職員は少ない)場合は、別の要介護者から見えるところで、問題行動の多い要介護者に接するように工夫をしている人もいます。

在宅介護をしている家族の場合は、本当に自分が虐待を行ってしまいそうなときは、カーテンと窓を開けてみてください。また、自分の様子を動画で撮影してもいいかもしれません。そうすることで、ギリギリの状態でも、なんとか虐待を回避できる可能性が(少しは)高まると考えられるからです。

※参考文献
・藤江慎二, 『介護老人福祉施設の介護スタッフが虐待行為等を回避している構造』, 社会福祉学第56巻第2号, 2015年

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